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11月5日(木)

「もう来年の夏に出るらしい村上春樹の『1Q84』BOOK3まで我慢するしかないんじゃないですかね?」

 とある書店員さんは、大量に届く新刊とそれがまったく売れていかない現状を見てあきれるように嘆いていた。面白くない本が売れないならまだ気分も楽だろう。今は面白い本がいっぱい出ているのに、平台の本は減っていかない。

 なぜ本が売れないのか。
 しばらく前なら携帯や新古書店のせいにしただろうが、今は違う。ただ単に世の中にお金がないのだ。
 金がないから本など買えない。
 ニュースを見ているとそんな声が聞こえてくる。

 出版業界の難しいところは、基本的に日本国内でしか売れないということと、他の産業のように製作を人件費の安い海外に持っていきずらいというところだろう。

 海外で製作といえば、ベストセラーだった『バンド1本でやせる 巻くだけダイエット』山本千尋(幻冬舎)は、付録のバンドが中国製でその増産が間に合わず、重版ができなかったらしい。その隙をついて『バンテージダイエット』清水ろっかん(フォレスト出版)なんていうのが売れているのは出版ならではのドジョウ商売だが、それはまた別の話。

 経費も削減できず、 本は売れず、みんなで頭を抱えているのが出版業界の現状だろう。

 ただしそんな状況でも売れている作家はいて、村上春樹、東野圭吾、伊坂幸太郎の3人は単行本も文庫も出れば必ずベストセラー。書店員さんが彼らの新刊を血眼になって仕入れ、大量に店頭に積むのはよくわかる。まるで作家業界のユニクロ、マクドナルド、アップルだ。

 お金がない人にものを売る方法が発明されるのと、日本の景気が良くなるのはどっちが先だろうか。景気がよくなったとき本はまた売れるだろうか。

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