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10月20日(火)

 誰よりも人のいないところにボールを蹴ることを愛し、目の覚めるようなパスと目を覆いたくなるようなパスを交互に繰り出す類まれな才能をもったサッカー選手・鈴木啓太が、今シーズンかぎりで我らが浦和レッズを退団すると発表。

 ボールを奪うところまではいつだって完璧だった。啓太のおかげで何度ピンチから救われたことか。そして奪ったあとのパスから何度ピンチを作ったことか。

 啓太といって一番覚えているのは、我らが観戦仲間の片さんが、埼玉スタジアムでパスミスを目撃した瞬間「啓太、なにやってんだよ!」と叱責したことだ。その言葉を聞いた周りの人は、啓太だから仕方ないよと半ば失笑したのだが、その日啓太はピッチにいなかった。ピッチどころかベンチにすらいなかった。イエローカードの累積で、出場を停止されていたのだ。

 これからも啓太の類まれなパスセンスは浦和サポの間で語り継がれていくことだろう。浦和の選手があらぬ方向にパスを出した際には「啓太かよ」と呆れられるはずだ。

 入団時がいちばんピークといわれる浦和レッズの選手において、入団時より数段上手くなった数少ない選手、それが鈴木啓太だ。初めて選手が育つものだと教えてくれたのが啓太だった。そして育つものを見守る喜びを教えてくれたのも啓太だった。

 啓太のいない浦和レッズが、今、想像できない。

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