6月4日(土)
- 『雪の鉄樹 (光文社文庫)』
- 遠田 潤子
- 光文社
- 886円(税込)
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朝早く、息子の試合の当番で市民グラウンドに向かうも、片隅にイスを置くと試合も観ずに本をむさぼり読む。
遠田潤子『雪の鉄樹』(光文社文庫)。
木曜日に会った目黒さんから「この本を読まずに文庫王国の1位は決めるなよな」と脅された一冊だったのだけれど、まさにその目黒さん(北上次郎)が解説で書かれているとおり「すごい小説」であり「息の抜けない小説」だった。
物語は不在の人でいっぱいだ。庭師の雅雪の父親と母親、やっと買い手のついた扇の家のかつての住人、そして雅雪が面倒をみる少年遼平の両親。どうやらいない人同士が密接に絡み合った過去があるようなのだが、その謎はなかなか解き明かされない。
息子のチームがゴールを決めベンチで歓声があがろうと、息子が交代出場したことを妻から知らせれても、ページをめくることに集中していた。
予想を越える展開とその奥に潜む作者の怨念のような熱に浮かされて454ページ一気読み。気づけばグラウンドで声をあげて泣いていた。ほんとうに「すごい小説」だ。