第61回

 グアムから帰ってすぐ取りかからなければならなかったのは、1Cページ「FIインタビュー」に代わる4Cページの「IDOL SCRAMBLE」のキャスティングだった。ロケ直前、編集長から、これまで毎号一1人だったインタビューを3人に増やすように言われていたのだ。 

 これは2月号から始まった「投稿写真」のマニア向けアイドル雑誌化の総仕上げだった。
 以前に比べれば、慣れてきたせいもあって、キャスティングにはそれほど苦労することはなくなっていたとはいえ、「アイシミュ」も含めて毎月4人ともなるとかなり荷が重い。
「一回限りではなくて、何回出してもいいのならなんとかなりますけど...。それと表紙のキャスティングに関してもある程度任せてもらえると、話がしやすいのですが...」 

 アイドルの基本的なプロモーション展開は、レコードデビュー後にほぼ3か月に一枚のシングル、年に1、2回のアルバム(これはそれなりに売れた場合)を出し、オーディションにうまく受かれば、ドラマや映画などの出演がある。事務所やレコード会社にとっては、そうした節目ごとに露出を図って宣伝しなければならないので、そのタイミングなら協力が得やすいと踏んだのだ。

 実際のところ、1Cページのインタビュー、それも最初の一回限りでその後のフォローもできないとなると、事務所にはあまりいい顔はされない。
「今度新曲が出るんで、何か頼みますよ」
 そんな話をマネージャーにされても、これまではいい返事ができないでいた。水着がOKなら、'86年12月号の江戸真樹のように表紙・グラビアで出てもらうことも可能だったが、そうでもない限り、編集長は首を縦に振ってくれることはほぼありえなかった(例外は藤井一子くらい)。それが、インタビューだけでも節目ごとに応じられるとなれば、毎月1人や2人ならなんとかなりそうだ(もちろん、初登場のアイドルを出すことも重要だが)。

 表紙に関しては、アイドル雑誌を標榜するのであれば、雑誌の顔はアイドルでいくのが当然と考えていたので、これまでのような水着モデルでのキャスティングより、芸能担当のオレがやるべきと思っていた(とゆーか、どこかのタイミングでオレに振られるであろうことを覚悟していた)。また、「IDOL SCRAMBLE」「アイシミュ」→表紙・グラビアの流れができれば、それをチラつかせることで交渉もはかどる。 

 そんなワケで毎月のキャスティングが4人(表紙・グラビアも含めると5人)に増えるのは、一見大変そうだが、複数回の登場OKと表紙のキャスティングを任せてもらえれば、それほどきつくはない。編集長がそこまで考えてくれたのかはわからないが、編集になってやっと丸1年のオレの生意気な申し出を了承してくれたのは、この上なくありがたかった。