11月17日(木)
朝、会社に着いてすぐ電話が鳴る。
「客注なんですが、1冊お願いします」
書店さんからで電話注文だ。
「『山の帰り道』1冊、番線は......」
7月に出版した沢野さんのエッセイ集『山の帰り道』は、発売から約半年経っても毎日にようにこのような注文が何件も続いている。雑誌や「東京新聞」などで紹介された影響なのか、それとも新聞広告をうった影響なのかよくわからない。ある読者はがきには「今までの沢野さんの本のなかで一番心に染み入りました」とあった。
営業で見ていて面白いのは、これだけ注文が届いている本なのにamazonでの販売数は大したことがないということだ。販売分におけるネット書店比率は相当低い。そしてネットで感想を検索してもほとんどあがってこない。また注文のほとんどがナショナルチェーンの書店さんではなく、町の本屋さんからなのである。
★ ★ ★
「まだまだこれからだよ」
とある書店さんを訪問し、その前に訪問した別の支店の感想を伝えたところ、苦笑いしながら言われたのだった。
「注文取れなかったでしょう? だってあそこのお店は本部で発注だから売り場では出さないんだよね。どんどん人を減らして効率よく経営するってことじゃない。ベテランはやめていくかもしれないし、もう数年前とぜんぜん違う。それにもっと変わっていくよ」
私が本の雑誌社に入社したときからお世話になっている、もはやベテランといっても何も差し支えないその書店員さんは、そう話す。大規模店といってもいいお店の注文を売り場にいない人が出す。確かに数年前だったら考えられない話だ。
「でもさそうじゃなきゃもうやっていけないんじゃない? そんで売り場に書店員が減ったらさ、例えば前なら100冊の本で100の売上をたてていたとしたら、そんなに手間隙かけられなくなって10冊を10ずつ売って100の売上を立てる考え方に変わるよね。書店員も出版社もそのほうがずっと楽だし」
その後も書店や出版社を取り巻く現状について長く話を伺った。
お互いこの方向性がいいことではないとわかっているけれど、どうすることもできずに奥歯をかみしめている。なんだか、なんかと一緒だ。
「客注なんですが、1冊お願いします」
書店さんからで電話注文だ。
「『山の帰り道』1冊、番線は......」
7月に出版した沢野さんのエッセイ集『山の帰り道』は、発売から約半年経っても毎日にようにこのような注文が何件も続いている。雑誌や「東京新聞」などで紹介された影響なのか、それとも新聞広告をうった影響なのかよくわからない。ある読者はがきには「今までの沢野さんの本のなかで一番心に染み入りました」とあった。
営業で見ていて面白いのは、これだけ注文が届いている本なのにamazonでの販売数は大したことがないということだ。販売分におけるネット書店比率は相当低い。そしてネットで感想を検索してもほとんどあがってこない。また注文のほとんどがナショナルチェーンの書店さんではなく、町の本屋さんからなのである。
★ ★ ★
「まだまだこれからだよ」
とある書店さんを訪問し、その前に訪問した別の支店の感想を伝えたところ、苦笑いしながら言われたのだった。
「注文取れなかったでしょう? だってあそこのお店は本部で発注だから売り場では出さないんだよね。どんどん人を減らして効率よく経営するってことじゃない。ベテランはやめていくかもしれないし、もう数年前とぜんぜん違う。それにもっと変わっていくよ」
私が本の雑誌社に入社したときからお世話になっている、もはやベテランといっても何も差し支えないその書店員さんは、そう話す。大規模店といってもいいお店の注文を売り場にいない人が出す。確かに数年前だったら考えられない話だ。
「でもさそうじゃなきゃもうやっていけないんじゃない? そんで売り場に書店員が減ったらさ、例えば前なら100冊の本で100の売上をたてていたとしたら、そんなに手間隙かけられなくなって10冊を10ずつ売って100の売上を立てる考え方に変わるよね。書店員も出版社もそのほうがずっと楽だし」
その後も書店や出版社を取り巻く現状について長く話を伺った。
お互いこの方向性がいいことではないとわかっているけれど、どうすることもできずに奥歯をかみしめている。なんだか、なんかと一緒だ。