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2008年1月

松岡恒太郎の勝手に目利き

『リボルバー』 佐藤正午/光文社文庫

  随分昔、悪友に誘われ無料招待券で観た映画。それは、当時ロマンポルノ一筋だった日活が、エロ路線からの脱却を計りロゴマークまで変えて挑んだという記念すべき作品だった。
スクリーンの中ではいくつかのストーリーが微妙に絡まりながら進む。あの日期待などせずに観に行った僕は、その作品の構成の上手さに思わず舌を巻いたのを覚えている。
原作が、かの佐藤正午さんの初期の作品であったと知ったのは随分後になってからだった。
 その小説『リボルバー』を、先日文庫の新刊の棚に見つけ懐かしくなって購入した。
 拳銃を失った元警察官、拳銃を拾った高校生、五つの弾倉がカチャリカリャリと回されるように、五人の男女の物語が少しずつ重なるように進展する。それぞれの思惑を胸に抱き、五人の男女は微妙に交差しつつ北を目指し旅をする。
 テンポのよさ、会話の妙は佐藤正午の真骨頂。しかし時代は確かに昭和であり、物語を盛り上げる二人組み蜂矢と新青年の会話では、中野浩一が現役選手として活躍している。そんな昭和の空気も是非嗅いでいただきたい。

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