« 前のページ | 次のページ »

11月10日(月)

 朝、洗面所で歯を磨いていると、制服に着替えた中2の娘が髪を梳かしにやってきた。

「あれ? 背、かわんなくない?」

 娘は手にしていたドライヤーをいったん置き、自分の頭と私の頭を手のひらで比べる。その手の動きはほとんど水平に動き、鏡に映るふたりの目の高さもたいして変わらなかった。娘の足元を確かめたが、踵がしっかり床についており、背伸びしているわけでもない。

「うわ! やばくない?」
「やばい、やばい」
「ママー、私、父ちゃんと同じ身長になっちゃったよ」

 二階で洗濯物を干している妻に向かって大きな声をあげる。

「なあ、手も比べてみようぜ」

 娘が手のひらを自信満々に広げてくる。
 その指先は、合わせた私の指よりも1センチほど突き出ていた。

「やばー、手も私のほうが大きいじゃん」

 大笑いしながら娘は髪を梳かし、洗面所を出て行くと、通学カバン背負って出て行った。

 大きくなれ。
 どんどん大きくなれ。

 久しぶりに合わせた娘の手のひらのぬくもりを思いだしながら、初めて背が小さくてよかったと思った。

« 前のページ | 次のページ »