1月11日(水)書評家4人の2011年解説文庫リスト

〔大森望〕
1月『さよならドビュッシー』中山七里/宝島社文庫
  『そこへ届くのは僕たちの声』小路幸也/新潮文庫
2月『不思議の扉 ありえない恋』角川文庫
4月『アジャストメント ディック短篇傑作選』フィリップ・K・ディック/
大森望編/ハヤカワ文庫SF
5月『NOVA4 書き下ろし日本SFコレクション』大森望責任編集/河出文庫
6月『夏のくじら』大崎梢/文春文庫
7月『チヨ子』宮部みゆき/光文社文庫
  『スナーク狩り』宮部みゆき/光文社文庫プレミアム
  『長い長い殺人』宮部みゆき/光文社文庫プレミアム
  『鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで』宮部みゆき/光文社文庫プレミアム
  『クロスファイア』宮部みゆき/光文社文庫プレミアム
  『神獣聖戦 Perfect Edition』(上下)山田正紀/徳間文庫
  『悪霊の棲む部屋』塔山郁/宝島社文庫
  『結晶銀河 年刊日本SF傑作選』大森望・日下三蔵編/創元SF文庫
8月『NOVA5 書き下ろし日本SFコレクション』大森望責任編集/河出文庫
  『不思議の扉 午後の教室』角川文庫
9月『傍聞き』長岡弘樹/双葉文庫
10月『覇者と覇者 歓喜、慙愧、紙吹雪』打海文三/角川文庫
11月『NOVA6 書き下ろし日本SFコレクション』大森望責任編集/河出文庫
  『呪われた町』(上下)スティーヴン・キング/集英社文庫
12月『都市と都市』チャイナ・ミエヴィル/ハヤカワ文庫SF

「ひとこと」
 全部ひっくるめると21本。編纂または責任編集を担当した本が7冊(共編1
冊含む)あるので、純粋な解説だけに限ると14本。
 光文社文庫で宮部さんの文庫オリジナル短編集『チヨ子』を出すのに合わせ
て、既刊4冊をリニューアル再刊することになり、その5冊の解説をまとめて
受注したのが2011年のいちばん大きな解説仕事。せっかくの機会なので、それ
ぞれの作品について、宮部さんにまとめて5時間ほどインタビューし、それぞ
れの解説に著者の発言を引用してあります。5冊合計で100枚近く書いたかも。


〔杉江松恋〕
2月『溝鼠』新堂冬樹/幻冬舎文庫
『好かれようとしない』朝倉かすみ/講談社文庫
3月『寒椿ゆれる』近藤史恵/光文社時代小説文庫
4月『サハラ』笹本稜平/徳間文庫
『嘆きのテディベア事件』ジョン・J・ラム/創元推理文庫
5月『恋するおもちゃ』サタミシュウ/角川文庫
6月『おれたちの街』逢坂剛/集英社文庫
8月『ブラック・ローズ』新堂冬樹/幻冬舎文庫
『モンスターズ』山口雅也/講談社文庫
『殺人鬼 覚醒篇』綾辻行人/角川文庫
10月『赤い糸』吉来駿作/幻冬舎文庫
『明日の話はしない』永嶋恵美/幻冬舎文庫
11月『刹那の街角』香納諒一/徳間文庫
12月『名もなき毒』宮部みゆき/文春文庫
『モップの魔女は呪文を知ってる』近藤史恵/実業之日本社文庫
『毒蟲VS.溝鼠』新堂冬樹/幻冬舎文庫
『破壊者』ミネット・ウォルターズ/創元推理文庫

「ひとこと」
 前年が14本だったと思いますが、3本増の17本になりました。『おれたちの街』では作中に登場する飲食店のリストを作るなど、相変わらず解説で遊ばせてもらっています。いちばん編集者に迷惑をかけたのは『破壊者』の解説で、ゲラ戻しを文字通り真っ赤にして返してしまいました。


〔池上冬樹〕
1月『矜持』ディック・フランシス&フェリックス・フランシス/早川書房
『碧(あお)の十字架』森村誠一/中公文庫
2月『群青に沈め』熊谷達也/角川文庫
 『ネプチューンの迷宮』佐々木譲/ポプラ社文庫 ※扶桑社文庫から移籍
3月『シブミ』(上下)トレヴェニアン/ハヤカワ文庫 ※新装版。旧版の解説に加筆。
4月『月のうた』穂高明/ポプラ文庫
『悪しき星座』森村誠一/集英社文庫
『悪童 エリカ&パトリック事件簿』カミラ・レックバリ/集英社文庫
『刑事失格』太田忠司/創元推理文庫
7月『断絶』堂場瞬一/中公文庫
8月『謝罪代行社』(上下)ゾラン・ドヴェンカー/ハヤカワ文庫
10月『青春の条件』(上下)森村誠一/ハルキ文庫
『パンチョ・ビリャの罠』クレイグ・マクドナルド/集英社文庫
11月『スリーピング・ドール』(上下)ジェフリー・ディーヴァー/文春文庫
『身の上話』佐藤正午/光文社文庫
『新装版 三年坂』伊集院静/講談社文庫
『ヴェニスを見て死ね』木村二郎/創元推理文庫
12月・『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(上下)スティーグ・ラーセン
    /ハヤカワ文庫 ※単行本の解説を若干訂正
『蛇衆』矢野隆/集英社文庫
『星ふる村落(むら)からこんばんわ』/佐竹幸子/書肆犀 ※山形の自費出版

「ひとこと」
 解説を担当したのは20冊だが、そのうちの3冊は旧版の採用だし、地元山形の自費出版の跋文も含まれているので(でも『星ふる村落からこんばんわ』は味のあるエッセイ集で僕が望んで書いたもの。野菜の行商人の人生と生活が素朴なユーモアにくるまれていて面白い。義理の仕事ではありません。誤解なきように)、実際は16冊となるだろうか。 そのほか帯の推薦文を書いた申京淑『母をお願い』(集英社文庫、9月)と月村了衛『機龍警察 自爆条項』(早川書房、9月)もお薦めです。


〔北上次郎〕
2月『煉獄の鬼王 新・将門伝説』三雲岳斗/双葉文庫
3月『船に乗れ3 合奏協奏曲』藤谷治/ポプラ文庫
7月『楊令伝 2 辺烽の章』北方謙三/集英社文庫
  『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』坪内祐三/新潮文庫
8月『タイニー・タイニー・ハッピー』飛鳥井千砂/角川文庫
9月『ワルツ』(上中下)花村萬月/角川文庫
10月『瞳の中の大河』沢村凛/角川文庫
11月『本日、サービスデー』朱川湊人/光文社文庫
  『みのたけの春』志水辰夫/集英社文庫
  『ミレニアム2 火と戯れる女』(上下)スティーグ・ラーソン/ヘレンハレム美穂・山田美明訳(ハヤカワ文庫)☆単行本の解説に加筆
12月『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ/田口俊樹訳(ハヤカワ文庫)

・ひとこと
「2011年は11点であった(実質は10点)。2008年9本、2009年16本、2010年17本ときたので、どんどん増えていくのかと思ったら、3年前の本数に戻ってしまったことになる。これで1978年の生島治郎『殺しの前に口笛を』から、デイヴィッド・ベニオフ『卵をめぐる祖父の戦争』までで実質290本。あと10本でちょうど300本になる。2012年中に達成するかどうか。300本目が何になるのか楽しみである。もっともこれまでに書いた解説が本当に290本なのか、実ははっきりしない。なんだかリストから欠けているものがあるような気がする。古本屋の文庫棚を見ているときに、オレが書いてる! と発見することがまだあるのだ。ということは、300本はすでに達成していたりして。そんなことはないか」