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6月4日(木)

『1Q84』がなぜここまで「いきなり」売れたのか?
 そのことをいろんな書店さんで話した結論をここに書いておこうと思う。

1、主にテレビメディアの露出の多さ。特にNHKが朝からずーっと「本日発売です」と報道していた。

2、では、なぜそれほどまでにテレビは取り上げたのか? まずイスラエルの文学賞「エルサレム賞」受賞式の"画"があったからだ。テレビは"画"がないと報道できない。それと時を経て報道する側に村上春樹に育てられた人たち(ファン)が、それなりの実権を握るポストについている。

3、エルサレム賞受賞やノーベル文学賞候補として騒がれ、村上春樹のブランド力の強化。

4、品薄感や情報の抑制はそれほど関係なさそう。

5、ここ数ヶ月売れる"小説"がなかった。

 意外と「5」が大きいのではないか、との意見が多数であった。
 私も実はそう感じており、なぜなら本日『1Q84』を買いに来たおばちゃんが、ないことを知らされるとじゃあこれで良いわと『告白』湊かなえ(双葉社)を買っていったのだ。

 そのときの私の衝撃は非常に大きかった。なぜなら常日頃「本(文芸書)は、おにぎりじゃない。おかかが売り切れだから鮭で済ますか、とはならないからだ」と考えていたからだ。それがある種の、ベストセラーを作るお客さんにとっては、おにぎりと一緒で替えが効く商品であったのだ。

 そういえば浦和のK書店Sさんは、「『1Q84』の品切れで一番得したのは、『運命の人』山崎豊子(文芸春秋)だと思う。『1Q84』を買いにお店へ来た人がないとわかって、じゃあと平台を見た時、その隣にはたいてい『運命の人』があって、こちらも同じように読み応えがありそうだからと買っている気がする」と話していた。

 また「予想以上に差がついた」と言われる2巻の今後の売行きも気になるところだが、まだしばらく店頭は『1Q84』で盛り上がり、自店に何部入荷するで大騒ぎになるだろう。

 しかしどんなに騒いでも我が社の売上にはちっとも関係ないのであった。

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