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2月27日(火)

  • 飼い喰い――三匹の豚とわたし
  • 『飼い喰い――三匹の豚とわたし』
    内澤 旬子
    岩波書店
    5,866円(税込)
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 通勤読書は「本の雑誌」でもエッセイ「黒豚革の手帖」を連載していただいている内澤旬子さんの『飼い喰い』(岩波書店)。これは私も二度ほど訪れたことがある千葉県旭市の民家で三匹の豚を実際に飼い、育て、最終的はそれをみんなで食した、内澤さんの強烈なルポルタージュである。

 しかし読んでいると気づくのだが、これはもうルポルタージュなんてものではなく、ひとりの豚飼いの手記だ。庭先で豚とまみれ、出荷し、屠畜され、肉になったときの内澤さんの嘆きと叫びは、まさに豚飼いの悔しさと誇りだろう。しかもどんな状況でも冷静さを失わず、肩の力を抜いた文章で綴られている。知り合いだからというわけでなくこれは傑作だ。

 池袋のジュンク堂書店さんを訪問するとなぜか7階の理工書売り場で、円城塔さんのフェアが行われていた。すごい。

2月26日(月)

  • 争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール
  • 『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』
    木村 元彦
    集英社インターナショナル
    1,650円(税込)
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 昨日は、リブロ池袋コミュニティカレッジで行われた『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』の刊行を記念した木村元彦さんと高野秀行さんのトークイベントの司会をした。

 私はものすごく気が小さく、神経質で、用意周到な男のものだから、事前に打ち合わせをしたかったのだが、編集者から詳細の連絡が届いたのは開催の4日前で、その時点で私はお二人の著作をほとんど読み直し、質問事項を100個くらい考えていたので、今更打ち合わせをしても仕方なかったのだが会ってみると編集者はサッカーバカで、すっかりトークイベントのことを忘れ、サッカー談義に明け暮れてしまった。

 しかし私の緊張はイベントが近づくに従い日々高まり、眠れぬ夜が続く。こうなったらきちんとレジュメを作ろうと前日二人の著作を積み上げ、家族を居間から追い出し、パソコンに向かう。何度も悩みながら綴ったレジュメが出来上がったのは深夜のことだったが、実は私の家にはプリンターがなかった。慌ててUSBメモリーにデータを入れると、セブンイレブンに車を走らせる。人数分のコピーを終え、家に帰ると、やっと私に眠りが訪れた。それは三日ぶりの眠りだった。

 トークイベント当日、1時間前の待ち合わせに時間通りやってきた高野秀行さんにさっそく苦心のレジュメを渡す。高野さんはつーっと目を通すと、私にレジュメを戻した。それは高野さん用に用意してきたものだったが、さすが早稲田大学の人である。8年通って卒業したはずだが、おそらく天才だから見ただけですべて暗記してしまうのだろう。

 30分ほど高野さんとしゃべっていると木村元彦さんがやってくる。実は私、木村さんの大ファンなのであるけれどお会いするのはこの日が初めてで、慌てて名刺を差し出すと木村さんも笑顔で名刺を差し出した。その木村さんにも苦心のレジュメを渡すが、木村さんはじっと見た後丁寧に4つ折りにし、ポケットにしまわれた。

 むむむ。もしかしてこの世界中を旅し、多くの人々を取材してきた二人の公用語は日本語ではなく英語だったのかもしれない。そうなると私の日本語すら覚つかないレジュメはまったく役に立たないではないか。

 私は日々の営業で、マン・ツー・マンで話すのだって苦手な人間だ。それが偉大なるノンフィクション作家二人と50人近いお客さんである。レジュメも台本もなくそんなところに出ていけるわけはない。頼む、頼むから私が練った進行どおり進んでくれ......という願いは、リブロ池袋店のTさんが私達を会場に導き入れた瞬間に打ち砕けた。

 木村さんと高野さんが一気にセルビアの話を爆発させたのだった。
 嗚呼、私のレジュメでは、自己紹介から始まるはずだったのに......。

 それから約2時間の出来事を私はまったく覚えていない。
 ただし『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』は、全サッカーバカは読むべき一冊だ。日本サッカー協会の、Jリーグの狂った運営と、そしてそこに立ち向かった我那覇はじめドクター及び関係者の壮絶なノンフィクションである。そこには木村さんが描き続けてきた誇り高き人々のすべてが詰まっている。

 そしてもっとも重要な役割を果たすのが我らが浦和レッズのチームドクターなのであった。クラブにほとんど誇りを感じられなくなってしまったレッズサポーターは、この本を読んで「We are Reds」と叫びたくなるだろう。

2月24日(金)

 朝、起きてこたつに潜り込んで本を読んでいると、寝ぼけ眼の小1の息子が、「パパちゃーん」と言いながら私の腹の上に横たわってくる。体重は25キロを越え、娘と違ってがっちりした息子の全体重を支えるのは苦しい。しかしまるで私の心臓の音を聞くかのように顔を埋め、寝息を立てだした息子を邪険にもできない。

 しばらくすると小5の娘も起きだし、私の上に息子が乗っているのを見ると小さく舌打ちし、仕方なく私に寄り添うように身体を寄せてきた。

 私は本を読むのを諦め、娘の頭の下に腕を伸ばした。日向に干した布団のような匂いのする息子の頭の匂いとさわやかなリンスの匂いのする娘の頭の匂いを交互に嗅ぎながら目をつぶる。

 昨日も一昨日も仕事はうまくいかなかった。おそらく今日だってうまくいかないだろうし、うまく行く日が来るのかもわからない。日頃の暮らしだって私には子どもたちに誇れるものなんて何ひとつない。それなのに子どもたちは私を慕い、頼ってくる。

 妻の「着替えなさい!」という声で二人は身体を動かし、私から離れた。それでも息子の重みが、しばらく私の身体の上に残っていた。

2月23日(木)

  • 散歩の達人 2012年 02月号 [雑誌]
  • 『散歩の達人 2012年 02月号 [雑誌]』
    交通新聞社
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 吉祥寺の書店さんは「Hanako」の吉祥寺特集の街頭販売で大騒ぎだったが、西荻窪の今野書店さんを訪問すると「散歩の達人」の西荻窪・荻窪特集が入り口に並べられていた。

「すごい売れているんだよ」

 と店長の今野さんが笑うので、どれくらい売れているのか訊ねたら4桁だった...。
 しかもぜんぜん足りないとかで出版社に注文していたのだが、もう出版社で在庫切れだと嘆いている。

「4月には、新入学生さんや引っ越してくる人たちがいっぱいいるから、もっとほしいんだけどねぇ。あっ『本の雑誌』で西荻特集しなよ」

 そういえば本の雑誌社には西荻窪こよなく愛する編集者がいた。
 浦和レッズ特集が先か、西荻窪特集が先か...。
 

2月22日(水)

  • 体幹力を上げるコアトレーニング
  • 『体幹力を上げるコアトレーニング』
    克己, 木場
    成美堂出版
    1,038円(税込)
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 気づいたらのどの痛みはすっかりなくなっており、のどきんたまはのどちんこに戻った。まるで本来のそれのようにまったく存在感を失ってしまった。やはりあのお医者さんは名医だったのだ。

 体調がよろしくなったので、2014年ブラジルW杯を目指し、体幹トレーニングを始める。
 週に40キロランニングをし、土日は娘と共にサッカーをし、連日連夜イギリスのサッカー「プレミアリーグ」を観、これ以上ないほど日本代表入りを目指し努力してきたのだが、ひとつ足りないことがあったのだ。

 それが今日から始める体幹トレーニングで、それはいまや世界のインテルで活躍する長友佑都も毎日かかさず行なっている筋力トレーニングのひとつだ。長友といえば私と変わらぬ身長(長友のほうが7センチ高い)で、しかも大学時代はゴール裏で太鼓を叩いて応援していた人間だ。ゴール裏から日本代表とは私が目指している人生そのものである。

 というわけで長友が帯になっていた『体幹力を上げるコアトレーニング』木場克己(成美堂出版)を購入してから飲み会へ。

2月21日(火)

 ついに『ホームグラウンド』はらだみずき著が発売となる。

 いろんな想いがこみ上げてくるのだが、それをうまく書くことができない。はらださんから頂いたこの素晴らしい小説を、ひとりでも多くの読者に届けたいと思っている。

 また何年か前に交わした書店員さんとの会話を何度も思い出している。

「俺たち書店員はさ、本を手に取らせるところまでが仕事だから」

 そのためにPOPを書いたり、パネルをつけたり、隣に置く本を考えたり、あるいは帯の曲がりを直したり、棚を整理してるのだ。別の書店員さんが言っていたけれど、とにかくお客さんがつい手を伸ばそうとしたその気持ちにストップがかからないよう、棚も平台も細心の注意を払って並べているという。

「お客さんが手にとってから先は、本を見て、買うか買わないか決めるわけでしょう。それはもう出版社や著者の領域だから。だからいい本を作ってよ」

 その言葉を聞いたとき、私は安心したのだ。こういう書店員さんがいるならば、私はただただ本づくりと営業に励めばいいのだと。だから原稿はもちろん、組版、装丁、帯などとことんこだわり抜いて今まで本を作ってこれたのだ。そして約束通り、いい本ができた時、書店員さんたちが売ってきてくれたのだ。

 夕方訪問した書店さんでは『ホームグラウンド』が12面にもわたって多面展開されていた。
 私が興奮してその様子を写真に撮ろうとすると書店員さんは「杉江さん、もうやれる限りのことやったでしょう。装丁もカッコイイし。ここからは書店員の腕の見せどころだね」といつになく真剣な表情で話されるのであった。

 確かに前日まで、いやついさっきまで自分にやれる限りのことはしたと私も思っていた。でもこうやって多くの場所を占領し、実際に並べていただいているを見て私は考えなおした。たぶんまだまだやることがある。いややれることは無数にあるはずだ。

 長く、大切に、『ホームグラウンド』と付き合っていく。

2月13日(月)

  • 三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)
  • 『三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)』
    マーシャ・ブラウン,せた ていじ
    福音館書店
    1,296円(税込)
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    honto
 猛烈な喉の痛みで目を覚ます。
 のどきんたまは本来ののどちんこに戻りかけていたのだが、どうも昨日日本武道館で行われた斉藤和義のコンサートに行き、調子にのって歌っていたのがよろしくなかったようだ。のどちんこはまた腫れ上がり、のどきんたま化してしまった。

 というわけで出社するとともにまた名医のところへ。産婦人科・婦人科だったとしても先日もらった薬のおかげで鼻水と痰はピタリと収まったのである。腕に間違いはないはずだ。

 扉を開けると本日はメーカーの修理の人と間違われることなく、待合室に通されたのだが「あんたはこっち」とひとりソファーではなく隅っこに置かれた丸椅子に座らさせられる。意外と混んでおりさすが名医なのであるが、ほとんどが女性だった。ただ私以外にひとりだけ、男性も混じっており、やはりここは普通の診察もしてくれるのだと胸を撫で下ろす。

 ところがしばらく待っているとその男性は隣に座っていた女性と診察室に入っていった。思い起こせば私も妻が身ごもったとき何度か一緒に産婦人科に行ったのだった。そういうことか。残された男性は私ひとり。しかも口にマスクをしているのだ。やっぱり名医とはいえ、診療科目は大事かもしれない。

 針のむしろな状態で、待合室にあった『三びきのやぎのがらがらどん』マーシャ・ブラウン(福音館書店)を読むが、あまり強烈なストーリーにひっくり返る。トロル、八つ裂き...。いったいどんな絵本なんだ。

 一時間が過ぎた頃名前を呼ばれ、診察室に入ると、なんと名医が私の顔をみていきなりこういうのである。

「いやあ、来てくれてよかった」

 ううん? 前回来た時私は何か検査を受けただろうか? 尿を取られた記憶も血を抜かれた記憶もないぞ。さすが名医だけに私の知らないうちに何かしらの細胞を手に入れ、検査したのだろうか。しかしそれで大きな問題が見つかったのなら喜んでいる場合ではない。

 私はドキドキしながら名医に顔を寄せると、名医は私から避けるように顔をそむけ、ボソリとつぶやく。

「前回、初診料取り忘れちゃって...」

 何はともあれ喉が痛いので、金はきちんと払うと申し出ると、名医はにこやかな顔に戻り、またもや勝手に口をあけた私の喉に向かってライト当てる。そして一言、「まあ傷ですね」というのであった。

 なるほど血が出たのだからそれは傷だろう。

「熱いものとか冷たいものとか酸っぱいものとか飲み込むと痛いでしょう?」

 そのとおりなので頷くと、「要するに口内炎と一緒だから、ビタミン剤を飲むしかないですね」と処方箋を書くのであった。そういえばこの名医、前回のときも今回も私に聴診器すら当てないどころか触りもしないのだ。まるで冷蔵庫の奥に落ちた小銭を照らすかのように、喉にライトを当てるだけなのだった。

「どうしたらいいでしょうか?」
「いや傷が治るまで待つしか無いですよ。組織の再生だから結構時間がかかるかもね」

 そう言うと次の患者さんの名前を呼び、大きなお腹をした女の人が診察に入ってくると私は押しのけられるように外に出された。

 笹塚の名医は自然治癒力を尊重しているようだ。

2月10日(金)

  • 黒魔女さんが通る!! PART14 5年生は、つらいよ!の巻 (講談社青い鳥文庫)
  • 『黒魔女さんが通る!! PART14 5年生は、つらいよ!の巻 (講談社青い鳥文庫)』
    石崎 洋司,藤田 香
    講談社
    836円(税込)
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  • 若おかみは小学生!PART17 花の湯温泉ストーリー (講談社青い鳥文庫)
  • 『若おかみは小学生!PART17 花の湯温泉ストーリー (講談社青い鳥文庫)』
    令丈 ヒロ子,亜沙美
    講談社
    682円(税込)
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 事務の浜田がインフルエンザでダウンしているので、内勤二日目。

 つまらない。
 いや、いろいろやらなければならなかったデスクワークは捗り、浜田の仕事もずいぶんとこなしているのだが、なんていうか物足りない。

 娘の誕生日なので定時にあがり、新宿でDSのソフト「逆転裁判」と石崎洋司『黒魔女さんが通る!!  Part14 5年生は、つらいよ! の巻』と令丈ヒロ子『若おかみは小学生! PART17 花の湯温泉ストーリー』(ともに青い鳥文庫)を買って帰る。

 それが誕生日プレゼントなのだが、娘はどちらを先に手にするかと思ったら、青い鳥文庫の方だった。

2月8日(水)

 出社すると入れ替わりで事務の浜田が会社を出ていく。喉が痛いので名医のところに行くという。
 ついに浜田ものどちんこが、たぬきのきんたまになってしまったのかと思ったら、インフルエンザだった。

 会社に戻ってくると本の雑誌社の社章のようにマスクをし、帰り準備をしだす...と同時に編集の松村から連絡があり、こちらもどうもインフルエンザらしいので休むという。6人しかいない会社で2人がインフルエンザ。会社閉鎖したほうがいいんじゃないだろうか。

 そんななか「本の雑誌」3月号搬入。最少人数でツメツメ作業。私は直納へ。

 直納した書店さんの近くに、坪内祐三さんお薦めのラーメン屋Nがあったので、タンメンを食す。しかし肥大化したのどきんたまには熱いものが苦しく、ふうふう息を吹きかけながらゆっくり食べる。

 明日はいったい何人出社できるだろうか。

2月7日(火)

 のどきんたまは縮小傾向にある。

 千葉を横断する一日。
 最後は松戸の良文堂書店でTさんと長話。もうまもなく発売となる『ホームグラウンド』を、すでにゲラで読んでいただいているので、どうやって販促していくかなど相談にのっていただく。

 隙間のつもりで2月発売にしたのだが、なんと人気作家の新作などもあって気が気ではない。しかし正直な気持ちとしては、中身も外身も負けていないと思っている。『ホームグラウンド』は2月どころか2012年を代表する小説になると信じている。

2月6日(月)

 出社してすぐ出かけなくてはならなかったのだが、急遽、病院へ向かう。
 昨夜突然のどちんこが膨張し、まるでたぬきのきんたまのようになってしまったのだ。ぶらりと垂れ下がったそれはどす黒く変色し、ときおり吐くつばに血がまじる。なによりも舌にあたって気持ちが悪い。具合がよくないのにサッカーのコーチをし大声を出したのと、ランニングを再開したのが悪かったのだろう。

 事務の浜田や経理の小林が「名医」とお薦めする近所の病院の扉を開けると、そこにいた看護師さんに「ああ、こちらです」といきなり診療室に案内される。やはりのどちんこがきんたまになると病院も特別待遇なのかと思ったら「これなんですけど」と大きな医療器具を指さされる。
「?」
「電源が入らないんですよ」
「??」
「あっ?! 業者の人じゃなかったんですか。土曜日にエコーが壊れちゃって修理の人を待っていたんですよ」
 単なる患者だとわかると待合室に戻され、窓口に保険証を提出させられる。しばらく待って、改めて診療所に呼び戻された。

 私はのどちんこが肥大化し、よもやたぬきのきんたまのようになってしまったことを真剣に話すが、浜田や小林がお薦めする名医は「あんた元気そうだから大丈夫だよ」と聴診器も当ててくれない。

「でものどちんこもとい、のどきんたまが、赤黒く変色して血が出ているんです!」と言われてもいないのに大口を開けると、仕方なさそうにライトを当て、また同じことを言うのであった。
「大丈夫ですね」

 無理やり出してもらった薬を手に外に出ると看板に「婦人科・産婦人科」とあった。

 会社に戻り「念のため」といって出してくれた薬を飲んでから早川書房へ。
「本の雑誌」4月号は早川書房特集で、本日は一日かけて早川書房を取材するのであった。

2月2日(木)

  • Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 2/9号 [雑誌]
  • 『Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 2/9号 [雑誌]』
    文藝春秋
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  • 甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)
  • 『甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)』
    計, 中村
    新潮社
    605円(税込)
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 朝、埼京線のなかで「Number」796号を読んでいて、日大三高野球部の「涙の冬合宿密着記」という原稿に思わず号泣してしまう。

 真っ暗な早朝5時半から練習が始まり、一日約12時間、それが15日も続くのだそうだ。今、私は、女子サッカーのコーチを引き受けているが、これは教わる方も教える方も大変なことだ。なによりも部員と指導者の間に信頼関係がなければできないことだ。

 合宿最終日は朝練のみだそうだが、それが「ゴールデン」と呼ばれるもっとも恐れられている練習で、とにかく走りまくる。その過酷なダッシュの最後の1本は、部員全員が手をつないで走るそうだ。それを父兄やOBが見守っているのだ。もうダメだ。その光景を思い描いただけで涙が止まらない。

 執筆者の中村計は、名作『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮文庫) の著者。素晴らしい書き手だ。

 朝、メールの返信などした後、東横線の菊名へ。「サンロード」という洋食屋さんでランチ(チキンカツ)を食べながら、アウトドアライターの森山伸也さんと打ち合わせ。

 打ち合わせ後新横浜へ移動し、『ホームグラウンド』を人工芝を敷いて販促してくれるという三省堂書店新横浜店Hさんへ、展示用のサッカーボールを渡す。まさかやたらめったらサッカーボールを持っていることが役立つとは...。

 その後、東横線を営業しつつ、自由が丘よりぐぐっと横移動し、田園都市線を営業。

 とある書店でベテランの担当者さんと平台のなくなった売り場について話す。ストックが持てなくなった分、新刊の入れ替えが早くなったそうだ。もしかするとロングセラーやじわじわと売れ続ける本が減っているのは、そういう売り場の構成の影響もあるのかもしれない。

 会社に戻ると目黒さんが遊びに来ており、『ホームグラウンド』の装丁を褒められる。うれしい。具合が悪いので、十号通りの薬局で銀色の「ベンザブロック」を購入し、早めに帰宅。

2月1日(水)

  • 争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール
  • 『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』
    木村 元彦
    集英社インターナショナル
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  • 誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)
  • 『誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)』
    木村 元彦
    集英社
    628円(税込)
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    honto
 日記の書き方がわからなくなってしまったので目黒考二著『笹塚日記』を読みなおす。

 朝、出社しメールチェックすると外部編集装置のカネコッチから、5月刊行予定の宮田珠己さんの連載「ブックス・メガラニカ」の単行本用データが届いていたので、それまでチェックしていた直しを編集の松村に入れてもらって出力。

 宮田さんに電話すると週刊ブックレビューで紹介する本を探しにちょうど新宿の書店さんに着ているというので、出来たばかりのゲラを持って新宿へ。ライオンで週替わりハンバーグランチを食べながらもろもろ打ち合わせ。

 池袋へ移動し、リブロの矢部さんのところへ。「めくるめくめくーるな日々」再開のお礼と今後のテーマなどを話しつつ、目玉の新刊・はらだみずき『ホームグラウンド』の注文と、すでに初回納品分が半分も売れていた大谷能生『植草甚一の勉強』の追加注文をいただく。

 矢部さんの小部屋から出てきたところで高野秀行さんから電話。
「NPO個人の杉江さんですか?」
 こうやってかかってきたときは本業とまったく関係ない謎の依頼のことが多いのだが、今回もとんでもない依頼だった。

 2月下旬にこのリブロの上「コミュニティ・カレッジ」で行われるらしい高木村元彦さんの『争うは本意ならぬど』(集英社)のトークイベントが高野さんとの対談だそうで、その司会をしてくれないかというのだ。確かに私は高野さんの本も木村さんの本も熱愛熟読しているけれど、それと司会はまったく別の話で、そもそも木村さんには会ったことも見たこともないのである。

 しかし高野さんの依頼をこれ以上断るわけにはいかない。ここ最近『世にも奇妙なマラソン大会』に誘われたときはパスポートを持っていないため同行できず、昨年末の忘年会では「ほらっ」と差し出された蚕の丸焼きからも口をつぐんで逃げてしまったのである。

 というわけで、つい3分前までまったく想定外だった出来事がおき、私の頭に重石が乗ることになった。

 あまりに衝撃に、このあとはどこへ営業に行っていいのかわからなくなり、地下鉄の路線図の前で佇んでいると、駅員の女性から「どこかお探しですか?」と訊ねられる。思わず「注文をたくさんくれる本屋さん」と答えそうになるが、あわてて「いえ」とことわり、丸ノ内線と日比谷線で東銀座へ。

 山下書店東銀座店F店長さんを訪問するとこちらでも『植草甚一の勉強』が売れていて追加注文をいただく。それにしてもどこの書店に言っても芥川賞受賞作『共喰い』(集英社)の姿はなく、あの記者会見とその後の報道ぶりによる影響を思い知る。「やっぱりテレビなんですよね...」とF店長さんと話しあう。

 その後六本木などを営業し、会社へ戻る。早めに帰宅するが、喉が痛いのでランニングはせず、木村元彦『誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡』(集英社文庫)を再読しつつ就寝。

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