第140回:長岡弘樹さん

作家の読書道 第140回:長岡弘樹さん

日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した「傍聞き」を表題作として文庫作品が大ヒット、警察学校を舞台にした新作『教場』も話題となっている長岡弘樹さん。日常の延長にある犯罪や人間模様、人々の心理を丁寧に描き出す作家は、いつどのような本に出合ってきたのだろう? 読書遍歴をうかがううちに、意外な記録癖も披露してくださることに…。

その1「本をあまり読まない子どもだった」 (1/5)

宮沢賢治のおはなし (8) よだかの星
『宮沢賢治のおはなし (8) よだかの星』
宮沢 賢治
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そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
『そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』
アガサ・クリスティー
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――いちばん古い読書の記憶を教えてください。

長岡:幼稚園児の頃でしょうか。図鑑ばかり見ていた記憶があります。全20巻くらいの百科事典が家にありまして、そのなかの乗り物の巻を毎日毎日熱心に眺めていて、それだけボロボロになっていました。ダンプカーやショベルカーやクレーン車といった、働く乗り物、重機が好きでした。

――ご兄妹はいますか。おさがりの本を読んだりしたことは。

長岡:2つ上の姉がいて、ポプラ社のルパンのシリーズを全部持っていたんです。それをちょこちょこと読みました。でもあんまり面白くなかったんです。それよりは学校にあった江戸川乱歩の少年探偵団のシリーズが好きでした。これはみなさんも読んでいると思いますが。

――ルパンと少年探偵団では、どこが違ったんでしょう。

長岡:ルパンはやはり、おどろおどろしさがないのが物足りなかったんでしょうか。少年探偵団のシリーズも表紙を見て面白そうなものだけしか読まなかったんです。それが小学校の中高学年の頃です。あとは一時期だけ、ジュブナイルのSFシリーズにハマったことがありました。真鍋博さんがイラストを描いている本もありましたね。印象に残っているのは、たしか『海底牧場』というタイトルの話で...(※ジュブナイル版はアーサー・C・クラーク『海底パトロール』、岩崎書店「SFこども図書館」シリーズ)。主人公だと思われていた人物が途中で死ぬんです。なんでこの人が死ぬんだとビックリしました。そこからまた別の人が主人公になってくんですけれど、そのことが今でも忘れられないですね。

――本をよく読む子供でしたか。

長岡:その反対です。生まれも育ちも山形ですが、田んぼで野球ばっかりやっていました。あとは自転車を乗り回していましたね。いつも傷だらけ、泥だらけで。本も読まなかったし授業の感想文もあれほど嫌いなものはない、というくらいでした。

――あ、作文は嫌いだったのですか。

長岡:宮沢賢治の『よだかの星』の感想文を書かされたことは憶えています。「よく書けているからもう少し直してごらん」と言われて直したら「前より悪くなった」と言われました。とんちんかんな直しをしたようなんです。それでますます感想文が嫌いになりましたねえ。

――その頃将来なりたいものは何だったんでしょうか。

長岡:小学校の卒業文集には「漫画家」と書きました。絵を描くのは得意で、手塚治虫の『ブラックジャック』や藤子・F・不二雄の『ドラえもん』を真似したものを描いていましたね。漫画は結構好きでした。『コロコロコミック』なんかも読んでいました。『ゲームセンターあらし』が人気だった頃です。

――では、中学生になると...。

長岡:アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』は強烈な読書体験でした。あそこまで怖い話を読んだことがなかった。中学生にもなって、怖くて毛布を被って読んで、トイレにも行けなくなるくらい。これは姉が読んでいた本を借りたんだと思います。たぶん姉がミステリ好きだったんですよね。80年代前半なので、ちょうど赤川次郎さんが大流行していましたし。ただ、他のクリスティーの本に手を出してみたら面白さが分からなくて読まなくなってしまいました。それに中学生になると他の遊びが楽しくなってしまって、漫画も描かなくなりました。卓球部に入って練習をしていたし、小学生の頃から映画が好きだったので、子どもたちだけでよく観に行っていました。山形はなぜか映画館が多いんです。山形国際ドキュメンタリー映画祭などもありますし。

――どんな映画が好きだったのですか。

長岡:『エイリアン』の第一作を映画館で観ていますね。79年、10歳の時です。スピルバーグの『レイダース /失われたアーク〈聖櫃〉』も映画館で観ました。子どもの頃から生意気にも、スター俳優ではなく監督の名前で選んでいました。分かりやすい娯楽作を作ってくれるハリウッドの監督が好きだったんです。

――リドリー・スコット、スピルバーグ、あとはジョージ・ルーカスとかですか?

長岡:はい、好きでした。あとはブライアン・デ・パルマ。『殺しのドレス』や『ミッドナイトクロス』の頃ですね。『アンタッチャブル』が公開されたのはもう少し後だったかな。レンタルビデオもちょうど出てきた頃ですが、高校の頃はお小遣いもあまりないので、月に1回か2回、何日も前から厳選して気合を入れて借りに行っていました。情報は雑誌の『スクリーン』や『ロードショー』の他に、友達からの情報やレンタルビデオ店のチラシなどを丁寧にチェックしていました。

――映画監督に憧れたりはしませんでしたか。

長岡:夢想していた時期があります。いかに大変かが分かっていなくて(笑)。ハリウッド映画のような、最初から最後まで観客を退屈させない映画を撮りたいと思っていました。絵コンテやラフを描いたりもしましたよ。最後まで仕上げたものはありませんが。

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