11月11日(月)

 雨。早起きしてDAZNにてマンチェスター・シティ対リバプールを見る。いきなり立て続けに点を取られ、この週末は黒星ダブル。

 雨やむ。先週はノンフィクション本大賞の発表があり、その準備や発表会のお手伝いと、そしてその後17回目を迎える本屋大賞の打ち合わせなどが続いたので、なんだか仕事した感満載だったのだけれど、実はそれらすべて仕事ではなくボランティアというか余技というか余興というか自らはじめたものとはいえある種なんだかわからないものであり、しかもノンフィクション本大賞となったブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』がバカ売れの大増刷だよと興奮していたのも他社本であるわけで、いったい私は何してるんだろうと虚無に襲われた週末なのであった。

 結局、本屋大賞みたいなことをやっているのは、実は自分の本来の仕事から逃げ出そうとしているのではなかろうか、あるいは自分の能力のなさと向き合うことから目をそらすためなのではないかとさらに落ち込みそうになったので、週末はいつもより長く走り、どうにか気持ち持ち直すのに成功、本日無事出社できたのであった。

  ☆   ☆   ☆

 本の雑誌の取材で与那国島のカディブックスへ行けたのは、自分の中で宝物のような経験だった。

 小さな島に小さな馬が好きなように暮らしていて、その馬のとなりに河田棧さんが居た。

 あんまり自分は内面みたいなものと向き合わないようにしているのだけれど、カディブックスの本を手にすると、自分のやわらかいところの声をもっと耳を澄まして聞いた方がいいんじゃないかと思えてくる。日常生活でないがしろにしている言葉にならないなにかを。あるいはわざとフタをして聞かないようにしているものを。

 今日、千駄木の往来堂さんを訪ねたら、そんなカディブックスの小さなケース入りの新刊『くらやみに、馬といる』』が並んでいた。まるでそれは与那国島から届いたmessage in a bottleのようだ。大切にじっくり読む。自分自身からどんな声が聞こえてくるか耳を澄ませる。

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10月5日(土)

 9時に事務の浜田と京成本線志津駅で待ち合わせし、佐倉市立志津図書館前の"萌の広場"で開催される「本気BOOKフェス」へ。

 「本気BOOKフェス」は、ときわ書房志津ステーションビル店さんと佐倉市立志津図書館さんが主催となって、18の出版社と1つの高校の文芸部、そしてたくさんの飲食店が出店する本を中心としたお祭りだ。今回が第1回目なのだけれども、ときわ書房の日野店長から出店しませんか? とお声かけいただき、「ぜひ!」と即返したのであった。

 野外イベントなので天気がいちばんの心配だったものの、前日の雨降りはどこ吹く風、いや風ひとつないどころか10月になったというのにまさかの30度超えのピーカン照りとなり、そしてまたもうひとつ心配だった集客もオープン前から驚きの人出で、各社のブースに人だかりででき、お客さんと会話をしながらどんどん本が売れていく。

 出版業界のあちこちで図書館との協力とか学校との連携なんてお題目のように叫ばれているけれど、こんな風に実際にそのすべてが手をつないで読者のために何かができているのを初めてみた。図書館の目の前で、図書館に本を借りにきた人たちが本を買っていく。高校生は自分たちで作った雑誌をどの出版社よりも大きな声をかけて販促し、そして出店している出版社の人たちと本の話をしている。当たり前のことなのに今までほとんどできていなかったことだ。まさにこれこそが本の輝ける未来の道しるべなのではなかろうか。

 その中心にいるのが、ときわ書房の日野店長で、日野店長はタオルを首に巻き、この日のために作ったオリジナルTシャツを着て、子どもたちから「あっ、本屋のおじさんだ!」と声をかけられている。

 そんな日野店長を見つめながら、あるお客さんがこんな言葉をもらしていた。「ときわ書房は町の誇りなんです」

10月4日(金)

 朝、雨。妻と娘を車で駅まで送る。自分が家を出る頃には雨がやんでいた。

 10月の新刊『この作家この10冊 2』の書影が届いたので各所に登録。書影ができたら書影を、目次ができたら目次を、タイトルや値段が決まれば当然それらもあちこちに登録し、情報をどんどん読者に届けている。それなのに本が売れないとはどういうことだ。10年くらい前まで本の情報なんてお店に行って現物を見るしかなかったわけで、しかも本が出たことすらわからず本屋さんに行っていたのだから、果たしてどうしてあの頃あんなやり方で本が売れていたのだろうか。

 夜、早めに帰宅し、ランニング。調子にのって12キロ走ったら汗ダラダラ。10月なのに暑い。

10月3日(木)

 通勤電車。後ろに立つ女性のスマートフォンの先っぽが、私の背中にずっとくっついている。もしかして新しいiPhoneは人の背中から充電できるようになっているのだろうか。

 午前中、座談会収録。

 午後、矢部潤子さんの原稿を整理していると、内澤旬子さんから『着せる女』の著者校が届く。どちらも、一歩一歩、本に、近づいていっている。

 夜、打ち合わせ。のち、飲み会。

10月2日(水)

 営業に向かうべくお茶の水橋を渡って丸ノ内線・御茶ノ水駅に降りていくと、改札のところでランドセルを背負った制服姿の小学生が激しく泣きじゃくっている。小学1年生くらいだろうか。駅員さんに必死になにか訴えているものの嗚咽しているので言葉にならない。

 不審者に襲われたのだろうか。それともお母さんに渡されたキッズ携帯でもなくしたのか。娘が小さなかった頃の姿が重なり、胸が締め付けられる。

 ホームの端に立ち、しばらく様子を見守っていると、同じ制服を着た女の子が二人やってきた。友達だったのか泣きじゃくっていた女の子は、二人の元に駆けていった。そして改札を通り、反対側のホームに行くために階段を三人並んで降りていく。もうその顔に涙はなかった。

 取り残された駅員さんと私は無事解決したことに胸を撫で下ろし、私はやってきた電車に乗って営業先へ向かった。いじめじゃないといいんだけれど。

 そういえば娘があんな風に泣いたのはいつが最後だっただろうか。

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