『「本の雑誌」炎の営業日誌』

単行本『「本の雑誌」炎の営業日誌』発売!
杉江由次(著)/無明舎/定価1,680円
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2月4日(木)

 今月の新刊『キムラ弁護士、小説と闘う』の見本ができあがったので、取次店さんを廻る。

 夕方、高野秀行さんと書店で会う。高野さんは身ぐるみ剥がすインド人のような顔をして、とっても魅力的な提案をするので、思わず一週間の長期休暇を会社に申請しそうになってしまったが、私がパスポートを持っていないことを告げると、高野さんの顔は急速に萎んでいった。

 夜、本屋大賞の会議兼送別会。仲間が異動になるのだが、絶対会いに行こうと決意した。
 そこはパスポートがなくても行けるところだ。

2月3日(水)

キムラ弁護士、小説と闘う
『キムラ弁護士、小説と闘う』
木村 晋介
本の雑誌社
1,680円(税込)
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『キムラ弁護士、小説と闘う』の営業で駆けずり廻りつつ、夕方原宿へ向かう。
 私と原宿の接点は、「ちゃおスタイルショップ」しかないのであるが、今日は「買って買って」娘はいないため、それ以外の場所に向かうのである。

 竹下口から歩いて5分。そこにあるのは「Bibliotheque」(渋谷区千駄ヶ谷3-54-2  TEL.03-3408-9169)である。こちらはデザイン事務所:スーパースタジオが長年に渡り蒐集してきた蔵書を一般に開放した図書館兼カフェである。写真集やアートブック、広告関係の雑誌などなど、カッコイイ本がいっぱい並んでいるのだ。

 それだって私に関係ないように見えるのだが、何を隠そうここを整理し、お手伝いしているのが、かつて青山ブックセンターや東京ランダムウォークでお世話になっていた、最も尊敬する書店員さんのひとりIさんで、Iさんはある日突然青山ブックセンターを退職されてしまったので、ご挨拶もなにもできないまま時が過ぎていたのである。

 再会を喜びつつ、珈琲を頂く。美味しい。何だか大変居心地の良い空間で、「そのうち60年代だけに限った古本屋さんをやりたいのよ」と話すIさんの話を聞いていたらあっという間に一時間が過ぎていた。

 節分のため、早く家に帰る。鬼。

2月2日(火)

愛は苦手
『愛は苦手』
山本 幸久
新潮社
1,470円(税込)
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 当日記で一番取り上げている作家は誰かと言うと、おそらく山本幸久なのではないか。新作が出ればすべて読み、ほとんどこの日記で紹介してきたように思う。しかしなかなかプレイクしないのが歯がゆいのであるが、なんとなくその理由も分からないわけでもなく、逆に山本幸久にも歯がゆい思いを持って見つめていたのである。

 そんなところに新作『愛は苦手』(新潮社)が出た。帯には「"アラフォー"って自分では笑えるけど、他人にそう呼ばれると、なぜか嫌。 20代はみんな私に優しくて、30代は大丈夫と思ってて。でも気づいたら前にすすめないよ...。愛についてふと考える彼女たち──連作短編集」とあり、裏面には「ラブとピースは、どこなのよ〜!! この説明は読者の年齢・性別を限定するものではありません。愛は時々わからなくなりますので注意しましょう。」とあるから、いつもの、著者紹介にあるような「軽妙な文章と物語」の作品なのかと思って読み出したのである。

 ところがである。もちろんそういう部分は今までどおりあるのだが、この短編集の山本幸久は明らかに変わりだしたと思う。どんな変化かというと、今まで山本幸久の手のひらの上で転がされてきた"小説"が、ついにこぼれ出し、本気で"小説"と格闘しだしているのである。あるいは、今までの山本幸久は上手さが目につき、仏を彫って魂入れずな感じがどこかにあったのだが、この『愛は苦手』にはしっかり芯があるのだ。

 30代後半から40代にかけて、このままでも暮らしていけるがそれでいいのか、10代、20代の頃に考えていた人生と今生きている人生の違いのなかで、今の自分を肯定していいのか、否定して何か始めた方がいいのか、そういうものがしっかり描かれているのである。

 できることなら、私は、この方向性の長編を読みたい。そしてその先には、角田光代や山本文緒の背中が見えるのである。それはもうすぐそこだ。頑張れ! 山本幸久。

 ところで帯に「連作短編」とあるが、どこが連作なんだろうか。

2月1日(月)

世界ぐるっとほろ酔い紀行 (新潮文庫)
『世界ぐるっとほろ酔い紀行 (新潮文庫)』
西川 治
新潮社
620円(税込)
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世界ぐるっと朝食紀行 (新潮文庫)
『世界ぐるっと朝食紀行 (新潮文庫)』
西川 治
新潮社
700円(税込)
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 通勤読書は、待望のというか、こんな続編がでるなんて!と驚きの『世界ぐるっとほろ酔い紀行』西川治(新潮文庫)である。新潮文庫での前作が『世界ぐるっと朝食紀行』でこちらは、著者が世界中で食べ歩いた朝食を紹介した本なのであるが、その語り口が素敵で、何度か読み直している大切な本であった。

 そして今回の『ほろ酔い』では、当然ながら世界中で飲んできた酒とツマミが紹介される。その世界の広いこと。タイ、フィリピン、韓国、モンゴル、インドネシア、ベトナム、フランス、スコットランド、スウェーデン、イタリア、イギリス、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、フィジー、そして日本と中国。酒のない国はないのである。ああ、素晴らしい文庫本だ。

 朝イチで、神保町の東京堂書店さんから電話。「『新書七十五番勝負』がなくなっちゃいそうで......」。あわてて直納に向かう。それにしても本の本が売れる東京堂さんとはいえ、発売からベストテン入りをずーっとキープしており、6位、9位、5位となっているのである。すごい。

1月29日(金)

アンギャマン リアル遠足伊勢巡礼編
『アンギャマン リアル遠足伊勢巡礼編』
左剛蔵
エンターブレイン
1,260円(税込)
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孤独のグルメ (扶桑社文庫)
『孤独のグルメ (扶桑社文庫)』
久住 昌之,谷口 ジロー
扶桑社
630円(税込)
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釣れんボーイ 上 (ビームコミックス文庫)
『釣れんボーイ 上 (ビームコミックス文庫)』
いましろ たかし
エンターブレイン
893円(税込)
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 昼。某所で新規書店をオープンさせる店長さんと食事。
 猛烈に忙しそうなのであるが、大変楽しそうな表情でお店の図面を広げていた。もうすぐ名店が生まれるのだ。

 その後、かつてリブロ渋谷店でお世話になっていたSさんが、雑司が谷にオープンさせた、謎の本屋・ひぐらし文庫を訪問。「ただただやってみたかったのよ」と話す店内は、たった5坪ながらなんだか居心地の良い空間になっていた。本棚にはSさんのお気に入りの新刊本&古本や雑貨が、対面する側はカウンターとなっておりコーヒーや紅茶が飲める。

「まだまだなのよ〜」と話すとおり発展途上のお店だけれど、なんだかこういうことを私もしてみたい。

 給料日なので、定時にあがってブックファースト新宿店へ。京王線新宿改札から一番近い大きな本屋であり、品揃えもしっかりしているので、最近はついここに足が向かってしまう。ここは迷路のようなというか、カオス的な売り場のなっているのだが、私のコースはいつも決まっていて、文庫、新書、サッカー本を見、めぼしいものを一度精算。その後、雑誌をちろちろ見ながら、文芸、芸術、旅本と漁り、また精算。人文書を見た後、児童書コーナーに向かい、その後は階下の理工書の売り場を徘徊する。

 そしてこの日そんな無目的徘徊から素晴らしい本を発見したのであった。
 それは旅本のところに並べられていた『アンギャマン リアル遠足伊勢巡礼編』左剛蔵(エンターブレイン)で、なんだろうとページをめくってみると、写真のなかにイラストで自分を書き入れるという独特な手法で書かれた旅漫画であった。

 なんだか猛烈にピンとくるものがあって、すぐレジに向かったのであるが、これがもう帰りの埼京線で読み出したら止まらない。久しぶりに電車をわざと乗り過ごし、大宮まで埼京線に揺られてしまった。

 内容は大阪から伊勢まで徒歩で寺社仏閣をお参りしながら、野宿で向かうというただそれだけの話なのだが、この独特な手法で描かれる世界は、名作「孤独のグルメ」久住昌之、谷口ジロー(扶桑社文庫)か傑作『釣れんボーイ』いましろたかし(エンターブレイン)に通じるものがある。

 いまのところ私の2010年ベスト1である......ってまだ1ヶ月だけれど。