ポスト・エヴァのオタク史とは?~『セカイ系とは何か』

セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史 (ソフトバンク新書)
『セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史 (ソフトバンク新書)』
前島 賢
ソフトバンククリエイティブ
798円(税込)
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 1995年のテレビ放映開始から約15年が経った現在でも絶大な人気を誇る『新世紀エヴァンゲリオン』。今年5月26日には、映画用に再構築された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のDVD&ブルーレイが発売され、そのキャンペーンとして店舗ジャックされたローソン箱根仙石原店にはファンが殺到、キャンペーンが中止になるほどの盛り上がりを見せました。

 なぜ、これほどまでに人々はエヴァに熱狂するのでしょうか。この現象をひも解くには、ポスト・エヴァとされる作品を知るといいかもしれません。

 ここで鍵となるのが「セカイ系」と呼ばれる作品たちです。代表作としては、マンガ『最終兵器彼女』(髙橋しん)、アニメ『ほしのこえ』(新海誠)、小説『イリヤの空、UFOの夏』(秋山瑞人)が挙げられます。前島賢さんの著書『セカイ系とは何か』によると、以下のような要素を持つ作品を指します。

・少女(きみ)と少年(ぼく)の恋愛が世界の運命に直結する
・少女のみが戦い、少年は戦場から疎外されている
・社会の描写が排除されている

 そもそも「セカイ系」とはWikipediaによると、エヴァ後半部分に見られる「一人語りの激しい」「たかだか語り手自身の了見を"世界"という誇大な言葉で表したがる傾向」を持った作品を揶揄する言葉でした。しかし、その後議論が進んでいくうちに「エヴァっぽい」という面は抜け落ちて言葉がひとり歩きを始め、先述の3要素がセカイ系の定義とされました。

 こうした経緯は『セカイ系とは何か』で一冊の本になってしまうほど、一口に説明できるものではありません。しかしながら、この3要素を少々乱暴に咀嚼すると、結局は社会のことなんかどうでもよくて、「ぼく」自身がすべてであり、いつだって「きみ」から疎外されることに恐怖を感じている、ということなのかもしれません。

 こうした要素は誰もが内面に抱えている問題であり、多くのドラマや映画でも描かれる普遍的なもの。エヴァであれポスト・エヴァであれ、斬新な設定もさることながら内面に訴えかける普遍的な要素があったからこそ、多くの人の心を捉えたのではないでしょうか。

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