血が繋がっていることは幸せ?~『カッコウの卵は誰のもの 』

カッコウの卵は誰のもの
『カッコウの卵は誰のもの』
東野 圭吾
光文社
1,680円(税込)
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 托卵(たくらん)という言葉をご存知でしょうか? 代表的な例でいうと、カッコウの母鳥は、他人の鳥の巣に卵を生み落とします。そして抱卵、子育てなどを仮親に托します。

 なぜそんな行動をとるのかというと、カッコウは外気に体温が左右されやすいため、卵をうまく自分で温められないのです。別に性格が悪いとか、薄情であるというわけではなく、いろいろとカッコウ側にも事情があるわけです。

 しかし、そのようなことが人間で行われたとしたらどうでしょうか。育てられた子どもも、育てた親も、真実を知らずに暮らしている。その親子が実の親子ではないということを知っているのは、生みの親だけ。しかし、そのことにこれまで何の疑いなく生きてきた親子が気づいてしまったとしたら・・・。

 東野圭吾の最新作『カッコウの卵は誰のもの』には3組の親子が登場します。アルペンスキーで元オリンピック選手の父親と、一流スキーヤーを目指す娘。優れた登山家だった父親と、その父の優れた心肺機能を受け継ぎ、クロスカントリー選手として将来が期待されている息子。建設会社の社長を務める父と、白血病になり骨髄移植をするためのドナーを探す必要が出てきた息子。

 物語は、この3組の親子の関係が複雑に絡み合いながら進行します。「親子の血縁は遺伝子検査をすればすぐわかる」「白血病を直すためのドナー適合者というのは、親子よりも兄弟の方が適合しやすいと言われている」「親から受け継いだ才能やセンスを、子どもがありがたがるとは限らない」。

 このようなキーワードが鍵となって導かれる最後は、親子というものをつくづく考えさせられる結末となっています。カッコウにも事情があって托卵しないと生きていけないのと同じように、この世の中にもさまざま苦悩を抱えた親子がいる。そんな、3組の親子の人生をパズルのようにぴたりとはめ合わせた東野圭吾の着想とストーリー展開に、読者は一気に引き込まれてしまうはずです。

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