第51回

「パン!」
 イヤープロテクター越しに聞こえてきた銃声は、子供の頃遊んだ爆竹のような音だった。22口径のせいかリコイルも予想していたほど強くなく、拳銃は最初に構えたままでいられた。
(えっ! こんなもんなの?)
 人生初の拳銃発射は、意外とあっけなかったというより、物足りなかった。
(これなら片手でも打てそうじゃん)
 しかし、そんな余裕も口径が上げるにつれて、消し飛ばされる。22マグナム、38口径までは、大丈夫だったものの、38マグナムになって一発目、銃声からして「ドン!」と来た。リコイルも22口径の何倍も大きい。
(これは...ひょっとして凄い!?)
 ここからは、必死だった。銃は大きく重くなり、的に向けて制止させておくだけでも一苦労、映画で見るような片手撃ちなど絶対にできそうにない。なんとか38マグナムを撃ち終える。次は、45口径だ。渡された拳銃は、38マグナムよりさらに一回り大きい。初心に戻って(といっても十数分前だが(笑))、構えを整える。ナメクジが這うよりもゆっくりと人差し指を引く。はっきりいって怖かった。
「ズドン!!」
 音も凄いがリコイルも負けていなかった。
(なんとか撃てそうだな)
 一発目を撃つことができたので、ホッとしつつも自信がついた。そして、残り5発を撃ち終える頃には壮快感さえ覚えていた。
 全弾撃ち終え、レンジを出て、装備を外す。汗びっしょりになっていた。射撃場を出て、店内に戻る。少し遅れてFさんも戻ってきた。やはり、スッキリした顔をしている。それじゃあ帰ろうとすると店員が、ちょっと待てという。なんだ? と思って待っていると射撃場から標的を持って来てくれた。それと一緒に撃ち終わった薬莢もおみやげにくれる。サービス満点だ。
 オレ達は、本来の仕事はまだ始まってもいないのに、もう一仕事終えた気分でホテルに戻った。

「おいおい、これ見ろよ」
 部屋に戻って一杯やっていると、Fさんが自慢気にさっきみやげにもらった標的を広げて指さす。
「ど真ん中だぜ」
 一発だけだが、穴が開いている。
「やっぱりなあ。カメラ(で写真撮るの)と似てると思ったんだよ。俺って才能あるのかもなあ」
 重い機材を手で固定し、被写体を狙い、ブラさないように固定してシャッターを押す。リコイルこそないが、似ていると言われれば、確かにその通りだ。
「最初に思ったね、うまく撃てるんじゃないかと。やっぱりなあ、ど真ん中かよ...」
 このまま黙って聞いていると、一晩中自慢しそうな勢いだ(笑)。
「さーて、明日も早いですから、今日のところはこのくらいで寝ますか」
 Fさんの話を遮って、オレは寝支度を始め、記念すべき(?)グアムでの第一夜を無理矢理終わりにした。