4月14日(木)
- 『やめないよ (新潮新書)』
- 三浦知良
- 新潮社
- 799円(税込)
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- >> エルパカBOOKS
本屋大賞のドタバタで、すっかり報告するのを忘れていたが、先週、私は神様、いや王様に謁見したのであった。そのことを本日は書き記そうと思う。
それは東京でいちばんオシャレと言われている本屋さんを訪問した後の出来事であった。私はこちらもまた東京でいちばんオシャレと言われている片側3車線の国道にかかる横断歩道を渡ろうとしていた。
道の反対側にはこちらもまた東京でいちばんオシャレといわれている大学があり、その大学にはまったく用事はなかったのだが、何となく私は春の暖かさにつられ、いや女子大生につられ、道を渡ることにしたのであった。
信号は変わったばかりで、このオシャレな国道は、車の往来も多く、しばらく歩行者信号が青く点灯することもなかろうかと思った。
気分転換にポケットに突っ込んでいたiPodを取り出し、娘のオススメであるSuperflyの「タマシイレボリューション」を聞こうと思ったときだった。
横断歩道で隣に立つ人間から並々ならぬオーラを感じたのであった。私は慌ててそちらを見ると、サングラスをかけ、触らなくてもわかる着心地の良さそうな高価なジャケットを来た男性が立っていた。
ここは日本一オシャレと言われる街である。だからそのようなオシャレな人がいてもまったくおかしくないのであるが、サングラスの脇から見える、人懐こそうな眼に、私は見覚えがあった。
確か最近、この顔を見て私は、号泣したのだった。
うううん?
なんとそこに立っていたのは、あのチャリティーマッチで、まさかの、そして当然のゴールを決め、日本中を感動の渦に巻き込んだキングカズこと三浦知良だったのだ。私が浦和レッズの選手以外で唯一尊敬し、熱愛しているサッカー選手の、あのカズだ。いやカズなんて呼び捨てはできない。カズさんである。
おおおおお!
人生は何が起きるか分からない。
一寸先は闇でもあるが、横断歩道隣にカズ、もありえるのであった。
このチャンスを逃すわけにはいかない。先日のゴールのお礼とできれば私が高校生時代から独学で学んで来たカズダンスを披露しなければならない。
ところが問題は私のハートが鳥。すなわちチキンハートなのであった。営業ですら書店員さんに声もかけられずお店を後にすることが多々あるというのに、王様に声をかけるなんてことができるだろうか。
しかししかし、人生には一度しかないチャンスというのもあるだろう。この機会を逃して、二度とこれほどまでにカズさんと近づくこともなかろう。行くしかない! 行け!ヨシツグ! お前のその股の間についている二つのタマはこのときのためにあるのだ。まさに「タマシイレボリューション」だ。
というわけで、私は、全身から(主にタマより)勇気を振り絞り声をかけたのだった。
「三浦知良選手ですか?」
王様は私を見て、小さくうなづいた。
「あ、あの、この間のゴールありがとうございました」
「ありがとう」
王様が口を開いた。その声はまさにあのキングカズさんの声だった。そして私がそっと手を差し出すと、その手を強く握り返してきた。カズさんの手は冷たく、そしてまったく贅肉が付いていなかった。
手を離し、私がカズダンスを披露しようとしたとき、信号が青に変わり、王様はマネージャーのような人と颯爽と渡って行ってしまった。
カズさん、あのゴール、本当にありがとうございました。
それは東京でいちばんオシャレと言われている本屋さんを訪問した後の出来事であった。私はこちらもまた東京でいちばんオシャレと言われている片側3車線の国道にかかる横断歩道を渡ろうとしていた。
道の反対側にはこちらもまた東京でいちばんオシャレといわれている大学があり、その大学にはまったく用事はなかったのだが、何となく私は春の暖かさにつられ、いや女子大生につられ、道を渡ることにしたのであった。
信号は変わったばかりで、このオシャレな国道は、車の往来も多く、しばらく歩行者信号が青く点灯することもなかろうかと思った。
気分転換にポケットに突っ込んでいたiPodを取り出し、娘のオススメであるSuperflyの「タマシイレボリューション」を聞こうと思ったときだった。
横断歩道で隣に立つ人間から並々ならぬオーラを感じたのであった。私は慌ててそちらを見ると、サングラスをかけ、触らなくてもわかる着心地の良さそうな高価なジャケットを来た男性が立っていた。
ここは日本一オシャレと言われる街である。だからそのようなオシャレな人がいてもまったくおかしくないのであるが、サングラスの脇から見える、人懐こそうな眼に、私は見覚えがあった。
確か最近、この顔を見て私は、号泣したのだった。
うううん?
なんとそこに立っていたのは、あのチャリティーマッチで、まさかの、そして当然のゴールを決め、日本中を感動の渦に巻き込んだキングカズこと三浦知良だったのだ。私が浦和レッズの選手以外で唯一尊敬し、熱愛しているサッカー選手の、あのカズだ。いやカズなんて呼び捨てはできない。カズさんである。
おおおおお!
人生は何が起きるか分からない。
一寸先は闇でもあるが、横断歩道隣にカズ、もありえるのであった。
このチャンスを逃すわけにはいかない。先日のゴールのお礼とできれば私が高校生時代から独学で学んで来たカズダンスを披露しなければならない。
ところが問題は私のハートが鳥。すなわちチキンハートなのであった。営業ですら書店員さんに声もかけられずお店を後にすることが多々あるというのに、王様に声をかけるなんてことができるだろうか。
しかししかし、人生には一度しかないチャンスというのもあるだろう。この機会を逃して、二度とこれほどまでにカズさんと近づくこともなかろう。行くしかない! 行け!ヨシツグ! お前のその股の間についている二つのタマはこのときのためにあるのだ。まさに「タマシイレボリューション」だ。
というわけで、私は、全身から(主にタマより)勇気を振り絞り声をかけたのだった。
「三浦知良選手ですか?」
王様は私を見て、小さくうなづいた。
「あ、あの、この間のゴールありがとうございました」
「ありがとう」
王様が口を開いた。その声はまさにあのキングカズさんの声だった。そして私がそっと手を差し出すと、その手を強く握り返してきた。カズさんの手は冷たく、そしてまったく贅肉が付いていなかった。
手を離し、私がカズダンスを披露しようとしたとき、信号が青に変わり、王様はマネージャーのような人と颯爽と渡って行ってしまった。
カズさん、あのゴール、本当にありがとうございました。