9月30日(金)
- 『下駄でカラコロ朝がえり (ナマコのからえばり5)』
- 椎名 誠
- 毎日新聞社
- 1,512円(税込)
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朝、昨日の顛末を娘に確かめると、怒られるのかと思ったのか目を合わせない。
しかし「大変だったな」と頭を撫でてやると堰を切ったように話しだす。
最後まで一緒に鍵を探してくれた友達がいたらしい。
その友達に今日ちゃんとありがとうと言うようにいうと、わかっているよと返事が戻ってきた。
娘よ、お前はわかってないぞ。そういう友達はな20年、30年経っても友達でいられるんだぞ。父ちゃんと子分のダボのように、一生友達でいられるんだ。
★ ★ ★
通勤読書は、いつものように無計画に大量投下される椎名さんの新刊のなかの1冊、『下駄でカラコロ朝がえり』(毎日新聞社)。坪内祐三さんもおっしゃっていた気がするけれど、私も「週刊文春」の赤マントシリーズより、こちらの「サンデー毎日」のエッセイのほうが好きだ。久しぶりに椎名エッセイで、ぐふぐふ笑ってしまう。
川崎から異動になった沢田さんを訪ね、丸善津田沼店へ。
沢田さんは増床したばかりで乱雑に棚に収められた本を、1冊1冊関連を考えながら並べ直していた。
「この間ね、おじさんが棚を眺めながら『すごいなあ、こんな本があるのか』って嬉しそうに手にとっていたんだよね。自分たちも若いころ、東京の本屋さんを知ったときに驚いたじゃん。こんなにいっぱい本があるんだって。そういう喜びのある本屋さんにしたいんだよね」
その姿はまるで荒れた大地から木の根や石をどかし、田や畑を作っているようだった。おそらくこれから種を撒いて、花を咲かせ、芳醇な実を実らせるのだろう。
そういえばちょうど読んでいた椎名さんの本に、全国同じチェーンのハリボテのような風景を観察した、こういう文章があったのだ。
「ブックオフに代表される新古本屋を見て育った地方の子供たちはそれが「書店」だと思ってしまうだろう。都会にあるあらゆるジャンルの本を売っている本物の大型書店や神田あたりの本物の古書店をみてブックオフとの本質的な違いを理解するのは、その若者が都会の大学に合格して都会の街をはじめて歩いてからのことだろう。「めくるめくような知識の多様性と遭遇した」時にその若者はすでに脳が一番効率よく知的好奇心を集約して吸収していける時期を逃してしまっている」
今、全国に1000坪を越える大型書店ができている。そういうお店を訪問してみると、正直本を詰め込んだだけのお店も少なくない。そのことを否定的に捉えることも簡単なのだが、もし沢田さんのようにそのお店の棚を耕し、種を撒くことができたら、「めくるめくような知識の多様性」をもっと多くの人が身近に接することができるのではないだろうか。
いや、そもそもそういう場所を町の本屋さんが担っていたのだけれど。
しかし「大変だったな」と頭を撫でてやると堰を切ったように話しだす。
最後まで一緒に鍵を探してくれた友達がいたらしい。
その友達に今日ちゃんとありがとうと言うようにいうと、わかっているよと返事が戻ってきた。
娘よ、お前はわかってないぞ。そういう友達はな20年、30年経っても友達でいられるんだぞ。父ちゃんと子分のダボのように、一生友達でいられるんだ。
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通勤読書は、いつものように無計画に大量投下される椎名さんの新刊のなかの1冊、『下駄でカラコロ朝がえり』(毎日新聞社)。坪内祐三さんもおっしゃっていた気がするけれど、私も「週刊文春」の赤マントシリーズより、こちらの「サンデー毎日」のエッセイのほうが好きだ。久しぶりに椎名エッセイで、ぐふぐふ笑ってしまう。
川崎から異動になった沢田さんを訪ね、丸善津田沼店へ。
沢田さんは増床したばかりで乱雑に棚に収められた本を、1冊1冊関連を考えながら並べ直していた。
「この間ね、おじさんが棚を眺めながら『すごいなあ、こんな本があるのか』って嬉しそうに手にとっていたんだよね。自分たちも若いころ、東京の本屋さんを知ったときに驚いたじゃん。こんなにいっぱい本があるんだって。そういう喜びのある本屋さんにしたいんだよね」
その姿はまるで荒れた大地から木の根や石をどかし、田や畑を作っているようだった。おそらくこれから種を撒いて、花を咲かせ、芳醇な実を実らせるのだろう。
そういえばちょうど読んでいた椎名さんの本に、全国同じチェーンのハリボテのような風景を観察した、こういう文章があったのだ。
「ブックオフに代表される新古本屋を見て育った地方の子供たちはそれが「書店」だと思ってしまうだろう。都会にあるあらゆるジャンルの本を売っている本物の大型書店や神田あたりの本物の古書店をみてブックオフとの本質的な違いを理解するのは、その若者が都会の大学に合格して都会の街をはじめて歩いてからのことだろう。「めくるめくような知識の多様性と遭遇した」時にその若者はすでに脳が一番効率よく知的好奇心を集約して吸収していける時期を逃してしまっている」
今、全国に1000坪を越える大型書店ができている。そういうお店を訪問してみると、正直本を詰め込んだだけのお店も少なくない。そのことを否定的に捉えることも簡単なのだが、もし沢田さんのようにそのお店の棚を耕し、種を撒くことができたら、「めくるめくような知識の多様性」をもっと多くの人が身近に接することができるのではないだろうか。
いや、そもそもそういう場所を町の本屋さんが担っていたのだけれど。