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魂よ眠れ
魂よ眠れ
ジョージ・P・ペレケーノス (著)
【ハヤカワ・ミステリ文庫】
税込1050円
2006年6月
ISBN-4151706607

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  久々湊 恵美
 
評価:★★★★☆
 人種差別と銃とドラッグをめぐる事件が大きなテーマとなっている一冊。これはシリーズの第三作目ということで、一作目二作目は読んでいないのですが、最初のイメージと違っていたのです。
もっとタバコくわえたハードボイルドな世界を想像していたのです。どちらかというと社会的な問題を取り上げていて、アメリカにはびこっている闇の世界を垣間見たような気がしました。
 底辺で育ってしまったものは、底辺でしか生き延びていくことができない。それは、今日本でも少しずつ問題となっている部分でもあるのだと思うと。いつかこれが物語ではなくなってしまうかもしれない、と空恐ろしい気持ちになってしまいました。
 一作目二作目に登場した人物も今回の三作目には登場しているとのこと。そんな事を言われちゃ、過去作品も読まずにはいられません!

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★☆☆
 主人公デレク・ストレンジのナイスガイぶりを見よ。こんな殺伐とした話ででなく、ハリウッド映画によくある“荒れた学校を立て直すためにやってきた熱血教師”といった役回りか何かで活躍する彼をみたいものだ。
 日本も昔ほど治安がいいとは言えなくなってきたとはいえ、この本に書かれるような暴力や憎悪の連鎖とそれらを断ち切れずに次々と命を落としていく人々を目の当たりにすると、銃社会であるアメリカの暗い面を見せられた気がしてぞっとする。何でもかんでも社会や環境のせいにするのは好まないが、生まれながらに何のチャンスも与えられない人間もいるのだということを思い知らされる。  
でもストレンジは戦っている。堕ちていこうとしている人々に必死で手を貸そうとしている。それもまた、アメリカという国の明るい一面だ。

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  島村 真理
 
評価:★★★☆☆
 黒人探偵デレク・ストレンジシリーズ第3弾。
 残念ながら私にはついていけなかった。ストレンジが語るミュージシャン名も曲名もよくわからないのです。頭の中で再生できない音楽ほどつまらないものはない。当たり前だけど知らない曲は味わえないのです。そういう理由で早い段階からお手上げでした。年代がぴたりとはまる人たちにはたまらないと思います。 だからといって、面白くない本というわけではない。お気に入りの音楽、馴染みのバー、信頼できる相棒、愛する家族、貫き通したい信念。犯罪が満ち溢れた街とギャングの抗争に立ち向かう主人公。かっこいいのです。設定とかセリフとか。退廃した街で地に足がついている男の姿をみるのです。ハードボイルドな男も愛するもののために闘っている。その点では、悪人だけれど、銃の密売屋ユリシーズ・フォーマンがたまりません。見た目はダメな愛人を深く愛しているの。彼女には素晴らしいテクニックはあるみたいですけれど。

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  荒木 一人
 
評価:★★★★☆
 探偵「デレク・ストレンジ」シリーズ第三弾。一気に読めるミステリ。文句無く、面白い!! 日本ではあまり見かけない、黒人探偵が主人公。各登場人物の何気ない会話の妙が読み応えありの一冊。ハードボイルド度も適度に軽く良い。
 ワシントンDC 元警官であり、黒人の私立探偵のデレク・ストレンジは、個人的な関わりから死刑判決が濃厚な元ギャングのボス、グランヴィル・オリヴァーの命を救う情報を集めていた。見つけだした重要証人。ところが、その女はストリート・ギャングにも追われていた。血で血を洗う抗争。追いつめられるデレクと仲間達。
 人種差別、貧困、暴力、銃にドラッグ。病み、膿んでいる社会。異文化の異世界なので実感はわかない世界のはずなのに、人間の根本は変わらないのか。一人で正義を守れるか、社会を良く出来るのか。結果はどうであれ、立ち向かう事に大きな意義がある。

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