3月10日(月)
- 『お菓子作りのなぜ?がわかる本』
- 相原 一吉
- 文化出版局
- 1,728円(税込)
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- 『佐賀北の夏―甲子園史上最大の逆転劇 (新潮文庫)』
- 中村 計
- 新潮社
- 529円(税込)
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- 『ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)』
- 横田 増生
- 文藝春秋
- 691円(税込)
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- 『本の雑誌370号』
- 本の雑誌社
- 700円(税込)
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スポンジケーキを制覇した後、果たして次にどんなケーキを作ろうかと頭を悩ませたウィークデイ。事務の浜田からチーズケーキが簡単なのではとアドバイスされたが、偏食大魔王の私はチーズが食えず今までの人生で一度もチーズケーキを食したことがないのだ。いくら自分が作ったとしてもおそらくそれを口にすることはできないだろう。私のケーキ作りのモットーは、自分と家族が食べたいものを作るのである。
というわけで金曜の夜、漢字テストで落第点を取って、ふて寝している息子に訊ねると「シュークリーム!」と言われた。
シュークリーム......。
それは私も大好物であり、ぜひともいつか作ってみたいと考えていたのだが、あの皮は難しいのではないかと先送りしていたのだ。私のバイブルとしているケーキレシピ本『お菓子作りのなぜ?がわかる本』相原一吉著(文化出版局)でもシュークリームは最後の章に掲載されており、それは難易度高しという意味だと思っていた。
しかし息子が言うなら作るしかない。
翌日の土曜日に作りたかったが、その日は浦和レッズのホーム開幕戦であった。しかも朝から息子のサッカーの試合で出かけなければならない。
決戦は日曜日。
足りない材料を書き出し、『お菓子作りのなぜ?がわかる本』を熟読し、眠りについたのは零時をまわった頃だった。
この先は長いので割愛するが、私は待ちきれずに土曜の夜からシュークリーム作りに挑戦し、日曜の午後、食卓の上に立派なシュークリームが24個並んだ。シューの皮は綺麗に焼け、カスタードクリームも艶やかに濃厚だった。
これまで一度もシューの皮どころかスポンジすら膨らんだことのない妻はその美味しさと出来の良さに驚きを隠せないようだった。一口齧ると、ウォーズマン同様ほとんど笑うことのない妻が笑った。そして息子は「宇宙一美味い」と言って、立て続けに三つ頬張り、娘は友だちを連れてきた。
さて来週は何をつくろうか。
★ ★ ★
週末はケーキ作りを楽しんでいるのだが、仕事の方は発表まで一ヶ月と迫った本屋大賞のもろもろの作業に追われ、しかも「本の雑誌」や別冊、単行本などの取材、編集も押し寄せ、もちろん通常の営業活動もあり、目についたものから片付けていくという泥縄な展開。
そんななかふと手にした『佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇』中村計著(新潮文庫)を読んで号泣する。
ほんの少しだけだけれど、スポーツの指導を携わった身からすると、このように真剣にすべてを投げうって子供たちと向かい合えるだけでも感動ものなのだが、それ以上にこの「佐賀北」が持つ、自由な関係がたまらなく良い。選手と監督が毎日ノートを交換し合うのだが、そこに指導に関する不満や疑問を書き連ねられるとは驚きであり、しかも子供たちからの厳しい意見も素直に見つめる先生の度量に感服す。
ちょうどこの本の前に『ユニクロ帝国の光と影』横田増生著(文春文庫)という、まったく自由のない息苦しい会社の本を読んでいただけに感動は大きかった。
「本の雑誌」2014年4月号、搬入。