いま最も勢いのある文芸誌「文藝」から放たれる今年度再注目作、李龍徳さんの『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』がいよいよ発売となります。
日本初の女性"嫌韓"総理大臣が誕生する近未来を舞台に在日韓国人の若者たちの運命が交錯する群像劇です。その近未来は今と地続きです。
李さんはあらゆる意味でとんでもない、危険極まるハードコア青春純文学をものしました。ヘイトが蔓延する日本社会に正面から文学で挑む度胸と野心が高い熱量となって読者を圧倒するはずです。
文学はこれまでも政治を扱って、様々な傑作を生んできました。その列にならんだなかでも屈指の小説と言えるでしょう。
それぞれに思惑を抱えたクセのある人物たちが、ある計画に向かって収斂していく。その過程が緻密な構成で描かれていて、終盤ページを繰る手が止まらなくなります。エンターテイメントとしても秀逸ということです。そして李龍徳作品ではおなじみの「男を破滅に導く女」もちゃんと登場します。
この本の読後感ははっきり言って最悪です。胃液が逆流するほどに最悪です。私たちはその最悪を引き受けないといけない。そのうえで対峙すべき現実があるからです。レイシストとそれを直視しないものに差し出された劇薬としてのフィクションでもあるので仕方ない。
そんな劇薬の処方箋、あるいは解毒剤としてのブックフェアを企画しました。「文藝」編集部で李さんと併走した担当編集者にセレクトしていただいた『竹槍』副読本を投入いたします。とても濃厚なラインナップになりました。
『竹槍』の世界観を大掴みできるフェア公式リーフレットも製作しております。人物相関図、担当編集者が本作に寄せた短文などを掲載する予定です。
ご期待ください。