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8月26日(水)

  • ダブル・ジョーカー
  • 『ダブル・ジョーカー』
    柳 広司
    角川書店(角川グループパブリッシング)
    1,200円(税込)
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「ぼく幼稚園やめる」
 朝、昨日から始まった幼稚園に息子が行くのを拒む。
「お家でママとネネと遊んでいたほうがいい」
 夏休みですっかり里心がついてしまったのであろう。

 4月の入園以来、バスが来る20分前には家を出るような息子だっただけに驚いてしまったが、しかし登園拒否といえば、こちらは娘で散々苦労させられたのである。いくらでも手はあるのだ、と思っていたら、娘が大きな声で息子を叱責しだすではないか。

「幼稚園行かないなら、家、出て行きなさいよ! 北海道にそういう子が集まる町があるから、そこへ行きな」

 それは私が娘を脅していた言葉であり、もうひとつ付け足すなら、私が登校拒否をしていたときに母親から言われていたセリフでもあった。思わず吹き出してしまいそうになったが、娘は私に向かってウィンクをした。

 結局、息子はおねーちゃんの説得によりバスに乗っていったのであるが、親子の関係というのはおそらく基本的に、混乱、溺愛、無視、理解、反転となるだろうと考えている。娘は現在8歳で、いつ私は娘から無視される日が来るのだろう。来年かもしれない、来月かもしれない、明日かもしれない。私は毎日おびえている。

 そのすべてを描いたのが山本幸久の新刊『床屋さんへちょっと』(集英社)である。

 今回は山本幸久が得意とする仕事小説でありつつ、なんと父娘の家族小説にもなっているから、もう涙が止まらないどころの騒ぎでない。最後の章で、しゃくりあげるように泣いてしまったではないか。ハンカチを忘れた日には読んではいけない本だ。

 主人公は、父親から受け継いだ製菓会社を潰してしまった、個性のない男。ただ個性のないのは私も一緒である。特に家に帰れば存在すら希薄で、ほとんど家族と口を聞かず、録画したサッカーを見ているか、本を読んでいるかだ。ときたま怪獣や王子様に変身し、子供の相手をするものの、もしある晩となりの家のおっさんがやってきたとしても、家族はそれを難なく受け入れると思う。

 ところがしかし、そんな個性のない男も心のどこかで、せめて最小の単位である家族の間ぐらい、何かしら影響を残したいと思っている。だからつい人生訓めいたことを呟いてしまうのだが、実はそんな格好わるい言葉に一番笑っているのは自分だったりする。物語のヒーローのように生きることはできないのだ。

 そんなほとんど多くの人が送るだろう人生に、もしそれほど劇的ではないけれど最良の幸せが訪れるとしたらどんなものだろう。その答えがこの『床屋さんへちょっと』に凝縮されていると思う。ハードボイルドが成立しなくなった世の中の、カッコイイ男というのは、意外とこういう男なのかも知れない。

★   ★   ★

 営業に出たが、あまりの新刊の多さにほとんどの書店さんで声をかけられなかった。

 「我らのウダケン」こと宇田川拓也氏が、「野生時代」連載時から大騒ぎしていた『ダブル・ジョーカー』柳広司(角川書店)もついに発売となる。

★   ★   ★

 泣き虫の私は、夜一人で酒を飲みながら、ダイニングテーブルでまたもや泣いていた。

 テーブルの上には8月23日付けの「北海道新聞」と「SPA!」9月1日号があり、前者には大竹聡さんの著者インタビューが、後者には『スットコランド日記』の書評が掲載されていたのである。

 しかも両方ともものすごく愛のある文章で的確に作品や著者を紹介されており、うれし涙が止まらない。どうお礼を言っていいのかわからないが、岩本茂之様、卯月鮎様、ありがとうございました。「本の雑誌」も、本気の、気持ちのこもった原稿が載る雑誌であり続けようと思います。そして面白い本を作り続けます。

8月25日(火)

 ただいま絲山作品をすべて読み直しているのだが『絲的メイソウ』(講談社)は何度読んでもそのおかしさに吹き出してしまう。絲山さんは、小説だけでなく、エッセイも素晴らしい。

 毒舌、自虐、暴走、すべての文章を575で綴ったり、野菜のエラさを語ったり、いやーこれだけの文章すら絶対力を抜かないその職人技に感服。それなのに「おみやげはいらない」と書かれているのをすっかり忘れ、先日訪問した際、笹塚名物のせんべいを持っていってしまったではないか。顔からファイヤー。

★   ★   ★

 話というのはどのタイミングで切り上げていいのだろうか。

 本日立川を訪問したのだが、25日ということで『あるキング』伊坂幸太郎(徳間書店)や『フリーター、家を買う』有川浩(幻冬舎)など新刊が台車に山盛り。

 それを気にしつつ書店員さんに声をかけたのであるが、話だしたらつい盛り上がってしまい、どこで切り上げていいのかわからなくなってしまった。私と話すこの時間、もしかしたら書店員さんは残業になるのではなかろうか、新刊を出すタイミングが10分遅れただけで、売上が1冊減るかもしれない。そういえば、昨日もTさんと盛り上がってしまい、お店を出たときには1時間が過ぎていた。親密になりたい反面、お邪魔にならないタイミングを見極めなきゃいけないわけで、その辺の判断は非常に難しい。おまけに書店員さんはレジ担当の時間が割当られていたりして、本日はそれで失敗してしまった。ごめんなさい。

8月24日(月)

  • ROCK! ジャケ弁スタイル
  • 『ROCK! ジャケ弁スタイル』
    オバッチ,BeatSound編集部
    ステレオサウンド
    1,572円(税込)
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 朝、5時に起きて、ランニングした後、プレミアリーグを鑑賞。
 赤いユニフォームのチームのことは思い出さないようにする。

★   ★   ★

 通勤読書は某氏より、手書きの便箋5枚で薦められた『青嵐の譜』天野純希(集英社)。

 北上次郎氏が「読み始めた途端、これは傑作である、と確信する小説が時にある。こういう小説は年に1作しかない。2009年はこれだ」と激賞した『弩』下川博(小学館)に負けず劣らずの面白時代小説、だそうだ。元寇に振り回される若者達を描いたものらしいが、たしかに冒頭から引きこまれる。現在100ページ。

★   ★   ★

 松戸の良文堂Tさんを訪問し、「見てよ、これ!」と紹介されたのは『ROCK! ジャケ弁スタイル』オバッチ(テレオサウンド)。なんとアルバムジャケットを弁当にしてしまう衝撃のレシピ集で、その完成度に度肝を抜かれる。いやこのアイデア、素晴らしすぎる。もし「本の雑誌」がカラーだったら即本のジャケ弁企画を依頼するのであるが、ああ、残念だ。

8月21日(金)

 朝、いきなり浜本に「お前痩せたな」とビックリされる。
 そういって私の腰つき舐め回すように見つめるのであるが、これはセクハラにあたらないのであろうか。今度、キムラ弁護士に相談してみよう。

 それはさておき、私はほんとうに痩せた。この1ヶ月半で5キロ減り、お腹のまわりにまるで浮き輪のように付いていたお肉は、どこかへ消えてしまった。おかげでベルトの穴はひとつ短くなり、10代に履いていたジーンズも履けるようになった。

 元々食に対して意識が希薄な私にとってダイエットは簡単なことだ。食べなければいいのであるし、ドMの私にとって空腹は快感でもある。

 しかし問題は私はダイエットをしたかったわけではないのである。健康診断で黄色信号が出た「尿酸値」を下げたかっただけなのだ。果たして下がっているのか。再検査は来月。

★   ★   ★

 紀伊國屋書店新宿本店のエッセイ棚の担当のIさんは、『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)を読んで、すっかり宮田珠己氏の文体にやられてしまったようで、店頭を訪問すると手書きPOPが添えられ『スットコランド日記』が、多面面陳で展開されてい。た

 おおうれしや!と思って二人で宮田さんの魅力について語らっていると、なんとその前でなんか面白そうな本はないか?と棚を眺めていた男性が『スットコランド日記』を手に取り、レジに持っていったではないか。声高らかに万歳三唱の上、池林房に連れて行き接待しようと思ったがあまりに怪しいので辞めた。感涙。

 その足で、ジュンク堂書店新宿店を訪問すると、こちらでは『スットコランド日記』や「本の雑誌」で宮田さんが取り上げた本を集めた「タマキングの偏愛に満ちた読書生活」というフェアを開催している。鼻毛オヤジの看板まで付いており、宮田さんは今後、新宿に足を向けて寝られないであろう。

★   ★   ★

 最近は、週末が憂鬱である。

8月20日(木)

 私はほとんど毎日仕事で外に出ているので、休みの日くらい家にこもって、7人の敵から逃れたいのであるが、家族がそれを許さない。私の夏休みを心待ちにしていた、娘と息子がどこかへ連れて行けと車の鍵を持ってくるは、妻はそんなうるさい子供を早く外に連れ出せと手を振っている。

 というわけで土日を含めて5日間の夏休みのうち、2日は娘のサッカーの練習で誤摩化しつつ、残りは海やショッピングモールへ出かけた。ただ出かけてしまえば脳内は営業モードに切り替わり、子供や妻が喜ぶように振る舞ってしまうのが哀しいサガだ。やれスイカだ、波乗りだ、すれ違い通信だと大騒ぎ。ついでにいつもはまったくしない外食で、しかも私が食えない寿司屋(もちろん回転寿司)に義母も連れて行くという、最上級の接待である。

 それなのに、どうして妻の機嫌が悪いのか。

★    ★    ★

 最後の一日だけは、私のための休日にしようと思ったのだが、我が愛する浦和レッズは、柏レイソルに1対4の大敗を期す。夏で走れない、という我が娘のチーム以下の言い訳がまかり通るプロサッカーというのがこの世にあるのか知らないが、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、浦和サポーターが陣取るゴール裏は、罵声を浴びせる兄ちゃん、大声で怒鳴ろうと思ったら言葉がつかえてしまったおっさん、ブーイングする者、拍手する少数、腕組みして沈黙する多数、かなり多くのタメ息が充満したのであった。

 私は選手が挨拶した後は階段を駆け下りるようにして便所へ向かった。

 サポーターは大変である。その日の試合のために前日から早起きし、当日も試合開始の何時間も前から炎天下に並ばなければならない。試合が始まれば「好きにならずにいられない」を歌い、その後90分間飛び跳ねたり、手を叩いたり、大声をあげなくてはならない。何のために? と問われたらすべて愛するチームを勝たせるためなのであるが、その想いが通じることは数少ない。

 しかもその日の勝ち負けだけに拘らず、脳内「サカつく」よろしく、愛するチームの中期・長期的計画も練らなければならない。この方向で良いのか、監督はこれでいいのか? どこかに安くていい選手はいないか? そのために我がチーム以外のサッカーも見れば、世界のサッカーも見る。浦和レッズの社長は2、3年で辞められるが、サポーターは辞められない。

 まあ、しかし。昔はもっと負けたんだ。負けるから勝つのが楽しいのだ。
 優勝も楽しいけれど、苦労して得た1勝もまた嬉しいのだ。

 負けた日はいつもThe Eagles「Hotel California」を聞きながら帰る。泣きながら。

★    ★    ★

 8時半に出社し、机の上の荷物やらFAXやらメモやらメールやらを処理。
 窓際の人間は、3日休んでも大して仕事がたまらない。

 本厚木、海老名、町田、成城と小田急線をさっそくフルスロットルで営業。
 文芸書は、久しぶりに芥川賞受賞作品が売れていて、今年は新潮社の年ですね、と話す。

 できることなら来年は本の雑誌社の年になって欲しいが、明日は『SF本の雑誌』の増刷3刷目が出来上がってくるわけで、もしかしたら新潮社の影に隠れてこっそり本の雑誌の年が始まっているのかもしれない。隠れてなくていいんだが。

8月14日(金)

「エンタメ・ノンフ」のフェアをするというので、特集した「本の雑誌」2007年9月号を直納しに、丸善ラゾーナ川崎店を訪問。

 今夜、フェア入れ替えし明日には店頭に並べられるそうだが、そこに並ぶ本を見たら、もう面白そうな本ばかりで思わず購入しそうになってしまった。高野秀行さんや東えりかさんが「本の雑誌」誌上であげたものの他に、担当のSさんが「これぞエンタメ・ノンフ!」という本を付け加えていたのだ。しかも「君はエンタメ・ノンフを知っているか?」なんて32ページにも渡る小冊子も作ってくれて、いやはやこれはすごい。

 なんてことを棚影で話していたら、多面展開していただいている『スットコランド日記』宮田珠己著を手にしてレジに向かう女性がいるではないか。おお! まさか自分が作った本が買われる瞬間を目にするなんて! これもご先祖様のおかげであろう。

 というわけで墓参りのため、本日より5日間お休みをいただくことにした。

8月13日(木)

 書き忘れていたが、大雨のなか搬入となった『本の雑誌』2009年9月号も無事発売となりました。「読んでいない本」の特集をするのは本の雑誌ぐらいだろうが、企画を思いついた瞬間にもう笑っていたのは、脳内が「本の雑誌」に汚染されている本の雑誌編集部である。

 お盆なのでお先祖様の力を借りて営業へ。

 北与野の書楽を訪問したら担当のSさんから「エッセイの棚をどうしようかと思っているんですよ」と相談されたのには驚いた。なぜなら前日、松戸の良文堂書店のTさんからもまったく同じ相談を受けたからだ。

 両者ともに「なんか各売場がいらないと言った本が集まる場所になっちゃっているんです」と仰るとおり、書店のエッセイ棚は、もはや何だかわからない棚になっているのが現状だ。ただしかし、それは本屋さんの問題というよりは、エッセイというものの問題というか、エッセイってなんぞや?!という根源的な問題に近いのではなかろうか。

 ちなみにエッセイというのを『大辞泉』で調べてみたら「自由な形式で意見・感想などを述べた散文。随筆。随想。」とあり、ならばということで随筆を調べてみると「自己の見聞・体験・感想などを、筆に任せて自由な形式で書いた文章」とある。これをみるとグチャグチャの本がささっていて当然のような気がするが、おそらく書店員さんはじめ、私にも自由でありながら何かエッセイというジャンルへのこだわりがあるのだと思う。

 どなたかに書店の棚進化論というのを書いていただきたいのだが、元々は「日本文学」「海外文学」「随筆」「詩歌」あたりが書店のジャンルとしてあったのだろうか? そこに「ミステリー」や「SF」ができ、いつの間にか「随筆」は「エッセイ」に代わり、気付いたら「サブカルチャー」「タレント」の棚が生まれ、文学が衰退するとともに「エンターテインメント」なんて棚が付け加えられたのか。最近は「コミックエッセイ」なんて棚が幅を利かせているが、そのなかで「エッセイ」はいま絶滅危惧種のジャンルになりかけているのである。

 そうはいっても週刊誌を見れば、相変わらずエッセイの連載は多い。
 たとえば「週刊文春」には、

・夜ふけのなわとび 林真理子
・風まかせ赤マント 椎名誠
・本音を申せば 小林信彦
・ドコバラ! 竹内久美子
・さすらいの女王 中村うさぎ 
・ツチヤの口車 土屋賢二
・いまなんつった? 宮藤官九郎
・そのノブは心の扉 劇団ひとり
・パラレルターンパラドクス 福岡伸一
・仏頂面日記 宮崎哲弥
・先ちゃんの浮いたり沈んだり 先崎学
・考えるヒット 近田春夫
・ホリイのずんずん調査 堀井憲一郎
・生きるコント 大宮エリー

 といったエッセイやコラムがある。「週刊新潮」「週刊朝日」「週刊ポスト」にだって、同じようにたくさんのエッセイやコラムがあるというのに、なぜこれが本屋さんでは絶滅危惧種になってしまうのだろうか。

 SさんやTさんと話していたのは小説家のエッセイは小説家の棚に入れたほうが読者に便利であろうし、その他のものも書き手が芸能人ならタレントの棚にとそれぞれの肩書きによって、棚へ入れてしまうから、結局それらどこにも入らなかったものが「エッセイ」の棚に並べられているのではないかということであった。ジャンルを細分化していった結果の、ブラックホール化なのかもしれない。

 私は日曜日の夕方、ランニング終え、子どもらと風呂に入った後、ひとり寝転がり、夕食までしばし時間のある間には、必ずエッセイを読む。たいていは山口瞳の著作なのであるが、缶チューハイ片手に読むそのひとときは至福の時間であり、おそらくそう言ったちょっとした時間に読むには、小説よりもエッセイが向いているのだ。

 いまこれを書きながら気付いてしまったのであるが、エッセイの棚のブラックホール化とともに、エッセイ自体が売れなくなっているというもうひとつの現象があるが、それはもしかしたら<短時間に読む>ものが、本からケータイに変わっているからかもしれない。

 話はどんどんそれて行ってしまったのだが、では書店の棚の「エッセイ」はどうしたらいいのだろうか。随分前に紀伊國屋書店新宿本店のKさんと話していたときは、いくつかのジャンルにさらに細分化した記憶がある。食とか旅とかだ。あるいはもうその逆に、どうせ検索機を叩いて本を探されるのであろうなら、<日本人が書いたもの>ぐらい大まかなジャンルにして、著者名五十音順に並べるのも手かもしれない。

 エッセイ問題に関しては研究材料にするため各店の棚を見て回ることにしたが、Sさんには「エンタメ・ノンフ」の棚を作りましょうと提案してみた。果たしてどうなるか。

8月12日(水)

  • デジタルコンテンツをめぐる現状報告―出版コンテンツ研究会報告2009
  • 『デジタルコンテンツをめぐる現状報告―出版コンテンツ研究会報告2009』
    出版コンテンツ研究会,岩本 敏,小林 弘人,佐々木 隆一,加茂 竜一,境 真良,柳 与志夫
    ポット出版
    1,980円(税込)
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 通勤読書は『デジタルコンテンツをめぐる現状報告』出版コンテンツ研究会ほか(ポット出版)。出版社、電子取次、印刷会社、経済産業省に、『新世紀メディア論』を書いたインフォバーンの小林さんがそれぞれの立場からデジタルコンテンツについて話しているのだが、最近、WEBのコンテンツに、というよりはWEBを見ている一部の読者に疑問を感じていたので、かなり興味深く読めた。

 営業は新横浜から東横線。
 新横浜のS書店さんでは、『100回泣くこと』中村航(小学館文庫)が多面積みで展開されており、かなり売れているそうだ。文庫はもはや新刊ではなく、各書店ごとの仕掛け販売頼りという印象を受ける。

 綱島のA書店Kさんと女子サッカーについて話そうと思っていたのだが、ちょうど休憩に出たところで、お会いできず残念無念。

 さてこのような猛暑のなか、なぜ営業マンは歩いているかというと、訪問することによって自社の本を思い出してもらい、注文をもらうというのはとても大切な使命で、例えば当社比最速の重版がかかった『SF本の雑誌』も、これだけ新刊がでるなかでは書店員さんの記憶の彼方に埋もれてしまうことも多いのである。

 そこで私が訪問し、「どうですか?」と聞くことによって、「そういえば棚に...あっ! 売り切れていたじゃん。ごめんごめん」と注文をいただくのである。そうやっていただく注文のうれしいことといったら。

8月11日(火)

  • 侍戦隊シンケンジャー写真集 天晴!
  • 『侍戦隊シンケンジャー写真集 天晴!』
    ポストメディア編集部・編,ポストメディア編集部・編
    一迅社
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 新宿のお嬢が「息子さんに」と送ってくれたのは『侍戦隊シンケンジャー写真集 天晴!』。たしかに私の息子は日曜の朝7時半にショドウフォンを手に「シンケンレッド」に変身し、私に思い切り蹴りだのパンチだのくれてくるのであるが、この写真集はすべて変身する前の役者さんしか写ってないではないか。これはいったい誰が買うんだ?! もしやそっちの世界では「シンケンジャー」が人気なのであろうか。あるいは新宿のお嬢は、息子ではなく娘に渡せと言ったのか。娘を腐女子に誘う罠かもしれない。決して息子のキックを交わしつつシンケンピンクに熱視線を送っているわけではないのだが、これは私が大切に保管しよう。

 台風上陸のはずが、地震がやってきた。兄貴は家族旅行で伊豆に行っていたらしいが、それを知ったのは地震の後。

 営業は千葉へ。

 遠くに営業へ行くときはぜひとも担当者さんにお会いしたいのであるが、ノーアポの営業マンにとってそこは運任せ。お休みだったり、休憩に出たところだったりすると最悪なのだが、この日の千葉ではK書店のKさんには会え、S書店のTさんには会えず1勝1敗。またCDショップに配属となったMさんとも会えず落ち込んでいたのだが、津田沼へ移動すると、いつも忙しいH書店のIさんとはしっかりお話ができ息を吹き返す。

 Iさん、最近はビジネス書も担当されているのだが、資格試験の時期がわからず四苦八苦している様子。そりゃこれだけある資格試験の時期を把握するのは大変だろう。ただ出版社のなかにはスリップに試験日を明記している会社もあって、これは素晴らしいアイディアだと思う。

「でも出版社の営業の人に教わりながらどうにかやっていますよ。いろいろ教えてくれるんで、ありがたいです」

 私もこういう風に誉められる営業になりたいが、道は遠い。

 船橋に移動し、先日訪問できなかったA書店Yさんを訪問。文芸の売れ筋を伺うと、『シズコさん』佐野洋子(新潮社)は相当ロングで売っており、他には田辺聖子や佐藤愛子、城山三郎もやっぱり売れると、いったいここはいつの時代の本屋さんなんだろうと思うが、お客さんの年齢層が高いので、世間で騒がれるようなベストセラーよりも、ベテランの作品のほうがずーっとずーっと売れるのだそうだ。

 客層の2極化は、営業で歩いていると猛烈に感じることのひとつで、おそらくこれが近くのショッピングモールにいくと、2、30代が圧倒的に増えるだろう。町の開発された時期、あるいはテナントのコンセプトによって、いる人の層がまったく違うのだ。

 そこで思うのは、出版社というのは結局作り手と同年代に向けて作られるものが圧倒的に多いわけで、こうやって退職後の生活者に向けて、しかもインターネットに頼らず活字に信頼の強いこの世代に向けてきちっと本を作るというのは大切なのではないか。それを考えると著者とのパイプや企画力のある編集者が60歳で定年退職していくのはあまりにもったいない気がする。

 そんなことを考えつつ、夜は浅草橋の酒とつまみ社へ。「本の雑誌」10月号の取材。

8月10日(月)

 大人の定義とはそれぞれあるだろう。
 タバコを吸ったとき、酒を飲んだとき、選挙に行ったとき、結婚したとき。生命保険に入ったときと言ったのは沢木耕太郎だったか。

 私にとって大人の定義とは「ドラゴンクエスト」の新作が出ても買わずに過ごせるようになったときであった。あんなもんをやっていたら朝か晩かも、ここがどこの世界かもわからなくなってしまい、まともな生活が送れなくなってしまう。

 現に高校時代はドラクエが発売となると1週間自主休校してプレイし、フリーター時代はあまりに根を詰めてやったおかげで帯状疱疹という病になってしまったことがあった。しかも今回のドラクエは、持ち運び自由なニンテンドーDSで発売ということで、すなわちどこでもできるということだ。そんなもんを営業マンが持ったらどうなるか? 

 というわけで、今回こそは近寄らずに大人になろうと決意し、発売から約1ヶ月間我慢に我慢を重ねてきたのである。ところがこの1ヶ月訪問する書店書店で話題にあがり、もはや私のドラクエ魂を抑えることができなくなってしまった。ついに週末の土曜日に禁断のドラクエを購入したのであるが......。

私 「ねえ、ママ、おねーちゃんがドラクエやらしてくれない!」
娘 「今いいところなの! 終わったら貸してあげるから」
私 「でもそれってレベル上げだけじゃん」
娘 「うるさいなあ。もう1個買えばいいでしょう!」
私 「もう1個ってニンテンドーDSとドラクエ一緒に買ったらいくらすると思っているんだよ!」
娘 「大人なんだから我慢しなさいよ」
私 「じゃあお前も子供なんだから夏休みの宿題をやれよ」
息子「ぼくもやりたいす!」
私 「お前は黙ってろ!」

 というわけで父、娘、息子がまるで絡まった蛇のようにニンテンドーDSの奪い合いをはじめ、最後にはぶっ壊れそうになってしまったではないか。思い起こせば娘が妻のお腹のなかにいるときに散々ドラクエ7をやっていたのだ。胎教の影響かあっという間に娘も虜になってしまった。

 いちばんの問題は、1本でひとつしかセーブできないということで、こうなったら本もひとりしか読めない装置とかつけたらどうか。関係ないか。結局、レベル上げだけをやらされるという屈辱的な週末を過ごし、出社。

 どしゃ降りの雨のなか自転車で駅まで行ったのはナイスファイトだったが、通勤読書は、椎名編集長絶賛の帯がつく『羆撃ち』久保俊治(小学館)。まず何よりも文章が上手いことに驚く。そして熊を追う描写がたまらない。

 ああ、この本が今これだけ売れるなら、北海道の濃密な自然を描いた今野保の傑作『秘境釣行記』『羆吼ゆる山』『アラシ--奥地に生きた犬と人間の物語』(ともに中公文庫・品切れ)を復刊しても売れるのではなかろうか。

 CDショッブ大賞実行委員会の人と打ち合わせした後、高野秀行さんとお茶。
 イレギュラーでお願いしていた「名前変更物語」があまりに面白い原稿で、そのお礼。こちらは「本の雑誌」10月号から3号集中連載で掲載の予定。乞うご期待。しばし今後の企画なぞ。

 そういえば高野秀行さん、宮田珠己さん、内澤潤子さんのエンタメ・ノンフ三銃士トークセッションはもう満員御礼だそうだ。すごい人気ですね!と高野さんに言うと、40人定員ならひとり13人ですからと冷静に返される。そうはいってもなかなか満員にならないので、すごいと思う。こちらも乞うご期待。

 乞うご期待! といえば、昨日の朝日新聞書評欄で重松清さんが『岸和田の血』を素晴らしい書評で紹介していただいた。ありがとうございます、重松さん。

8月7日(金)

 午前中は編集会議。
 いつの間にか自分が「本の雑誌」脳に犯されていることが恐ろしい。
 受け入れられるより、拒絶されたほうがほっとしたりして。

 午後から営業。9月の新刊が『狂乱西葛西日記20世紀remix SF&ミステリ業界ワルモノ交遊録』大森望著なので、地元東西線へ。

 夜は、10月号の座談会立ち会い。終わってから対談者と新宿・池林房。今週2度目。気付いたらとんでもない時間で、夜の新宿を駆けて終電に乗り込む。くたくたの1週間が終わる。

8月6日(木)

 朝起きたときから何だか調子が悪く、天気同様曇り空な気分。

 こんなときは「元気が一番、元気があれば何でもできる!」の伊野尾書店さんを訪問する。しかし伊野尾さんもお疲れの様子で「携帯やネットにどんどん読書時間が奪われていると思うんですよ」と暗い話題に突入してしまった。

 あまりにくたくたなので、定時に上がって、新宿のタワーレコードへ。

 『勝手にしやがれ』セックス・ピストルズと『OK COMPUTER』レディオヘッドを購入。まるで『人間失格』太宰治と『ノルウェーの森』村上春樹を買った気分。レジのお兄さんがこころなしか笑ったような気がした。

8月5日(水)

 月曜日に回収されていったMacが本日戻ってきた。中一日で修理されて戻ってくるとは驚きだ。しかもビデオカードを交換しただけで直ったそうで、データはすべて元のままだった。

 通勤読書は、「新刊番台」の林カケコさんご推薦の『山下洋輔の文字化け日記』山下洋輔(小学館文庫)。60歳を過ぎているのに世界中でピアノを弾きまくる。昭和軽薄体はどうしてこんな元気なんだろうか。

 夜、地方小出版流通センターのKさんや岩田書院さんと池林房で酒を飲む。数々の名言に腹を抱えて笑う。

8月4日(火)

  • 異国トーキョー漂流記 (集英社文庫)
  • 『異国トーキョー漂流記 (集英社文庫)』
    高野 秀行
    集英社
    616円(税込)
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  • 失われた手仕事の思想 (中公文庫)
  • 『失われた手仕事の思想 (中公文庫)』
    塩野 米松
    中央公論新社
    796円(税込)
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 ずーっとiPodに何かが足りないと思っていたのだが、先日絲山秋子さんの取材に同行し、絲山さんの運転するイタリア車のなかで絲山さんがラジオで流した音楽を集めたCDを聴いていて、思い出したのである。THE POLICEが入ってなかったのだ!

 というわけで押し入れの奥から段ボールを引っ張りだし、ホコリまみれのCDの山のなかからTHE POLICEのすべての曲が収録された4枚組のコンプリート・アルバム「MESSAGE IN A BOX」を探し出す。久しぶりに聴いたTHE POLICEは、無茶苦茶カッコ良かった。

★   ★   ★

 雑誌の休刊の話題になると、つい広告がどうした、雑誌の衰退だとかそういう方向に話が流れてしまいがちだが、例え部数が最盛期に比べて落ちていたとしても、数万部、数千部の雑誌の売上が毎月(毎週)減っていく店頭は大変なのではないか。

 渋谷の書店さんでその辺をことを伺ってみると、やはり『エスクァイア日本版』や『STUDIO VOICE』の休刊はかなりの痛手で、バックナンバーも売れていたから雑誌売場の維持に苦労されているようだった。

 また雑誌や出版社だけでなく、書店さんの袋やカバーなどを制作販売していた会社が7月末に倒産してしまったとか。「そのうち栞が貴重になるかもしれませんよ」とその書店員さんは苦笑いしていたが、「カバーも袋もいらないというお客さんが神様に見える」というほど、利益率の低い書店業のなかで、それらの経費もバカにならないのであった。

 昨日の続きと六本木などを営業し、夜は丸善お茶の水店さんのフェア報告会を兼ねた暑気払いに参加。

 「再々発見にっぽん」なんて大それたタイトルにしたのだが、ようは私が好きな古き良き日本を伝える本や別の角度から日本を見つめる本を集めたものだ。

『山の仕事、山の暮らし』高桑信一(つり人社)
『熊を殺すと雨が降る』遠藤ケイ(ちくま文庫)
『失われた手仕事の思想』塩野米松(中公文庫)
『美しい日本のふるさと 近畿・北陸編』清永安雄(産業編集センター)
『美しい日本のふるさと 北海道・東北編』清永安雄(産業編集センター)
『美しい日本のふるさと 中国・四国編』清永安雄(産業編集センター)
『美しい日本のふるさと 九州・沖縄編』清永安雄(産業編集センター)
『ふるさと日本百景』原田泰治(講談社)
『川物語 ― 写真集日本の川を旅する』佐藤秀明(本の雑誌社)
『少年記』野田知佑(文春文庫)
『朱鷺の遺言』小林照幸(中央公論社)
『コウノトリ、再び』小野泰洋(エクスナレッジ)
『日本の生きもの図鑑』石戸忠(講談社)
『ニッポンありゃまあお祭り紀行』椎名誠(カラット)
『晴れた日は巨大仏を見に』宮田珠己(白水社)
『異国ト−キョ−漂流記』高野秀行(集英社文庫)
『神去なあなあ日常』三浦しをん(徳間書店)
『遠野物語』柳田国男(角川ソフィア文庫)
『おくのほそ道』松尾芭蕉(角川ソフィア文庫)
『家郷の訓』宮本常一(岩波文庫)
『舟と港のある風景』森本孝(農山漁村文化協会)

 これらの本を一ヶ月並べさせていただいたのだが、結果は72冊、87806円の販売で、果たしてこれがフェアとして成功したのかどうかはK店長さんの「へへへ」という怪しい笑いで判断するしかないだろう。

 ちなみに売上上位は、

1『異国ト−キョ−漂流記』高野秀行(集英社文庫)12冊
2『失われた手仕事の思想』塩野米松(中公文庫)8冊
2『家郷の訓』宮本常一(岩波文庫)8冊
4『おくのほそ道』松尾芭蕉(角川ソフィア文庫)6冊
4『日本の生きもの図鑑』石戸忠(講談社)6冊
6『失われた手仕事の思想』塩野米松(中公文庫)5冊
6『ふるさと日本百景』原田泰治(講談社)5冊

で、高野さんがダントツであったが、他の渋い本が売れたのは、お茶の水だからだろうか。すごいな。

8月3日(月)

 丸坊主願掛けした『スットコランド日記』宮田珠己著がついに搬入となる。カバーから帯、そして著者近影まで手を抜くことなく作れた作品なので、本当に売れた欲しい。頼まれていたサイン本を持って、ジュンク堂書店新宿店さんに直納。こちらでは9月に出版記念イベントを行う予定。またエンタメ・ノンフ三銃士のトークセッションができるといいんだが。

 その後、御茶ノ水のM書店さんを訪問すると、「誰だかわからなかったよ」とYさんに坊主頭を指さされる。私が私に見えない理由が実は坊主以外にふたつあって、この数週間で真っ黒に日焼けしたのと、あと体重が1ヶ月前から4キロ落ちたからだ。Yさんからも「痩せたね~」と言われ、その後ダイエット話で盛り上がる。骨盤ダイエットが効くらしい。

 坂を下って神保町に行くと、書泉グランデさんがリニューアルオープンしており、1階は棚がすべて入れ代わっていった。昔の趣ある姿がけっこう好きだったのだが、明るくキレイになっていく書店の傾向としては仕方ないだろう。相変わらず『SF本の雑誌』が売れており、注文をいただく。

 半蔵門線に乗って、表参道の青山ブックセンターへ。担当のTさんを求めて仕入れを覗くと、そこにYさんがいるではないか。てっきり青山一丁目のオフィスにいるのかと思っていたが、現在はこちらに机を置き、各店の状況や外商などを取り仕切っているらしい。

「ぜんぜん棚にさわれなくて淋しいよ」

 書店業界というのは出世すればするほど売場から離れていくわけで、売場の才能が評価されてポジションをあげていくはずなのに、なぜか仕事は全然違う方向に向かうという矛盾した環境なのである。選手業と監督業が違うように、もったいない気がするのだが、しょうがないのだろう。

 しばしそんな話をYさんとしていると担当のTさんがいらっしゃったのでお話。

 渋谷に出た後、恵比寿を訪問し、有隣堂さんで行われている「2009・夏 小説祭り」フェアを覗く。こちらは有隣堂さんのスタッフと出版社社員有志で手書きPOPを書き、オススメの小説を推薦しているのだ。私は最初『デンデラ』佐藤友哉(新潮社)を推薦しようと思ったのだが、その時点ですでに2名の人が推薦していたので、『学問』山田詠美(新潮社)のPOPを書いた売れてくれるといいんだが。

 フェアで思い出したが、コンペで勝ち取った丸善お茶の水店さんのフェアは、本日確認したところ、「追加注文が間に合わない本もあったのよ」というぐらいには好評だったようだ。かなり地味な本を並べたつもりだったから心配だったが、これで明日の打ち上げも堂々参加できるというものだ。

8月2日(日) 炎のサッカー日誌

 朝8時半から夕方5時まで娘のサッカーに付き合う。女子サッカーチーム、2チームを招いての練習試合だったのだ。

 娘は小学3年生だからアンダー10という括りの試合に出るのだが、この半年でそれなりにボール扱いを覚えたとはいえ、相変わらず試合で何をしていいのかわからない様子であった。グラウンドの真ん中でボールに歩み寄っては立ち止まるを繰り返す。幼稚園からサッカーをしている子たちの姿ばかりが目立ち、私は思わず浦和レッズ戦のときのように怒鳴りそうになってしまった。

 試合が始まったら勝つためにゴールを目指す。どうしたこんなシンプルなことがわからないのだろうか。私はアホみたいにシュートを打つ「どこにいてもストライカー」なので、いちだんと優柔不断な娘のスタイルが気に入らない。

 ガンガンいかんかコラッ!

 そう大声をあげそうになったとき、私は自分の中学校時代のことを思い出した。最後の夏の大会でチーム全員で円陣を組み、後にNTT関東の選手となるキャプテンが、いくつもの頭の影に向かって「絶対勝つぞ!」と叫んだのだった。そのとき私は心のなかで「早く負けて、夏休みにして欲しい」と思っていた。

 あの頃私は部活で「勝ちたい」なんて考えたことがなかった。それどころかサッカーが好きという気持ちもなかった。ただただ暇な時間をボールを蹴って過ごしていただけで、私がサッカーに夢中になってボールを本気で蹴り出したのは20歳を過ぎて自分でチームを作ってからだ。だから娘のことはとやかく言えないのであった。

 危ない危ない。サッカーは人を惑わす。サッカーは私を惑わす。しばらく頭を冷やそうと試合会場を離れ、ランニングに向かった。

 すべての試合が終わり、私と娘は自転車に乗って家路へつく。私は浦和レッズの試合があるため、猛烈なスピードで自転車を漕いでいたのだが、足腰が強くなった娘も余裕な姿でそれについてきた。

「パパさ、サッカーで雨でもやるんだね」
 この日は雨が降ったり止んだりで、結局中止にすることもなく、試合が行われたのであった。

「そうだよ雪でもやるんだよ。昔トヨタカップっていう世界一のクラブチームを決める大会があって、それが大雪でさ。ウルグアイって暖かい国ところにあるチームの選手は雪を見たのも初めてビックリしてたんだよ」
「そのチームどうしたの?」
「負けちゃった」

 自転車を漕ぎながらこの日の試合の娘の姿を思い出す。
 ぶかぶかのオレンジ色のユニフォームを靡かせて、味方が攻めてるときには果敢にオーバーラップをし、ピンチとなると必死に戻っていたではないか。ボールが来なかっただけで、彼女は彼女なりに雨にも負けず頑張っていたのだ。

 真っ黒に日焼けしたその姿は、この日の浦和レッズの選手よりもずーっと格好良かった。いや浦和レッズの選手たちも今、娘同様に成長している真っ最中なのだろう。待っているぞ! 浦和レッズ!!

7月31日(金)

 通勤読書は待望の<疫病神>シリーズの最新作『螻蛄』黒川博行(新潮社)。
 建設コンサルタントの二宮と疫病神ことヤクザの桑原が、宗教団体のお家騒動に関わる金の匂いを感じ取り、シノギを求めて、大阪、京都、名古屋、東京を駆けずり廻る。

 しかしシリーズものの評価というのは難しい。安心して読める反面、予想を超えるのは難しく、一作の作品として評価するなら悪徳マル暴担当刑事の堀内が主人公だった 『悪果』(角川書店)の方が上か。

 営業に出かけようと思ったら、突然パソコンがフリーズし、再起動もできない状態になる。あわててアップルのサポートセンターへ連絡すると回収して修理するしかないでしょうとの返事。その際、初期化する可能性があるか大丈夫か? と問われ、思わず電話口で「オーマイーガーッ」と叫んでしまった。

 営業のデータは別のパソコンに入っているから安心なのだが、その他もろもろ大切なものはこのパソコンの中なのだ。しかし了承しないと私のパソコンはずーっと黒い画面のままで、しかもその真っ黒な画面は鏡のように仕事をしている私を映し、4キロ痩せてすっかり二枚目になった自分をナルオレが見つめて仕事にならないではないか。一縷の望みをかけつつ了解の返事をする。

 来週月曜日に箱を持って引き取りに来るというが、何となく電源を入れるとハードディスクが動いている気がして(画面は真っ暗)、もしやと思ってほかのパソコンをつなげてみるとハードディスクがマウントされたではないか。あわててデータを移し替えバックアップに成功。一安心。

 池袋に行って、リブロの矢部さんとお話。
「雑誌がどんどん薄くなっているのが悲しいよ」と呟いていたのが印象に残る。どこも広告が入らず、制作費ダウンで必死の継続刊行なのだろう。

 そんななか売れている雑誌は、もはや完全に付録が主の宝島のブランドムックである。雑誌って何だろう。

7月30日(木)

 38歳になった。

 いつまで待てば浦和レッズや日本代表から声がかかるのだろうか。
 どこかの誰かが「努力をすれば夢は叶う」とか言っていたが、私にとって最大の努力である大嫌いな野菜も食べ、週に4日のランニングも欠かさずに続けているのに、一向に夢が叶わう気配がない。

 次の次のワールドカップは43歳だからさすがに無理であろう。だからこそ来年行われるアフリカ大会に出場し、C・ロナウドやメッシと戦いたいのである。一日でも早く浦和レッズ関係者及び日本代表スタッフは連絡してきて欲しい。

 夜、知人が浅草花やしきを借り切ったので、家族総出で遊びに行く。
 夜の遊園地は怪しげな光を点滅させており、それだけでも充分魅力的な場所なのであるが、娘はあろうことかジェットコースターに乗ろうと言いだし、私は怖いのでメリーゴランドにしようと説得したにも関わらず、無理矢理乗せられ、やっぱり吐きそうになった。その後は記憶にないが、私以外の3人がとても幸せそうにしていたので、幸せだった。

 唯一誕生日プレゼントをくれたのは、大阪の出版社140Bの青木さんであった。プレゼントはたい焼きマニアの間で話題の『たい焼きの魚拓 絶滅寸前「天然物」たい焼き37種』宮嶋康彦(JTB)であった。

 ちなみに青木さんは40歳を過ぎたおっさんである。

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