第86回

  続く6月号では、ちょっとした事件があった。
 インタビューのためのアポ取りで、「スワンの涙」というドラマの主役が宮沢りえだったので、ダメモトでフジテレビの番宣に電話を入れた。すると、
「事務所がOKすればいいですよ」
 意外な答え。それじゃあ、と事務所に電話すると担当の女性は、
「フジテレビがOKなら」
 との返事。再びフジテレビに電話した。
「事務所の方でそういうことでしたら」
 すんなりとスケジュールを出してくれた。
(あの宮沢りえのインタビューが取れた!!)
 コサックダンスでも踊り出したい気分だった。ところが、フジテレビの出してくれたスケジュールは、他の撮影と重なっていた。泣く泣く三橋に代役を頼む。 

 取材当日、撮影が早目に終わったので、取材に出た三橋よりも先に編集部に戻ってくるろいでいると、しばらくして三橋が戻ってきた。
「どうだった? 宮沢りえは?」
 三橋は、難しい顔をしていた。
「インタビューできませんでしたよ。「投稿写真」が来るって待ち構えていて、スタジオにさえ入れませんでした。どうなってるんですか、大橋さん」
 どうにも納得できないといった表情だ。
「え~、ちゃんとアポ取ったのに...。ちょっと事務所に訊いてみるわ」
 すぐさま、事務所に電話する。担当の女性が出た。取材の件を切り出すと、そんなことを言った覚えはないという。それどころか、オレと話すのはこれが初めてだというのだ。
「じゃあ、あなたの名前を私が知っているのはなぜなんですか」
 オレは、荒げそうになるのを必死にこらえた。
「さあ、どうしてですかねえ」
 完全にトボケようとしている。向こうがその気では、何を言ってもしょうがない。オレは、あきらめて受話器を置いた。 

 おそらく、事務所の担当者はフジテレビがスケジュールを出すとは、思っていなかったのだろう。ところが、フジテレビがすんなり出してしまったので、とんでもないことになったと、自分のミスを誤魔化すために取材をシャッタアウトして阻止、抗議の電話にも知らぬ存ぜぬを決め込んだのだろう。ダメならダメと最初に行ってくれればいいものを(仮にフジテレビがスケジュールを出した後でも)ずいぶんと子供だましな手を考えたものだ。まるで馬鹿にされたようで怒り沸騰だったが、ぶつけどころがなく、泣き寝入りするしかなかった。