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1月24日(木)

  • 謎の独立国家ソマリランド
  • 『謎の独立国家ソマリランド』
    高野 秀行
    本の雑誌社
    2,420円(税込)
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 第10回本屋大賞ノミネート作品発表、豊崎由美さんの大迫力書評集『ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇』の発売(印刷ミスごめんなさい)、高野秀行さんの渾身の勝負作『謎の独立国家ソマリランド』の編集作業、サイン本予約受付、その出版後のイベント&出版記念パーティーの準備、そして何よりも営業と新年会、その他の雑事、信じられないほどめまぐるしい日々が続いている。まあこんなに真面目に働くのもJリーグ開幕までのことだけれど。

 そんな中、しばし品切れでご迷惑をおかけしていた『古本の雑誌』の増刷を決める。3刷!
 青土社のE君のところへ「増刷だぜぃ」と威張りに行こうとドアを開けたらそこになんとE君が立っていた。
「高見順賞授賞やでぇ〜」
 『水瓶』川上未映子(青土社)を掲げているではないか。

 何はともあれ、本にまみれ、本に一喜一憂しながら日々暮らすのは、本望なので文句はない。Jリーグ開幕までは。

1月16日(水)

 白水社のホームページで連載中の『蹴球暮らし』第35回「ラストパス」を更新。

 まだ雪残る。本日も武蔵野線は頑張って通常通り運行されていた。通勤読書は桜木紫乃『ホテルローヤル』(集英社)。ラブホテルを舞台にした連作短編集。男と女の狂気と快楽から生まれる人間関係がまたひとつ人間を違う世界へ誘う。

 アポが2件あるだけで手帳を見なかったことにしたくなるのに、今日はそれが4件。師走がずっと続いているような気分。

1月15日(火)

  • 卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)
  • 『卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)』
    デイヴィッド ベニオフ,Benioff,David,俊樹, 田口
    早川書房
    990円(税込)
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 通勤読書は、困ったときの角田光代第2弾。『水曜日の神様』(幻戯書房)。主に旅にまつわるエッセイ集。
 若い頃にひとり暮らしとひとり旅をしてこなかったことを改めて深く後悔する。

 大雪。世界最弱の電車「武蔵野線」の奇跡的な頑張りによっていつも通り出社する。感動をありがとう、武蔵野線。

 その武蔵野線に見習い、道ばたに積もる雪と凍結した歩道を見て一瞬の明日に変更しようかと考えていた『ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇』の取次店さんへの見本出しを頑張る。どちらの取次店さんの仕入れ窓口もガラガラだった。途中、マンガのように素っ転ぶが、本も私も無事。

 午後、校正の市村さんから戻ってきた『謎の独立国家ソマリランド』の原稿を持って、編集右腕カネコッチとともに高野秀行さんのところへ。500ページを越える大作にして図版や資料の入る原稿を前に、家を建てているような気分に。今は内装の最後の仕上げ段階。気を抜くことなく頑張る。

 夜、松戸のR書店Tさんを訪問し、『謎の独立国家ソマリランド』のゲラを届ける。

 棚一面使っていただいている『おすすめ文庫王国2013年度版』のベストテンフェアでは、1位の『卵をめぐる祖父の戦争』D・ペニオフ(ハヤカワ文庫)だけでなく、2位の『学問』山田詠美(新潮文庫)、9位の『生きていてもいいのかしら日記』北大路公子(PHP文芸文庫)、オリジナル文庫大賞の「私を知らないで」白河三兎(集英社文庫)が売れているそうだ。うれしい。

 それにしても文庫の棚は、1位帯だらけだ。

1月11日(金)

 通勤読書は『しあわせのねだん』角田光代(新潮文庫)。
 読書にイマイチ気が乗らないときは角田光代にかぎる。家計簿的エッセイ。2012年の傑作小説『紙の月』(角川春樹事務所)に繋がるお金と人と関係性が綴られており、面白い。

 夜、九段下の居酒屋で行われた第8回酒飲み書店員大賞授賞式に参加。引き続き広報活動のお手伝いはしていたが、酒飲み書店員のメンバーが変わってからは3年ぶりの参加のため、「なんでいるの?」感漂う若干アウェーな雰囲気。しかし相変わらず酒好き、本好き書店員さんが集まっており、大賞作品『キネマの神様』(文春文庫)の著者・原田マハさんに記念のジョッキが送られ盛大な拍手がわき起こる。

 仕事が残っていたので、中座。

1月10日(木)

 朝、校正の市村さんから電話。
 見ていただいてる高野秀行著『謎の独立国家ソマリランド』が、「すごくすごくすごく面白い!」と興奮気味に話される。いつも冷静な市村さんだけにその評価がとてもうれしい。

 数ヶ月前に高野秀行さんから初稿を頂いた際、その面白さに腰を抜かし、思わず周りの人と感想を語り合おうとしたのだけれど、その時点で原稿を読んでいるのは私と高野さんしかおらず、ふたり淋しく「これ超傑作ですよ」「そう......だよね」と淋しく語り合ったのだ。

 しかし今、発行人の浜本、編集右腕のカネコッチ、そして校正の市村さんと読者が5人に増え、その誰もがこの驚天動地のノンフィクションに興奮しているのであった。
 早く本屋さんの棚に並べたい。

 昼、カネコッチとレンタルのJanisへ。
 ジョン・セバスチャンやレコードで持っていたブルース・スプリングスティーンのライブ、佐野元春などを借りる。キャンペーン中により、全額金券バック。

 午後、まずはジュンク堂書店池袋本店へ。まずはコミック担当のTさんにご挨拶。
 なぜならTさんから頂いた年賀状に「先日初めて青土社のE本さん(実物)とお目にかかれました。日誌でしか存じてなかったので、お会いできたのがアイドルに生で会えた的嬉しさで楽しかったです」と書かれていたからだ。
 Tさん、本を見る目はあるのだが、人を見る目がないようだ。全力でその曇った目を磨く。

 その後、文芸書の売り場へ行き、田口さんなどに新年のご挨拶。
 田口さんとは主にサッカーの話。今年こそジェフがJ1に昇格できますように。

 時間が迫っていたので新宿へ移動。連絡頂いていた紀伊國屋書店新宿南店へ。担当のSさんが、2月刊『謎の独立国家ソマリランド』に大変興味を示していただき、フェアの相談など。いろいろアイディアもいただく。

 夜、会議。

1月9日(水)

年末から数篇ずつ大切に読んできた木内昇さんの初エッセイ集『みちくさ道中』(平凡社)を読み終える。
 実直できっちり筋が通っており、それでいてところどころにユーモアも散りばめられ、ときにまるで江戸時代から生きていたかのような語り口が笑いを誘うエッセイ集だった。
 いくつもの言葉をノートに書き写してしまったほどで、おそらくこれから何度も読み直すことになるだろう。

「本の雑誌」2012年2月号搬入。
 本屋さんでアルバイトしていた頃から大変興味のあった専門出版社、農文協や舵社、そして柴田書店などを覗け、幸せいっぱいの特集。

 青山ブックセンター本店を訪れ、大ベテランのNさんとお話。独りよがりにならずお客さんとの関係で棚を作っていく、などなど。すべて本作りにも繋がる思想。新年早々背筋が伸びる。

 夜、昨日OAの「元春レディオショー」でかかった、ジョン・セバスチャンのCDを探しに、JANIS2とディスクユニオン。
 帰宅後、7キロラン。

1月8日(火)

初営業は、八重洲ブックセンター本店。
 今から22年前、18歳の夏に、ここでアルバイトしていた頃の初心を思い出し、身を引き締めるため。

 その後で訪れたとある書店さんではこんなやりとり。

 書店員さん「うちで売れるかなあ......」
  私   「これこれこうで(本の紹介)」
 書店員さん「うん、面白そうだよね。売ろう。売るよ!」

 また今年も本を間に挟んでの書店員さんとの共同作業が始まった。営業人生20年め、がんばろう。

1月7日(月)

  • ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇
  • 『ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇』
    豊崎 由美
    本の雑誌社
    1,980円(税込)
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あけましておめでとうございます。
本年も「本の雑誌」および単行本をよろしくお願いします。

また年賀状をいただきました皆様、ありがとうございました。
いつの間にか本の雑誌社からは年賀状という風習がなくなっており、すっかり出さなくなってしまった非礼こちらでお詫び申し上げます。

それにしても以前「本の雑誌」にて「ニッポンの地元愛」を連載していただいた石川春菜さんの年賀状は謎だ。「夏に事務所にあそにいきまーす」と書かれているのだが、なぜ「夏」なのだろうか。まだ一月、冬でも春でもいいではないか。夏と言えば半年経った頃ではないか。もしや編集長をされている廃墟系雑誌『八画文化会館』の売行きが芳しくなく、夏まで遠洋漁業の船にでも乗っているのだろうか。心配だが、夏まで待とう。

朝、私用にて少し遅れて出勤すると、御茶ノ水駅前にある取次店N社には多くの出版営業マンが挨拶に訪れていた。たいていの出版営業の仕事始めは、取次店さんや書店さんへの挨拶廻りから始まるのであるが、私は残念ながらその列に並べず、もう十年も続いている本屋大賞の一次投票打ち込みに勤しむ。私がこれを打ち込まないかぎり集計に進めず、ノミネート発表などすでにスケジュールは決まっているので、遅らせるわけにはいかないのであった。

しかも今年は仕事始めの前日が締め切りという恐ろしいスケジュールであったため、私は出社すると年末年始の間に送られてきたであろう投票用紙が手つかずのまま積まれているのであった。

手書きで書かれたこれらをひとつひとつ打ち込んで行くのは大変な苦労なのであるけれど、年賀状と一緒で、まだお会いしたことのない、しかし本屋大賞の投票だけでは長年付き合いのある書店員さんの名前や見覚えのある字を見ると、不思議と力が湧いてくる、ような気がする。

朝から一心不乱に打ち込み、途中事務の浜田やシステム会社のSさんにに手伝ってもらいつつ、午後3時終了。

その後、一気に本来の「仕事」に立ち向かう。
2月発売の高野秀行さん渾身の勝負作『謎の独立国家ソマリランド』は編集作業が佳境を迎えており、装丁家や校正家、編集右腕のカネコッチと次々連絡を取り、進行状況の確認などをする。

またその前に出版する豊崎由美さんの書評集<ガタスタ屋>シリーズ第2弾『ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇』の方は、営業活動が山場を迎えており、その対応。

そういえば、ミシマ社の営業マンWさんから頂いた年賀状には「本を作って営業する杉江さんにあこがれています」と書かれていたが、きちんと本を作ってくれる編集者がいるならば、わざわざ渦中の栗を拾うというか飛んで火にいる夏の虫というか、二足のわらじは履かずどちらかに勤しんだほうがいいと思うのである。

多くの出版社が営業部と編集部に分けているのはそれだけの理由があるのだ。

椎名誠『三匹のかいじゅう』(集英社)読了。
『岳物語』の岳くんの3人の子ども、すなわち椎名さんにとって孫との暮らしが綴られていた。

こちらの本の出版に合わせて、神保町の三省堂書店さんにてトーク&サイン会が開かれる。

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