葬式にかかる費用、日本が世界一~『お坊さんが隠すお寺の話 』

お坊さんが隠すお寺の話 (新潮新書)
『お坊さんが隠すお寺の話 (新潮新書)』
村井 幸三
新潮社
714円(税込)
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 葬式の必要性を問う本が、今話題になっています。その中で、葬式にかかる費用が日本は世界一。「戒名のために人はお寺にどれだけお金を払わなきゃいけないのか」などの指摘によって、お寺がものすごく儲けているとの印象を受けた人も多いはず。しかし、儲かっているお寺とそうでないお寺、住職としての仕事以外に副業をもたないと暮らしていけないお寺など様々。格差社会がお寺業界にも広がっているのです。

 「裕福なお寺の多くは宗派不問の大規模霊園をもっている」とは、『お坊さんが隠すお寺の話』の著者、村井幸三さん。「お墓難民」という言葉も出てくるほど、お墓の数が足りていないと言われている昨今。しかし、お墓なしというわけにもいかないので、宗派は違えど、墓地の空きがある大きなお寺へ行かざるをえなくなります。すると、「はじめはこだわっていた宗派も面倒になってきて『宗派は違うけど、このお寺に供養をお願いしようかな』といった心理におちいる」と村井さん。こうして裕福なお寺はより裕福に。条件の整わないお寺から流れて、格差が生まれてしまうケースが増えているのです。

 そのため農村部では、住職の他に町役場や農協に勤めながら、というケースも多々見受けられるのだとか。また、いくつかのお寺の住職を兼務してやっとお寺を維持しているケースも。しかし、大都市にあるお寺は、大規模霊園の経営だけでなく駐車場、マンションの経営、保育所や幼稚園経営などを手広く手がけているところもあり、檀家数が減っても他の収入でやりくりできるのだそうです。

 ここまでくると、お寺ももはや企業と同じ。現代人に必要なものをすばやく察知して取り入れなければ、生き残ることが難しくなってきています。本来なら人の心に平穏を与えるのがお寺の存在ですが、葬式の必要性を問う本まで流行りだしている今、まずは"自分たちの心に平穏を取り戻したい"と感じているかもしれませんね。

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