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2月8日(火)

 昨日追加注文いただいた『だいたい四国八十八ヶ所』と『世にも奇妙なマラソン大会』を直納しに秋葉原の有隣堂さんへ。自分が作った本2冊を自ら直納する編集者というのも出版業界広しといえどもそうそういないだろう。まあ私の場合は営業兼編集なのだが。

 相変わらずこちらのお店はそこかしこで面白いフェアや本が並べられており、見ていて一向に飽きない。世界に誇るバカ本フェアみたいなことをやっているかと思ったら、最近流行りのちらエロ系の『少女時代』(アスペクト)や『絶対領域』青山裕企(一迅社)がドーンと売れているようであった。ちらエロにも大変興味がある私であるが、一番気になったのは『ソコトラ島』新開正/新開美津子(彩図社)という不思議な植物の写真集だった。

 納品を終え、次なるお店で聞いた話が衝撃的だった。

 そちらのお店は、最近とある取次店の販売システムを導入したのだが、そのシステムの基本方針は常にお店の棚に売り上げベストを並べるというもの。まさにコンビニ的発想なのだが(ってコンビニだってもっと面白いだろう)、なんとそこではそれらのベストに入っていない本を「ランク外商品」と呼び、ランク外商品を発注すると指導されるそうだ。

 まさか私たちの手塩にかけて作っている本たちが「ランク外」と呼ばれているとは。しかも書店員さんたちがそれらの本を注文すると怒られるとは......。そしてそしてすべての注文をそのデータ上にのせたいがために、出版社の営業に注文するのを控えるようにとも言われているようだ。

 いったい何が目的でそのようなシステムが進められているのだろうか。効率化だろうか。返品の削減だろうか。あるいは人件費を削減したい書店経営者にとってはありがたいシステムなのだろうか。例えそうであったとして、このような販売システムを進めると本は売れるようになるのだろうか。

 少なからず私はそういう本屋さんで本を買いたいとは思わない。いや私が買いたいような本はそういう本屋さんには置いてないだろう。

 こういうシステムが進んでいくと、10年後、もしかしたら出版点数は1万点とかになるかもしれない。なにせ「ランク外」の本は店頭に並べてもらえないのだ。ドードーやニホンオオカミやトキのように「ランク外」本は絶滅させられてしまうかもしれない。

 しかしそのとき気づくのだ。出版の多様性について。そして突然、少部数の本は大事だと声高に叫ばれるのかもしれない。だけど、そのときには、それらの本を作れる編集者がいなくなっているかもしれない。いや、ネット書店が「ノアの方舟」となって、「ランク外」の本を生き延びさせているだろう。

 ちなみに思わず大爆笑してしまったのだが、それらのシステムを進める人たちが同じ口で「これからの書店は個性が大事」と言っているようだ。個性ってなんだ? もしかして書店員さんがお気に入りのキャラクターにコスプレでもすることだろうか。

 うーん、わからない。
 売上ベスト、すなわちデータとはすべて過去のことではないか。
 未来はどうやって作るのだろうか。

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