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2008年10月

佐々木康彦の勝手に目利き

『同姓同名小説』 松尾スズキ/新潮社

 テレビを観ていて思う様々な疑問や思い込み。何であのタレントはあんな勘違いした行動ばかりするのだろう。あの女優の日常はきっとこうだろう。あのグループはこのままだと、大変なことになっちゃう。そんなこんなを圧倒的な妄想力で書き上げた十三篇の小説集。
 芸能界に身をおきながら、よくぞここまで芸能人をおちょくることが出来たものだと感心しました。特定の芸能人を連想させるような設定とか名前で書くことで、ごまかすことも出来たのに、あえて実名で書く勇気、それとも何にも考えていないのか。実名だからこその面白さ。一部暴走してしまっている作品もありますが、ほとんどが抑制のきいた作品で、特に最後の著者自身を主人公にした「上161下105の男」には、ホロっとさせられました。
 ただ、あくまでも本作は著者の妄想に芸能人を登場させているだけ、イメージを勝手に膨らませているだけですので、お間違いのないように。当然フィクションです。

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