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1月20日(水)

4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史 (双葉文庫)
『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史 (双葉文庫)』
村瀬 秀信
双葉社
820円(税込)
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 単行本が出た時、悲壮感たっぷりのノンフィクションかと思いレジまで持っていかなかった村瀬秀信著『4522敗の記憶』が文庫になったので購入。

 大洋ホエールズから現在の横浜DeNAベイスターズにいたるまでの球団物語なのだけれど、これがもう愛があるからこそできるウィットに富んだ、まるでサイモン・クーパーやニック・ホーンビィのような日本では非常に珍しい、そして待望だったスポーツ・エンタメノンフィクション。

 こんな傑作なら単行本が出た時にすぐ読んで、「本の雑誌」の1位に推薦すればよかったと悔しい気持ちでいっぱいになる。これはホエールズもベイスターズも野球を知らなくても楽しめる本だ。

 なぜならチームというものが、どのように凋落していくかなんてどこも一緒だからだ。大切な選手はいとも簡単に放出され、理想も戦略もないまま監督交代を繰り返し、親会社や天下りの経営者はチームを理解しないまま口出しする。ここで描かれているホエールズやベイスターズを浦和レッズに置き換えることは簡単なのだった。そして、それでも愛し続けるしかできないのがファンであり、ファンの思いはみんな一緒なのだ。

 そういう意味では4522敗はまったく羨ましくないけど、こんな本を世に出してもらえたホエールズ&ベイスターズファンがものすごく羨ましい。スポーツ・エンタメノンフィクションの、いやノンフィクションの傑作。

 伊藤壇『自分を開く技術』搬入。

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