« 前のページ | 次のページ »

10月26日(月)

瘡瘢旅行
『瘡瘢旅行』
西村 賢太
講談社
1,575円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS
 冷たい雨が降る中、妻は無事退院した。

 日頃、アウェーの試合に行けないとか本が買えんとか妻がいる不自由さを嘆いていたのだが、こうやって8日間妻がいない生活をしてみると、思うようにランニングできなかったり、子どもの世話でプレミアリーグを観られなかったりと謳歌していた自由さに気付かされる。夫婦生活というのは4の字固めなのではなかろうか。ひっくり返されると技をかけた方が痛くなるあの4の字固め。家庭というリングのなかでゴロゴロ転がっているのだ。

 そして、こんなときこそ西村賢太である。最後の無頼派にして破滅型作家の描く同棲私小説『瘡瘢旅行』(講談社)が素晴らしかった。身勝手で嫉妬心の強い僕が、パートで働く女と暮らしているのだが、帯にあるとおり「こういう風にしか生きていけない」暮らしをしている。暴力や喧嘩が絶えないのであるが、もうここまで来ると笑いであろう。各所で吹き出してしまう。

« 前のページ | 次のページ »