第15回

 トラウマになりそうな事務所の抗議のあった翌日は、オレにとって初の表紙とグラビアの撮影だった。その日は、なんと天皇誕生日(現・昭和の日)。街中で の撮影もあるので、フツーなら平日に撮影したいところなのだが、モデルが高校生のため学業優先、基本的に土日か祝日の撮影。しかも「投稿写真」の進行スケ ジュールは、月の下旬から上旬に撮影しなければならないので、GWなんて関係なし。

 その日の予定は、竹芝桟橋付近で制服と普段着、表紙 を撮って、その後、原宿のスタジオでレオタードの撮影。意外にも、竹芝はたいした人出もなく、撮影はスムーズに進む。昼飯をゆっくり食べても、16時のス タジオ入りには時間が余ってしまった。

「じゃ、原宿でも少し外撮りをしよう」
 モデルのテンションが切れないようにするためか、 Fカメラマンが提案を出す。
(原宿で外撮りって、ヤバくない? この人、今日が天皇誕生日だってこと、忘れてるんじゃなかろうか?)
 と も思ったが、サン出版のエースカメラマンの一人でもあるFさんの提案に、新米が異議を唱えることなどできない。

 結果、表参道のホコ天で 数十人の取り巻きが囲む中、撮影を決行することとなった。
「何の(雑誌)撮影ですか?」
「モデルのコ、可愛いですね。タレントさん?」
「TV とかに出てるコ?」
 こっちは、レフ板当てたり、カメラマンの指示をモデルに伝えたり、モデルをおだてたりと忙しいというのに、野次馬がうるさい うるさい。
 
 外撮りはこの後、何十回もやることになるのだが、モデルがたとえそこそこTV露出しているアイドルでも、都会の無関心とい うか、仕事の邪魔をしてはいけないと気を使ってか、ほとんどの場合、見物人から話し掛けられるということはなかった。しかし、この時は、GWということも あって、地方から遊びに来ている人も多かったのだろう、話し掛けてくる人が、絶え間なかった。
 
 7月号のグラビアには、元おニャン子ク ラブ・会員番号20番の寺本容子も出ているのだが、残念なことに別の仕事が入ってしまい、撮影に同行することはできなかった。