第121回:恒川光太郎さん

作家の読書道 第121回:恒川光太郎さん

独特の幻想的・民話的な世界観の中で、豊かなイマジネーションを広げていく作風が魅力の恒川光太郎さん。新作『金色の獣、彼方に向かう』もダークファンタジーの味わいと神話的な厳かな空気の混じった連作集。その読書歴はというと、やはりSFやファンタジーもお好きだった模様。沖縄移住の話やデビューの話なども絡めておうかがいしました。

その2「幅広く読んだ大学生時代」 (2/4)

ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)
『ホテル・ニューハンプシャー〈上〉 (新潮文庫)』
ジョン・アーヴィング
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哀愁の町に霧が降るのだ
『哀愁の町に霧が降るのだ』
椎名 誠
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永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)
『永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)』
中島 らも
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精霊たちの家
『精霊たちの家』
イサベル アジェンデ
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)』
村上 春樹
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――その後、読書生活はどのように変わりましたか。

恒川:中高生時代はあまり本を読まなかったんです。高校時代に村上春樹、村上龍をみんな読んでいて、僕もみんなに合わせなくてはと読んだおぼえがあります。その頃の読書体験はたぶん、みんなが読んでいるようなものしか読んでいないと思います。でも大学生になってからは急にいろいろ読むようになりました。自分の中で世界名作文学ブームがきて、名前の有名な作家さんを読もうと思い立ってヘッセやヘミングウェイとかドストエフスキーとかを読んでいきました。でも適当に選んで読んでいたので、どの作家がどう、と語ることはできないんです。古典というわけではないけれど、他にはジェフリー・アーチャーが読みやすくて好きだったし、ジョン・アーヴィングも『ホテル・ニューハンプシャー』などが好きでした。

――海外小説が多かったのですね。

恒川:大学生なので普通の文学も読もうと思い、太宰なんかは読んでいました。あとは椎名誠さんが好きでした。『哀愁の町に霧が降るのだ』は学生時代にみんなで貸し借りしていました。「あやしい探検隊」の本も好きで、僕もキャンプに行きたいな、と読みながら思っていました。中島らもさんも読みましたね。『永遠も半ばを過ぎて』とか『ガダラの豚』が面白かった。中島さんの本にフランケンシュタインの言及があって、それでメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』も読みました。ちょうどその頃ホラーブームがきたんです。鈴木光司さんの『リング』とか、スティーブン・キングの『IT』とか。『パラサイト・イブ』が大ヒットしていたのもこの頃です。海外のクーンツやキングのホラーと、人気が出てきた国産のホラー、どちらもよく読んでいました。それと、子供の頃の読書体験をもう一度したいなと思い、その延長にあるのは何だろうと手を伸ばしていってハインラインの『夏への扉』やクラークの『幼年期の終わり』といった50年代SFを順番に読みました。幻想文学が気になりだしたのもこの頃です。関町図書館に『ウィアード・テールズ』という1920年代のパルプ雑誌の翻訳版がおいてあったんです。ラヴクラフトとかアーサー・マッケンとかロバート・ブロックとかが載っているような、奇想小説、SF小説の雑誌です。キングもインタビューで「自分は『ウィアード・テールズ』を読んで育った」と言っているような雑誌の翻訳版が、なぜかあったんですよね、関町図書館に。ほかにも東雅夫さんの『幻想文学』も時々読んで、こういうものを書く人たちがいるんだなって思っていました。

――幻想的な作品では、どんなものが好きでしたか。

恒川:イサベル・アジャンテの『精霊たちの家』は、図書館で表紙がいいなと思って読んだら内容もエキゾチックでよかった。当時、翻訳が出たばかりだったんだと思います。村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』も面白かった。シンシア・カドハタの『七つの月』も、純文学なんですけれども微妙に幻想が入っている作品でしたね。クライヴ・バーカーの『ウィーヴワールド』という魔法のじゅうたんが出てくる話は、ハリウッド系ダークファンタジーみたいな感じでした。あとはピーター・ストラウブとキングの合作の『タリスマン』もふたつの世界の話が進行していく話でした。その頃『指輪物語』の文庫版が出て、中学生の頃に友達が褒めていたから読むか、と思って読んでいたら、たまたまいとこがそれを見て「こうちゃん、『ナルニア国ものがたり』も面白いよ」と言うのでそちらも読んでみることに。それで23歳くらいで大作児童文学の面白さを知って、それからいろいろ読むようになりました。読んでいる人も多かったんですよね。その後、鎌倉の図書館で「黄金の羅針盤」の1巻目の『ライラの冒険』を借りたら、そこの人に「2巻で大変なことになるのよ」って言われて、ああこの人も好きで読んでいるんだなって思ったことが(笑)。「ハリポタ」は最初は好きだったんですが、5巻くらいで中だるみを感じてしまって止めてしまいました。『ゲド戦記』はいきなり魔法がなくなって主人公が格好よくなくなってしまう。なんで老後の話を書くのかなと思っていました。

――恒川さんの作品を読んでいると、怖がらせるホラーというよりは幻想性やファンタジー性が強いように思いますが、読むものに関してはどちらのほうが好き、というのはありましたか。

恒川:僕はどっちも好きで読みます。グロテスクなものを読むのも大好きですし。まあ、なんでも読んでいましたね。厳しい批判精神がないものですから、訳の分からないものを読んでも、この訳の分からなさに何らかの味があるんだろうと思って保留にして、けなすことはなかったです。

――ファンタジー作品は近年、映画化されたものも多いですよね。映画はお好きですか。

恒川:映画はもともと好きで、ビデオ屋でバイトをしていたこともありました。ホラーでもアクションでも人間ドラマでも、いい映画はいつまでもいいなと思います。『ロード・オブ・ザ・リング』が公開された頃はまだ『指輪物語』が記憶に残っていたんですが、映画を観てこんなに面白いんだ! と思いました。それで『ナルニア国物語』をものすごく期待して観にいったらすごくつまらなくて。『ライラの冒険』も伏線ばかりが多かったという印象でした。僕は原作を読んでから映画を観ることが多いんです。キングもよく映画化されていますが、評判になったものは観ます。『ミスト』や『グリーン・マイル』も観ました。『ショーシャンクの空に』は原作の「刑務所のリタ・ヘイワース」をすっかり忘れていて、こんなに面白かったのかと思いました。ただ、僕のなかでは全部、映画よりも原作の小説のほうが勝っています。

――映画よりも小説のほうが好きだということですか。

恒川:表現方法の違いだと思います。ファンタジー映画などは特に、観ている人が楽しめるようにアクションを使う。小説はオリジナルの世界観の香りや雰囲気で読ませる部分もあるのに、映画にすると原作ではそれほどない戦闘シーンばかり強調されて、そこに至るまでの筋道がカットされてしまう気がします。お話も面白いし映画もいいものもありますよ。『告白』なんかはすごかった。そういうものもあるんですけれど。

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