1月14日(火) 書評家4人の2013年解説文庫リスト

〔大森望〕

1月『NOVA9』大森望編(河出文庫)※
  『秘剣こいわらい』松宮宏(講談社文庫)
2月『最後のウィネベーゴ』コニー・ウィリス/大森望訳(河出文庫)※
  『もいちどあなたにあいたいな』新井素子(新潮文庫)
3月『童石をめぐる奇妙な物語』深津十一(宝島社文庫)
  『大絵画展』望月諒子(光文社文庫)
  『60年代日本SFベスト集成』筒井康隆編(ちくま文庫)
  『てのひらの宇宙 星雲賞短編SF傑作選』大森望編(創元SF文庫)※
4月『魔法使いの弟子たち』井上夢人(講談社文庫)
6月『極光星群 年刊日本SF傑作選』大森望・日下三蔵編(創元SF文庫)※
7月『NOVA10』大森望編(河出文庫)※
  『オール・クリア2』コニー・ウィリス/大森望訳(新☆ハヤカワ・SF・シ
リーズ)※
8月『婚活島戦記』柊サナカ(宝島社文庫)
  『パラダイス アベニュー』清原なつの(小学館文庫)
  『もしもし、還る。』白河三兎(集英社文庫)
  『皆勤の徒』酉島伝法(創元日本SF叢書)
  『航路』コニー・ウィリス(ハヤカワ文庫SF)※
9月『ダークゾーン』貴志祐介(祥伝社文庫)
  『解体屋外伝』いとうせいこう(河出書房新社〈いとうせいこうレトロスペク
ティヴ〉)
  『竜が最後に帰る場所』恒川光太郎(講談社文庫 )
  『刑事の子』宮部みゆき(光文社文庫プレミアム)
  『ウール』ヒュー・ハウイー/雨海弘美訳(角川文庫)
  『グランド・ミステリー』奥泉光(角川文庫)*2001年刊の上下巻を合本にした
新装版
10月『果てしなく流れる砂の歌』大森葉音(文藝春秋)
11月『謎解きはディナーのあとで2』東川篤哉(小学館文庫)
  『謎の放課後 学校のミステリー』大森望編(角川文庫)※
12月『変数人間』フィリップ・K・ディック/大森望編(ハヤカワ文庫SF)※

「ひとこと」
 ぜんぶひっくるめて27冊。このうち、自分の編訳書(末尾に※印をつけたもの)が9冊、四六判の巻末解説が3冊あるので、純粋な文庫解説は15冊。ほぼ平年並みですが、7月8月に締切が集中したので、猛暑の夏はなんだか解説ばかり書いていた気が。いちばんたいへんだったのは(文庫じゃないけど)酉島伝法『皆勤の徒』。著者からもらった資料が膨大かつ難解すぎて咀嚼するのに苦労したという、たいへん珍しいケース。しかしこれはSF史に残る傑作なので、未読の方はぜひチャレンジを。



〔杉江松恋〕

1月 『今宵バーで謎解きを』鯨統一郎(光文社文庫)
   『あの夏、エデンロードで』グラント・ジャーキンス(文春文庫)
   『人類資金4』福井晴敏(講談社文庫)
6月 『モルフェウスの領域』海堂尊(角川文庫)
   『吉原十二月』松井今朝子(幻冬舎時代文庫)
7月 『長い廊下がある家』有栖川有栖(光文社文庫)
9月 『お台場アイランドベイビー』伊与原新(角川文庫)
   『刑事マルティン・ベック 笑う警官』マイ・シューヴァル&ペール・ヴァー
       ルー(角川文庫)
   『ステイクロース』ハーラン・コーベン(ヴィレッジブックス)
10月 『狂う』西澤保彦(幻冬舎文庫)
    『三秒間の死角』アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム(角川
     文庫)
12月 『リログラシスタ』詠坂雄二(光文社文庫)

「ひとこと」
今年はぜんぜん文庫解説の仕事をしてないからなー、と思いながらリストを作ってみたら、なんとびっくり12本も書いていました。昨年までの17本からはだいぶ減りましたが、月1本の計算です。おお、意外と仕事しているなあ。
しかしペース配分が異常ですね。9月と10月に3本ずつ。依頼あっての話から仕方ないのだけど、この2月はどんな風に仕事をしていたのかまるで覚えていません! 数は少なくなりましたが、海外作品では自分にとっての大事な作品である『笑う警官』や、年間ベスト認定の『三秒間の死角』などを手がけましたし、日本の作品ではそれぞれ作家論に踏み込んだ文章を書けましたので、密度は高い仕事ができたと自負しています。



〔池上冬樹〕

1月『豊国神宝』中路啓太/新潮文庫
  『植物図鑑』有川浩/幻冬舎文庫
 『アウトロー』リー・チャイルド(訳・小林宏明)/講談社文庫
3月『美ら海、血の海』馳星周/集英社文庫
4月『稲穂の海』熊谷達也/文春文庫
  『虚けの舞』伊東潤/講談社文庫
  『伏流捜査』安東能明/集英社文庫
 『踊る骸 エリカ&パトリック事件簿5』カミラ・レックバリ
            (訳・富山クラーソン陽子)/集英社文庫
5月『新徴組』佐藤賢一/新潮文庫
 『シンセミア』阿部和重/講談社文庫
  『旅のおわりは』吉村龍一/集英社文庫
7月『異聞太平洋戦記』柴田哲孝/講談社文庫
  『奪還』麻生幾/講談社文庫
  『隠れ菊』連城三紀彦/集英社文庫
9月『カルニヴィア1 禁忌』ジョナサン・ホルト(訳・奥村章子)/ポケミス
 『抱影』北方謙三/講談社文庫
  『史記 武帝紀(四)』北方謙三/ハルキ文庫
  『ウエストサイドソウル西方之魂』花村萬月/講談社文庫
11月『ねじれた文字、ねじれた路』トム・フランクリン(訳・伏見威蕃)/ハヤカワ
文庫
 『悪道 西国謀反』森村誠一/講談社文庫
  『BORDER 善と悪の境界』日本推理作家協会編/講談社文庫
 『ダンスホール』佐藤正午/光文社文庫

「ひとこと」
 今年もいい小説の解説を担当することができた。なかでも『シンセミア』『隠れ菊』『抱影』は忘れがたい。とくに『隠れ菊』の場合、本が出て三カ月後の十月に連城三紀彦さんが亡くなられた。闘病中であることも知らなかった。知っていたら逆に作家と作品への距離がつかめなくて書きづらかったかもしれない。偉大な作家の解説をもっと担当したかったと思う。



〔北上次郎〕

3月『爛れた闇』飴村行(角川文庫)
4月『ストロベリー・ブルー』香坂直(角川文庫)
  『プールの底に眠る』白河三兎(講談社文庫)
  『暗殺者の正義』マーク・グリーニー(伏見威蕃訳/ハヤカワ文庫)
5月『国道沿いのファミレス』畑野智美(集英社文庫)
  『嫌な女』桂望実(光文社文庫)
6月『いろあわせ』梶よう子(ハルキ文庫)
7月『火群のごとく』あさのあつこ(文春文庫)
8月『さよならベイビー』里見蘭(新潮文庫)
9月『競馬漂流記』高橋源一郎(集英社文庫)
  『鳴くかウグイス』不知火京介(光文社文庫)
  『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』菅野雪虫(講談社文庫)
10月『図南の翼』小野不由美(新潮文庫)
12月『東京ロンダリング』原田ひ香(集英社文庫)

「ひとこと」
昨年の当欄で、2013年から文庫解説の本数はこれまでの半数程度になるかも、と書いたが、終わってみればいつもと同様に14本。おかげで、わが解説文庫が300本に到達した。それが『図南の翼』である。その解説にも書いたのだが、まさか300本目にこういう書が飛び込んでくるとは思ってもいなかった。光栄である。