« 前のページ | 次のページ »

8月20日(木)

 私はほとんど毎日仕事で外に出ているので、休みの日くらい家にこもって、7人の敵から逃れたいのであるが、家族がそれを許さない。私の夏休みを心待ちにしていた、娘と息子がどこかへ連れて行けと車の鍵を持ってくるは、妻はそんなうるさい子供を早く外に連れ出せと手を振っている。

 というわけで土日を含めて5日間の夏休みのうち、2日は娘のサッカーの練習で誤摩化しつつ、残りは海やショッピングモールへ出かけた。ただ出かけてしまえば脳内は営業モードに切り替わり、子供や妻が喜ぶように振る舞ってしまうのが哀しいサガだ。やれスイカだ、波乗りだ、すれ違い通信だと大騒ぎ。ついでにいつもはまったくしない外食で、しかも私が食えない寿司屋(もちろん回転寿司)に義母も連れて行くという、最上級の接待である。

 それなのに、どうして妻の機嫌が悪いのか。

★    ★    ★

 最後の一日だけは、私のための休日にしようと思ったのだが、我が愛する浦和レッズは、柏レイソルに1対4の大敗を期す。夏で走れない、という我が娘のチーム以下の言い訳がまかり通るプロサッカーというのがこの世にあるのか知らないが、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、浦和サポーターが陣取るゴール裏は、罵声を浴びせる兄ちゃん、大声で怒鳴ろうと思ったら言葉がつかえてしまったおっさん、ブーイングする者、拍手する少数、腕組みして沈黙する多数、かなり多くのタメ息が充満したのであった。

 私は選手が挨拶した後は階段を駆け下りるようにして便所へ向かった。

 サポーターは大変である。その日の試合のために前日から早起きし、当日も試合開始の何時間も前から炎天下に並ばなければならない。試合が始まれば「好きにならずにいられない」を歌い、その後90分間飛び跳ねたり、手を叩いたり、大声をあげなくてはならない。何のために? と問われたらすべて愛するチームを勝たせるためなのであるが、その想いが通じることは数少ない。

 しかもその日の勝ち負けだけに拘らず、脳内「サカつく」よろしく、愛するチームの中期・長期的計画も練らなければならない。この方向で良いのか、監督はこれでいいのか? どこかに安くていい選手はいないか? そのために我がチーム以外のサッカーも見れば、世界のサッカーも見る。浦和レッズの社長は2、3年で辞められるが、サポーターは辞められない。

 まあ、しかし。昔はもっと負けたんだ。負けるから勝つのが楽しいのだ。
 優勝も楽しいけれど、苦労して得た1勝もまた嬉しいのだ。

 負けた日はいつもThe Eagles「Hotel California」を聞きながら帰る。泣きながら。

★    ★    ★

 8時半に出社し、机の上の荷物やらFAXやらメモやらメールやらを処理。
 窓際の人間は、3日休んでも大して仕事がたまらない。

 本厚木、海老名、町田、成城と小田急線をさっそくフルスロットルで営業。
 文芸書は、久しぶりに芥川賞受賞作品が売れていて、今年は新潮社の年ですね、と話す。

 できることなら来年は本の雑誌社の年になって欲しいが、明日は『SF本の雑誌』の増刷3刷目が出来上がってくるわけで、もしかしたら新潮社の影に隠れてこっそり本の雑誌の年が始まっているのかもしれない。隠れてなくていいんだが。

« 前のページ | 次のページ »