3月15日(金)

 食堂で食べ終えたお皿に鼻をかんだティッシュを置く人がいて、同席していた人が「それはいかんだろう」と注意したのだけれど、何を咎められたのかわからない様子でヘラヘラ笑い、しばらくしたらまた鼻をかみ、悪びれることもなくティッシュをお皿に置いた。

 人間の育ちというというのはこういうところに現れるのだ。

3月14日(木)

『古書古書話』の見本を持って取次店さんを廻る。さすがに3月末ということもあり、窓口に行列ができている。搬入カレンダーにも受付終了の☓印が並ぶ。

 大阪屋栗田さんの見本出しを終えたところで一旦帰社。社内で座談会収録。

 収録後、改めて見本を持って、地方小出版流通センターさんへ。担当のKさんとお話していると「これ、知ってる?」と言って、「NAGI 凪」76号(月兎社)を見せられる。三重で制作されているローカル誌なのだけれど、なんと特集が「町の本屋なくしてええの?」。東京の雑誌では目にしないお店や人が多数取り上げられており、すぐさま購入。

 そしてこれ最近売れてるんだよね、と『のほほんと暮らす』西尾勝彦(七月堂)も教えていただく。

 いやはや先日の飲み会じゃないけれど、面白い本や雑誌を作っているところはたくさんあるのだ。負けないように精進しなければならない。

 その後、営業。直帰して六本木のBillboard Live TOKYOで、読者のIさんがチケットを取ってくれた佐野元春 & The Hobo King Bandのライブ「Smoke & Blue」へ。

 ここ最近The Coyote Bandのライブは行っていたのだけれど、Hobo King Bandは久しぶりで、古田たかし(Dr.)、Dr.kyOn(Keys.)、井上富雄(Bass)、長田 進(Gui.)の安定感と余裕から生まれるアーバンロックの変幻自在な演奏に酔いしれる。特に長田進のギター。吠えて泣くのだ。至福の時間を過ごす。

3月13日(水)

 半休を取って、娘の卒業式に行く。高校ともなれば父親が行く必要もないのだけれど、娘が通っているのは私の母校でもあり、このチャンスを逃すともう母校の門をくぐることもなかろうということで、妻とともに門出を祝いにいく。

 式の途中で表彰があり、娘の名前が呼ばれたのでなにごとかと思ったら、皆勤賞なのであった。しかも今年1年ではなく、高校3年間一度も休んでいないのだという。

 父親である私は3年間のうち1年分くらいは登校しておらず、娘は私の分も学校に通ってくれたということだろう。あっぱれ。

 それにしてもこの皆勤賞の娘が、幼稚園の入園日翌日から小学校2年になるその日まで、毎日毎日「幼稚園に行かない」「学校に行かない」と泣き叫び、時にはトイレに籠城し、ときには玄関でひっくり返り、ときには嗚咽しながら私の顔面を叩き続けたとは信じられない。

 毎日朝が来るのが憂鬱で、いったいこんな日がいつまで続くのだろうかと思いつつ、諭し、手をつなぎ、抱きかかえ、丸坊主になり、自転車で送るなどしてどうにか休まずに幼稚園に送り届けていた自分を褒めてやりたい。

 娘の成長と30年前自分がこの卒業式が行われている体育館で先行きのまったく想像できない人生に不安を抱えて座っていたときのことを思い出しつつ、ハンカチで涙を拭い無事卒業式も終わる。娘よ、好きに生きろ。仲間を大切にしろ。楽しんで暮らせ。

 教室で友達と別れを惜しむ娘を残し、妻と帰る。ちょうど昼時だったので、駅ビルにあった「天丼てんや」に入ると、妻が「てんやに入るの二度目だね」と微笑む。

 結婚してから生活に追われ、ほとんど夫婦や家族で外食することもなかったので、妻にはかつて「てんや」で食事した日が特別な日として記憶に残っていたのだろう。

 妻も私も高校を卒業して働き出しているので、何やら今日でひとり子どもを育てあげた気分。私たちも今日何かを卒業したのかもしれない。

3月12日(火)

 宮田珠己『ニッポン47都道府県正直観光案内』重版出来。製本所より二刷めが届く。3月は印刷所が大変混んでおり、重版の判断が遅れていたら4月の納品になっていたそう。即断即決の自分、グッジョブ!

 昼、梅田蔦屋書店の三砂さんやってくる。三砂さんはアイディアマンであるだけでなく、実行力のある人で、おかげで私がずっと夢想していた「本の雑誌おまかせセット」も実現したのであった。「SANKOUEN」でランチしつつ、さらなるアイディアを語り合う。

 夜、「八画文化会館」のIさんが、雑誌「はま太郎」や『わが日常茶飯』を刊行している星羊社の方を連れてやってくる。以前よりお会いしたい人たちだったので、すぐさま「みさち屋」へ移動し乾杯。そして次から次へと語られる出版への熱い想いとオリジナリティあふれる企画に完敗す。大いに刺激を受ける夜。

3月11日(月)

  • 家をせおって歩く かんぜん版 (福音館の単行本)
  • 『家をせおって歩く かんぜん版 (福音館の単行本)』
    村上 慧
    福音館書店
    1,512円(税込)
  • 商品を購入する
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    honto

 雨。久しぶりの登校となる娘と妻を車で駅まで送り、自分はカッパを着て自転車で改めて駅へ向かう。

「本の雑誌」2019年4月号搬入。特集は昭和ミステリー秘宝館。4月以降、中国地方5県、九州7県の本屋さんにはいったいいつ着くのだろうか。雑誌をベースにしてきた流通の崩壊か。

 昼、「山のまちライブラリー・奥多摩ブックフィールド」の活動をしているOさんとYさんが来社。「ヒナタヤ」でチキンカレーを食しながら話を伺う。廃校に本を持ち寄り、"開かれた本のある場所"を目指しているそうだが、ここにもまた本の魅力を一人でも多くの人に伝えたいと頑張っている人たちがいる。

 午後、駒込のブックス青いカバさんに「本の雑誌」の直納に向かう。特製トートバッグが欲しくなる...というか、お店全体あまりに魅力的な本がそこかしこに並んでおり、もはや納品に来たのか買い物に来たのかわからなくなり、這々の体で脱出を試みる。今、都内で一番恐ろしい場所。

 その足で、千駄木の往来堂さんに伺うと、お店の前に村上慧『家をせおって歩く』(福音館書店)の実物の家が置かれており、おののく。確かこれ、「たくさんのふしぎ」で出たときにHMV&BOOKS SHIBUYAのYさんに薦められ購入したことがあったのだけれど、今回はかんぜん版として書籍化されたらしい。改めて購入。

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 店内で笈入店長と話していると「これ立てて数日で4冊も売れたんですよ、ありがたいですよ」と早川書房がFAXで送付している『クロストーク』のPOPを教えていただく。おおお、北上ラジオのPOPではないか。

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 不忍通りの古書ほうろうさんは移転のためシャッターが閉じていて、四月中旬池之端で再オープンされるという。楽しみ。

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 そのまま常磐線の人となり、営業。オークスブックセンター南柏店さんは、高野秀行さんの著作の新たな聖地となり、ほぼすべての本が面陳状態。これが依怙贔屓というわけではなく、実際に売れているという。ならばまたゲリラサイン会を企画せねばなるまい。

 直帰して、ランニング7キロ。弓なりの月をしばし眺める。

 三浦英之『南三陸日記』(集英社)を読む。もう何回、何十回読み直したかわからない。生きるということに躓きそうになったとき、必ずこの本のページをめくる。

 生きているとは生かされているということ。生きているなら、その生を全うし、生きねばなるまい。何十回読んでも涙があふれてくる。人間の儚さ、優しさ、弱さ、強さ、逞しさ、すべてがこの一冊につまっている。


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