5月31日(月)
- 『エデン』
- 近藤 史恵
- 新潮社
- 1,512円(税込)
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- 『サクリファイス (新潮文庫)』
- 近藤 史恵
- 新潮社
- 529円(税込)
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- 『希望の里暮らし』
- 高桑 信一
- つり人社
- 2,160円(税込)
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「あっ、そうですか......、はい......」
なんとなく流れに逆らえずに返事したことが、もしかしたら人生を大きく変えることになるではなかろうかと思う週末が続いている。
今年の4月、娘が所属する女子サッカーチームの監督から「コーチとして手伝ってもらえませんか」と声をかけられたとき、そんなことはとてもできないという戸惑いと、やり出したら週末はすべてつぶれてしまうという恐れと、それでも心のどこかでずっとやってみたいと思っていたことなのではないかという喜びが交錯したのであった。
しばらく悩んでいたのだが、絶対出来ないと思っていたランニングが一年以上続き、もう増えることはあっても落ちることはないだろうと思っていた体重が7キロも落ちたことから、私の心はその体重同様どこか軽くなっていた。なにやら自信らしきものを手に入れていたのだった。もしかして意外と何でもできるんじゃないかと。
監督には「コーチは引き受けますが、浦和レッズの試合のある日は勘弁してください」と話し、私のコーチ生活は始まった。
しかし私が習っていた頃とサッカーの世界は劇的に変化しており、あの頃、というのはもう30年ぐらい前だが、サッカーの練習といえばシュート練習とミニゲームで、練習メニューなんて数えるほどしかなかった。
それが今ではサッカー協会の指導方針のもと、様々な指導書が出版されているのだ。あわててそれらの本を購入し勉強しているのだが、これがもう面白いのなんの。というか私は今、浦和レッズの試合とプレミアリーグのテレビ観戦含めて年間200試合ほどサッカーを見ているのだが、それでもまったくサッカーをわかっていなかったのだと打ちのめされている。
こうなると知識欲は止まらなくなり、次から次へと指導書やそこから派生する生理学の本やストレッチの本などを片手にノートをとるようになり、まさに学生に戻った気分で勉強しているのであった。
その成果が試されたのがこの週末で、チーフコーチが仕事で不在で、なんと10歳以下のチームを私が練習メニューも含めて面倒をみたのである。
あんなにくたくたになった1週間だったのに、金曜日の夜は、メニューをあれこれ考えたり、明日はどうなるだろうかと緊張感で眠れなず、迎えた土曜日。
メモを盗み見ながら練習をしていると、1子どもたちの特徴が今度は目に突き出し、例えば○○ちゃんはもうアウトサイドでドリブルができるんだなとか、△△ちゃんはこの間まで声も出せなかったのに今は他の子に指示まで出しているぞとか、いやはや面白さがどんどん広がって行くのであった。
もちろんそうやって関心している暇はなく、子どもたちはすぐ飽きてしまったり、逆にのめり込みすぎてケンカになったりするもんだから、その辺はこちらがしっかり進めていかなければならないし、メニューに捕われているといったい子どもたちに何を伝えたいのかとかもっと大事なところが抜け落ちたりして、はっきり言ってものすごく楽しいのである。
その晩ひとりで酒を飲みながら、私はコーチ会議のときに、チーフコーチが話していた言葉を思い出していた。
「日の丸につながる最初の一歩を僕たちは面倒見ているんですよ。でも何よりも大切なのはうまくなることじゃなくて、サッカーを楽しく感じる気持ちを育てるってことです」
娘のおかげで、私は人生の宝物を手にしたのかもしれない。
★ ★ ★
『エデン』近藤史恵(新潮社)読了。
『サクリファイス』の続編であり、今作では自転車ロードレース界の最高峰と呼ばれる「ツールドフランス」が舞台となる。前作よりもミステリー色が弱まり、スポーツ小説としての要素が強い。
本屋大賞も落ち着き、ついに本業である営業に没頭できる。
時間ができたらすぐに訪問しようと考えていた大好きな書店さんのひとつ、清澄白河のりんご屋さんを訪問。久しぶりにお会いしたH店長と長話をしつつ棚を見ると、なんとそこに高桑信一の新刊が、既刊『古道巡礼』や『山の仕事、山の暮らし』とともに面陳されているではないか。
『希望の里暮らし』(つり人社)
うーん、私は毎日1000坪を越える書店も含め10件近い本屋さんを廻っているが、いやはや高桑信一の待望の新作が出たなんてまったく知らなかった。それなのにこの30坪の町の本屋さんで手にすることができなんて、まさに本屋さんはサイズじゃないということを物語っている。そして何よりも「あっ杉江くんも好きなの? 俺も好きなんだよねぇ」と話すH店長さん、恐るべしである。
なんとなく流れに逆らえずに返事したことが、もしかしたら人生を大きく変えることになるではなかろうかと思う週末が続いている。
今年の4月、娘が所属する女子サッカーチームの監督から「コーチとして手伝ってもらえませんか」と声をかけられたとき、そんなことはとてもできないという戸惑いと、やり出したら週末はすべてつぶれてしまうという恐れと、それでも心のどこかでずっとやってみたいと思っていたことなのではないかという喜びが交錯したのであった。
しばらく悩んでいたのだが、絶対出来ないと思っていたランニングが一年以上続き、もう増えることはあっても落ちることはないだろうと思っていた体重が7キロも落ちたことから、私の心はその体重同様どこか軽くなっていた。なにやら自信らしきものを手に入れていたのだった。もしかして意外と何でもできるんじゃないかと。
監督には「コーチは引き受けますが、浦和レッズの試合のある日は勘弁してください」と話し、私のコーチ生活は始まった。
しかし私が習っていた頃とサッカーの世界は劇的に変化しており、あの頃、というのはもう30年ぐらい前だが、サッカーの練習といえばシュート練習とミニゲームで、練習メニューなんて数えるほどしかなかった。
それが今ではサッカー協会の指導方針のもと、様々な指導書が出版されているのだ。あわててそれらの本を購入し勉強しているのだが、これがもう面白いのなんの。というか私は今、浦和レッズの試合とプレミアリーグのテレビ観戦含めて年間200試合ほどサッカーを見ているのだが、それでもまったくサッカーをわかっていなかったのだと打ちのめされている。
こうなると知識欲は止まらなくなり、次から次へと指導書やそこから派生する生理学の本やストレッチの本などを片手にノートをとるようになり、まさに学生に戻った気分で勉強しているのであった。
その成果が試されたのがこの週末で、チーフコーチが仕事で不在で、なんと10歳以下のチームを私が練習メニューも含めて面倒をみたのである。
あんなにくたくたになった1週間だったのに、金曜日の夜は、メニューをあれこれ考えたり、明日はどうなるだろうかと緊張感で眠れなず、迎えた土曜日。
メモを盗み見ながら練習をしていると、1子どもたちの特徴が今度は目に突き出し、例えば○○ちゃんはもうアウトサイドでドリブルができるんだなとか、△△ちゃんはこの間まで声も出せなかったのに今は他の子に指示まで出しているぞとか、いやはや面白さがどんどん広がって行くのであった。
もちろんそうやって関心している暇はなく、子どもたちはすぐ飽きてしまったり、逆にのめり込みすぎてケンカになったりするもんだから、その辺はこちらがしっかり進めていかなければならないし、メニューに捕われているといったい子どもたちに何を伝えたいのかとかもっと大事なところが抜け落ちたりして、はっきり言ってものすごく楽しいのである。
その晩ひとりで酒を飲みながら、私はコーチ会議のときに、チーフコーチが話していた言葉を思い出していた。
「日の丸につながる最初の一歩を僕たちは面倒見ているんですよ。でも何よりも大切なのはうまくなることじゃなくて、サッカーを楽しく感じる気持ちを育てるってことです」
娘のおかげで、私は人生の宝物を手にしたのかもしれない。
★ ★ ★
『エデン』近藤史恵(新潮社)読了。
『サクリファイス』の続編であり、今作では自転車ロードレース界の最高峰と呼ばれる「ツールドフランス」が舞台となる。前作よりもミステリー色が弱まり、スポーツ小説としての要素が強い。
本屋大賞も落ち着き、ついに本業である営業に没頭できる。
時間ができたらすぐに訪問しようと考えていた大好きな書店さんのひとつ、清澄白河のりんご屋さんを訪問。久しぶりにお会いしたH店長と長話をしつつ棚を見ると、なんとそこに高桑信一の新刊が、既刊『古道巡礼』や『山の仕事、山の暮らし』とともに面陳されているではないか。
『希望の里暮らし』(つり人社)
うーん、私は毎日1000坪を越える書店も含め10件近い本屋さんを廻っているが、いやはや高桑信一の待望の新作が出たなんてまったく知らなかった。それなのにこの30坪の町の本屋さんで手にすることができなんて、まさに本屋さんはサイズじゃないということを物語っている。そして何よりも「あっ杉江くんも好きなの? 俺も好きなんだよねぇ」と話すH店長さん、恐るべしである。