第39回

 12月号はその一年の終わりの号ということもあって(あくまで月号上、発売は10/25)、新人アイドルのチェックリポート企画「'86新人戦線先回り情報局」では、「第二回投稿写真が選ぶ新人アイドルグランプリ 有力新人ノミネート」の発表をしている。'86年デビュー('85年10月20日から'86年10月19日)した新人アイドルから「新人らしいさわやかさ」を基準に編集部(外部スタッフ含む)が30組を選出したものだが、当時のアイドルシーンを反映していてなかなか興味深いので、名前だけ挙げてみる。

 山口かおり、吉沢秋絵、川村愛、山本理沙、新田恵利、真璃子、後藤恭子、杉浦幸、国生さゆり、志賀真理子、西村知美、水谷麻里、山瀬まみ、澤田玉恵、小原靖子、ポピンズ、葉山レイコ、絋川淳、島田奈美、福永恵規、浅倉亜季、城之内早苗、清水香織、高井麻巳子、佐藤恵美、渡辺美奈代、勇直子、江戸真樹、藤井一子、渡辺美奈代。

 3割弱の30組中8組(人)をおニャン子クラブ出身者が占め、'86年はおニャン子の年だったことが如実に表れているが、一方で"桃組三人娘"(杉浦幸、西村知美、島田奈美)がデビューし、水谷、山瀬といった大手プロの独自路線も健在で"おニャン子後"の展開を暗示している。後にAVに出演して、逆転ブレイクする葉山レイコが名を連ねているのも、同じ年に秋元ともみや早川愛美がデビューし、美少女AVというジャンルが確立したこともあって象徴的だ。

 1Cの担当ページでは思わぬ事件が勃発した。11月号に採用した作品の一つが盗作だったのだ。プレゼント応募のアンケートに「お便り宅急便ペン」に載った作品で読んだことがあるものがあるという感想がいくつか寄せられ、その後、ある読者から、怒りの投書と同じ作品が載っているページコピーが送られてきたので判明したのだった。写真投稿のページでは、二重投稿(同じ写真を類似誌に投稿すること)が問題になっていたが、交通費や感材費(場合によっては入場料)、そして時間を使って撮ったものが(どこかで採用されれば)の一心でその作品を撮った投稿者本人がやっていることなので、必ず採用されるという保証がない以上、仕方がないともいえる。実際、「投稿写真」でも二重投稿は禁止しているものの、あまり厳密にやってしまっては、スクープ的な写真をかえって逃がすことにもなりかねないので、建前に近いものがあった。むしろ、悩みの種は原宿あたりで売られ始めたアイドル生写真を自分が撮ったものとして投稿してくる場合で、これに対しては発覚し次第、掲載料カットの処置をしていた。

 盗作に対処するには、似たようなページのある雑誌をとことんチェック入れるしかない。ところが「BOMB」の「パンツの穴」のヒット以降、中高生向けのこの手の雑誌には必ずといっていいほど同様の企画ページがあったので、チェックしようにも多すぎてやりようがない。まして、2,3年前の作品を送ってこられたら、お手上げだ。そして、選者の嗜好がよっぽど偏っていない限り、ある雑誌で採用された作品はほかの雑誌でも採用される可能性が高い。そこまで読んでの行動かどうかは知らないが、お金を払って買ってくれる読者がそれに気づいたら怒るのは当たり前。写真の二重投稿とは違い、かなり確信的かつ悪質だ。オレは、とりあえずそのコーナー内の編集部コラムに盗作の報告があったことと掲載料カットの旨、怒りを込めて読者に伝えた。

(これで収まってくれれば、いいけど...)

 対処法がないため、投稿者の良心を信じるしかないのだった。