
作家の読書道 第144回:酒井順子さん
高校生の頃からエッセイストとして活躍、女性の生き方から鉄道の旅についてまで、さまざまな切り口とユーモアのある文章で読者を楽しませてくれる酒井順子さん。最近では歌手生活40周年を迎えたあの人気アーティストが女性の生き方に影響を与えた『ユーミンの罪』が話題に。そんな酒井さんが好んで読む本とその読み方とは?
その4「題材の選び方」 (4/5)
- 『負け犬の遠吠え (講談社文庫)』
- 酒井 順子
- 講談社
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- 『枕草子REMIX (新潮文庫)』
- 酒井 順子
- 新潮社
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- 『徒然草REMIX』
- 酒井 順子
- 新潮社
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- 『桃尻語訳 枕草子〈上〉 (河出文庫)』
- 橋本 治
- 河出書房新社
- 832円(税込)
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――ではご自身で書くことの題材はどのように選んでいるのですか。鉄道本や制服本もありますが、さまざまな切り口で書かれていますよね。
酒井:学生時代、会社員時代は身の回り半径3メートルくらいのことを書いていたんですが、さすがにその後はいろいろ吸収していかないといけなくなりましたね。
――大ベストセラーとなった『負け犬の遠吠え』の場合は。
酒井:あの時は連載を始めることになって何を書くか話していたら、担当編集者も同い年で独身の方だったんです。それで、そのへんのことを書きましょうか、という話になっていきました。我々はこういう風に楽しくしているけれど、周りから見たら負け犬の遠吠えにすぎないよね、という話から始まったんです。
――その後、「負け犬」という言葉が一人歩きしていった感もあります。
酒井:この本は「負けるが勝ち、ということを言っているのだ」と書かれることが多かったですね。私は全然そんな風には思っていなくて、本当に負け感を抱き続けた人生を歩んできました。この負け感をどうしてわかってくれないんだろう、と。
――女性の生き方についての本はよく読みますか。
酒井:うーん。小倉千加子さんや上野千鶴子さんは好きですよ。
――その後『枕草子REMIX』や『徒然草REMIX』といった著作もありますが、古典は昔から好きだったわけではないですよね。
酒井:30歳をすぎて読み始めました。『枕草子』は橋本治さんの桃尻語訳を読んだことはあったのですが、エッセイストでありながら原文を読んだことがないのはまずいんじゃないかと思って、それで辞書を引き引き原文で読んでみたら、ものすごく面白いことにびっくり。そこからいわゆる平安女流文学を読むようになりました。
――日記はつけていますか。
酒井:はい。1日の始まりに、前日の日記とお小遣い帳を書くのが習慣です。日記といっても3行くらい、あったことだけを記録しています。備忘録みたいなものです。
――1日の過ごし方は決まっているのですか。
酒井:ばらばらです。家にいる場合は11時くらいから夕飯の時間まで仕事をしています。もちろんその間にお昼も食べるしおやつも食べるし宅急便を出しに行ったりもします。外に出る日はずっと出っ放しだったりしますし......本当にばらばら。週に何回かはまるまる一日家にいられる日を作りたいなと思っています。
――本を読むのはどういう時間が多いですか。
酒井:昼間は仕事をしているので、夜が多いですね。後は乗り物に乗っている時。地下鉄に乗っている時とか、本を読んでいるうちに寝るのが至福。