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11月6日(月)

 痛風発症、悶絶の苦しみに四つん這いになって耐え忍びつつ、念願叶って戸田書店掛川西郷店の高木さんの話を伺いに行ったのは先週火曜日のこと。高木さんは本業の書店業のかたわら、本屋のない地域の人たちに本を届けたいと自費で軽バンを購入し、幼稚園の庭先などへ車を走らせ移動書店を開いているのだった。平日も休日も「本屋」なのである。

 魂ふるわせて帰宅すると、金曜日には博多へ飛んだ。と言っても私は飛行機を信用していないので、新幹線で横移動した。そしてこちらも積年の想い叶ってブックオカに初参加。12年目を迎えた博多の本のお祭りは、相変わらずボランティアで運営され、トークイベントやのきさき古本市を開催している。会う人会う人みんな笑顔で、心底本が好きなのが伝わってくるのであった。

 博多から帰宅した翌日は神保町ブックフェスティバルで店番をした。すずらん通りは本を買い求めるたくさんの人たちで溢れかえり、そういった人たちと言葉を交わしながら本を販売するのは楽しさと喜び以外なにものでもなかった。

 そんな一週間を過ごしていたら、ここ数年、自分の心に巣食っていた本への自信のなさがすっかり消えた。売れるとか売れないとか、必要とされているとかされてないとか関係ないのであった。

 本が好きだ。

 ただそれだけなのだった。

 18歳の夏に、2冊の本を読んで興奮し、先も考えず出版業界へ飛び込んだのは、ただただ人生を本の近くで過ごしたかったからだ。

 本が好きなのはあれから30年近く経ってもまったく変わっていない。幸運にも私は今、本を仕事にできているのだ。ならば、もう余計なことは考えまい。ブックオカの「のきさき古本市」に集まった人たちが浮かべていた神々しいまでの笑顔を私も浮かべ、毎日、本と触れ合っていくのだ。

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