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2008年3月

佐々木康彦の勝手に目利き

『先端で、さすわさされるわそらええわ』 川上未映子/青土社

 句点と鉤括弧の少ない文章に関西弁やリズムの良い言葉がのっかり、読んでいて非常に気持ちが好い。短篇小説?詩集?それともエッセイなのか、カテゴライズ不能(不要)の作品集。
 この人の作品は読んだ時の心地よさももちろんですが、収録作「少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ」の「湯の中でおしっこをしてもいいお母さんしてはいけないお母さん/どうしてあたしはいけないお母さんの子に生まれたの」のようにしょうもないことを形而上的な問題として持ち出すセンスと、それをさらに笑いにまで昇華させるところが秀逸なのです。
 芥川龍之介賞受賞作「乳と卵」と比べると、「わたくし率 イン 歯ー、または世界」や本作はちょっと荒っぽい感じですが、逆にそれがドライブ感のようなものを生み出していて、それもまたひとつの魅力になっているのではないでしょうか。

 タイトルの奇抜さに敬遠される方がいるかも知れませんが、心に突き刺さる七篇の作品、是非とも体感して頂きたい。きっと、ハマりますよ。

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