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2008年2月

岩崎智子の勝手に目利き

『女王エリザベスと寵臣ウォルター・ローリー(上・下)』 ローズマリー・サトクリフ/原書房

 シェカール・カプール監督作品で、英国女王エリザベス一世が主人公の映画『エリザベス ゴールデン・エイジ』が2月公開となる。本作の前半はまさにその時代を描いている。映画ではローリーとエリザベスに焦点が当てられているが、本作では、ローリーと女王の女官である妻エリザベス(ベス)が主役だ。
冒険心に溢れているが、策謀には無縁で世渡り下手なローリーと、「彼が彼である事」を許し、ひたすら待ち続けた女性(原題 Lady in Waiting)ベス。自分が「いく度も、いく度も夢の追求のために捨てられ」る事がわかっていても、彼と共に人生を歩む事を決めたベスは、実は女王に負けない器量の持ち主だったのではないかと思わせる。
映画とはまた別の視点から、イギリス黄金時代とその終焉を俯瞰できる歴史物語としてもお勧めだ。

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