2月4日(月)
- 『狭小邸宅』
- 新庄 耕
- 集英社
- 1,296円(税込)
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- 『謎の独立国家ソマリランド』
- 高野 秀行
- 本の雑誌社
- 2,376円(税込)
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営業マンの話という噂を聞いて手に取ったすばる文学賞受賞作『狭小邸宅』新庄耕(集英社)がすこぶる面白かった。
大学を卒業し不動産屋会社に就職した主人公は、そのあまりに過酷な営業の現場と理不尽な上司に翻弄され(その人物造形が見事!)、ギリギリのところで働いている。辞めるか、辞めてどうするのか、起き上がるのも苦しい中、一軒5000万円以上の家を売るのは至難の業だ。
営業トークだけでなく「まわし」などといった不動産営業ならではのディテールが細かく書き込まれ、読んでるこちらも思わず一緒に営業している気分になる。そして私も角田光代氏が帯で書いているところで涙を流した。小説を読んで泣いたのは久しぶりだ。
★ ★ ★
『謎の独立国家ソマリランド』の編集作業がすべて完了する。520ページ、口絵、図版、年表つき。
しかし私の仕事は終わらない。営業が待っている。校了で一息つける編集者が羨ましい。
しかも今回は高野さんから「杉江さん、今回の杉江さんはW杯フランス大会アジア最終予選の岡野だよ。あのジョホールバールの中田英と一緒で俺は最高のパスを出したから、あとは杉江さんがゴールを決めるだけだから。もしこれでゴールが決められなかったら日本に帰れないよ」とプレッシャーをかけられているのであった。
確かにこれだけの原稿を頂いたからにはゴールを決めなければならないだろう。岡野はあのとき二度も三度も絶好機を外し、中田英に呆れられ、監督の岡田は頭を抱えていたが、それでも諦めずにゴール前に飛び込んでいたのだ。だからこそGKがはじいたボールをゴールに押し込み、私たちをW杯に連れて行ってくれたのだ。
信じて走るしかない。営業だから。