2月6日(水)
- 『庶民烈伝 (中公文庫)』
- 深沢 七郎
- 中央公論新社
- 761円(税込)
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「雪が降るぞ、雪が積もるぞ」と騒いでいだだけで、我が武蔵野線は70%運行となり、しかも「お客様混雑」で運転を見合わせてしまった。いつか、こんな人間味溢れる武蔵野線を主人公にした「がんばる武蔵野線」という絵本を作りたい。
3.11以降、人ごみが極端に苦手になってしまった私は、乗り換え駅が混雑しているというアナウンスを聞き、とっさにまだ動いていた武蔵野線の逆方向に乗ったのが、幸運のはじまりだった。その後、埼京線、高崎線、宇都宮線、京浜東北線(こちらは人身事故)までストップし、埼玉県民の多くが都内に通勤することが出来ずにいるなか、私は埼玉高速鉄道(南北線)に揺られ、普段と変わらずに出社することに成功した。
今後はこの経路で出勤したいのだけれど、なんと定期代が倍以上になってしまうので会社に申告できず。さすがブルジョア埼玉高速鉄道。
通勤読書は『庶民列伝』深沢七郎(中公文庫)。
雪を恐れ、真っ赤なジャーズにジーンという普段着で出社してしまった私は、どこにも営業に行けず、貯まっていたデスクワークに勤しんでいると、何だか不思議なかたちの荷物を佐川男子が運んでくる。
「前略 炎の杉江さんは鮭の身卸しをのがれたと思って『ほっ』としていたようですがそうは問屋はおろしません。油断している頃に魚は届くのです。ワハハハ。」
というわけで八戸の定期購読者・中里さんから毎年恒例の塩引き鮭が届いた。
たいそうありがたいのであるけれどこの一本の鮭を切り身にするのが、なぜか営業部の仕事でしかも本の雑誌社が常備している包丁は、もはや包丁と呼ばず鉄のかたまりとしか思えぬ切れ味なのであった。
いつの間にか雨に変わった外を眺め、逃げ出そうとしたその瞬間、事務の浜田にむんずと腕をつかまれる。
「ぐふふふふ。初めての共同作業しましょうよ」
「えっ?!」
「シャケ、入刀です!」
集英社文庫編集部の人から文庫解説を書いてくれないかという依頼。娘の中学校入学の制服代を稼がないとならないので、〆切も気にせず受ける。
一度は読んでいるその本を読みながら帰宅。帰りはプロレタリアな武蔵野線。