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2月27日(木)

トイレのポツポツ
『トイレのポツポツ』
原 宏一
集英社
1,296円(税込)
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 通勤読書は『トイレのポツポツ』原宏一(集英社)。食品メーカー「鴨之木製麺工業」を舞台に、大きくなっていく会社の軋みを、各部署の人間を通して描く連作短編集。もし書店の棚に「北上次郎」というジャンルがあったとしたら間違いなくその真ん中に差されるであろう作品だ。隣に並ぶのは山本幸久の『カイシャデイズ』(文藝春秋)で決まりか。

 いつの間にか「本の雑誌」の執筆者になっている中井の伊野尾書店・伊野尾さんを訪問するとレジに小社助っ人・鉄平が立っていてビックリ。いや私が派遣したのだから、いて不思議はないのだが、訪問時にいたのは初めてなので驚いたのだ。本の雑誌社では見せたことのない1500部くらいの笑顔で「いらっしゃいませ」と言っていた。まだまだ甘いな。

 伊野尾書店といえば私が年末にアルバイトをさせていただいた書店で、その日のことを「本の雑誌」でルポしようと原稿を書いていたのだが、時機を失い、没になってしまった。残念。

 そういえばとある書店員さんに教えられ、2冊の本の帯を見てビックリしたのだ。なぜなら片方には「2008年 フランス 本屋大賞 受賞作」とあり、片方には「フランスの「本屋大賞」受賞」とあったからだ。

 ちなみに2冊の本は、『ノーと私』デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガン(NHK出版)と『優雅なハリネズミ』ミュリエル・バルベリ(早川書房)で、あわててそれらの本を開いて確かめてみると、『優雅なハリネズミ』の著者略歴に「Prix des libraires」受賞とあるから、おそらくこれを「本屋大賞」と意訳というか、超訳しているのだろう。しかしなぜかこの著者略歴では「書店員賞」と訳されていたりする。

 どちらにしても「Prix des libraires」が、たとえフランスの書店員の投票で決める賞であったとしても、それはどこまでいっても「Prix des libraires」であって、本屋大賞は、我々が何回も何回も議論して決めた、あのルールに乗っ取ってやっているものをさすのである。だから超訳されては困るんだけど、もしかして私が「春日部のマラドーナ」と呼ばれているのと一緒だろうか。

 『週刊文春』が昨年「R40本屋さん大賞」なんて特集もしたけれど、この先、日本では「本家・本屋大賞」とか「元祖・本屋大賞」とか「本屋大賞総本山」などと、どこぞの和菓子屋みたいになっていったりしたりして。いや、そういうことにならないよう「本屋大賞」は商標登録しているんだけど、みなさん類似品にお気をつけ下さい。

 そして本屋大賞の二次投票投票締切は明日だ。

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