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1月28日(金)

 行きの電車のなかでは読めるが、腹ペコの帰りの電車のなかでは絶対読めない文庫が出た。

『世界ぐるっと肉食紀行』西川治(新潮文庫)。

 今まで『世界ぐるっと朝食紀行』、『世界ぐるっとほろ酔い紀行』とシリーズが出ていたのだが、今度は「肉」だ。 牛、豚、羊、鳥などなど世界各地の肉を追い、歯切れの良い文章と美味そうな写真で綴られる。たまらん!

★   ★   ★

 とある書店で、文芸担当の方と話していると、隣で別の出版社の若い営業マンが、実用書担当の書店員さんに見本を差し出しながら営業を始めた。

「◯◯の本なんですけど......」
「そのジャンル、うちのお店、売れないのよ」

 その後、書店員さんが語られた売れない理由はたしかにごもっともな内容で、要するにその手の本を必要とする人がこの界隈にいないのだ。それを聞いた営業マンは「ああそうですか......」ととても残念に見本を見せるともなしにペラペラとめくっていた。

 もし押しの強い営業マンなら、「いやこの本は......」なんて改めて売り込むだろうが、無理矢理注文を取ったところで返品されたらおしまいで、しかも書店員さんに悪印象の残すのもよろしくない。出版営業の難しいところなのだが、私は思わず、その会話に割って入りそうになってしまった。

「売れるのはどの辺の本なんですか?」

 売れない本の話をするのは書店員さんも営業マンも苦しいだけで、だったら売れる本の話をしたほうがいいと思うのだ。何も会話が弾むというのではなく、それこそ営業マンにとって数字以上に大切な情報を手に入れるチャンスではないか。

「いやうちのお店は、こっちのほうが売れるのよ」

 具体的にそういう話を引き出せたら、企画会議や報告書で役立つだろうし、出版社なんて突然どんな本を出すかわからないのだから、本当にその手の本が出たときに、いの一番に営業に行ける。

 いや、そんなことよりも営業とはコミニケーションなわけで、こういう会話の蓄積が人間関係を作り、そのお店を知ることになる。そう、一番大切なことはその書店を知ることなんじゃないかと思うのだ。そして知るためには興味を持って訊ねることが一番重要だと考えている。

 私のほうが早く終わったので、その後の展開はわからないが、あの営業マンがまたそのお店を訪問することを祈っている。

 今日はダメでも、今度は大丈夫かもしれないから。それも営業の鉄則だから。

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