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10月12日(水)

不愉快な本の続編
『不愉快な本の続編』
絲山 秋子
新潮社
1,296円(税込)
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 朝、埼京線のドア脇の小さなスペースで私は途方に暮れていた。
 それは『不愉快な本の続編』絲山秋子(新潮社)の最後のページを読み終えた東十条駅から新宿駅までの、都心の電車にしてはやけに一駅間が長い三駅分にわたって続いていた。もし仕事がなければそのままずっと電車に揺られていたかもしれない。

 そこまで言葉、文体、文章、そして小説の力、軽やかな凄みに圧倒されてしまったのだ。
 作中、呉、東京、新潟、富山と漂白するヒモの主人公ボクは、富山県立近代美術館に出会い、「芸術ってやつはお互いの魂が飛び出しちまうこと」だと気づくのだが、私の魂も『不愉快な本の続編』という芸術の前に、飛び出していた。

 こんな気分になったのは、最愛の小説『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子(文春文庫)を読んで以来だ。どうしていいかわらかない。途方に暮れるしかない。

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