『投資家が「お金」よりも大切にしていること』新刊超速レビュー

文=田中 大輔

投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)
『投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)』
藤野 英人
講談社
886円(税込)
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日本人は世界一お金が好きな民族である。絶対に損はしたくないという思いが強く、投資には手を出さず、預貯金をしている人が圧倒的に多い。金融資産の割合でいうと55%が預貯金に回されている。これは他の先進国からみても圧倒的に高い数字だ。先進国の多くは預貯金よりも投資の割合のほうが高い。

また日本人は世界一ケチな民族である。日本人は寄付をしない。先進国では家計の2~3%を寄付しているが、日本にいたってはたったの0.08%しか寄付をしていないそうだ。震災が起きた年に寄付額は倍増したが、それでもたったの0.16%。先進国の寄付額には遠く及ばない。

このように日本人は困っている人のために寄付もしなければ、社会にお金を回すための投資もしない。結局のところ、自分のお金を守ることしか考えていないのである。人のためにはお金を使いたくない。人よりも信じられるのはお金だけ。そんな国民性が見てとれる。

しかも「お金儲け」=悪という認識があるからやっかいである。儲けるということに対しては、ネガティブなイメージを持っている人が多い。とくに投資や不労所得で儲けると汗水たらして働いていないと批判されたりもする。

このあたりはとても矛盾している。お金は好きで、心の底では儲けたいと思っているのに、公には口にはできない。口にすれば叩き潰される。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ......ポイズン。の状態である。

そういった考え方の原因になっているのが「清貧の思想」だという。清貧の思想は「理念に生きるために、あえて豊かな生活を拒否する」という考え方だが、これがいつのまにか「豊かになるためには、理念を捨てて汚れなくてはいけない」という考え方に変わってしまったという。

そこで著者は「清豊の思想」を提唱している。清く豊かに生きることこそが、世の中をいい方向に変えていくというのだ。そのためには経済について考える必要がある。

著者は経済を「お金を通してみんなの幸せを考えること」と定義している。ではどのように行動すれば「みんなの幸せ」に貢献できるのだろうか?それは一人ひとりがよい消費者になることだという。

過剰なサービスを求める消費者が、ブラック企業を生み出している。消費活動は、必ず誰かの生産活動につながっているからだ。需要があって供給が生まれる。その逆はない。つまり過剰なサービスを求めるあまり、企業はそれに対応せざるをえなくなっている。そのしわ寄せが従業員にいき、結果としてブラック企業が生まれている。この負のスパイラルはどこかで断ち切らなくてはならない。そのためにも、一人ひとりがよい消費者になることはとても重要である。

また消費活動は社会貢献であるという観点から考えると、消費をすることは素敵な商品やサービスを提供してくれている会社や従業員を応援する行為と同義である。世の中はみんなが使ったお金で成り立っている。つまり消費をするということは社会を創造するということなのだ。

正直なところ、この本がHONZむきの本かどうかという点でレビューを書くか少し迷った。しかし、とても素晴らしい本だったので、ぜひ紹介したいと思いこのレビューを書いた。私はこの本を読んだことで、お金や消費に対する認識がガラリと変わった。

もっと自覚的にお金を使おうと思ったし、より自覚的に行動をしなくてはいけないと感じた。いまこのタイミングでこの本を読むことができて、本当に良かったと思っている。お金について考えることは、まさに人生を考えることである。あなたもこの本を読んで、お金と真剣に向き合ってみてはどうだろうか?

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