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高橋 美里の<<書評>>
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さみしさの周波数
さみしさの周波数
【角川スニーカー文庫】
乙一
定価 480円(税込)
2003/1
ISBN-404425303X
評価:A
 去年の「このミス」で見事国内編2位になった乙一の中篇4作を収録したもの。
4作とも、作品の感じが違っているのですが、オススメは1作目の『未来予報』。なんともない一言が実は人の心を捉えてはなさない、そんな経験はありませんか?そんな経験のある方、是非手にとって頂きたいです。愛していた、でもケンカばかりしていた。ある日突然ケンカすら出来ない体に、なってしまったとしたら?4作目、『失はれた物語』には愛しているが故の選択があります。

恋

【新潮文庫】
小池真理子
定価 740円(税込)
2003/1
ISBN-4101440166
評価:B+
 「恋」というもの何か決まりがあるわけではないのだろうけれど、この作品の主人公は「恋」に落ちていた、と思う。たとえば、どんなに禁じられていても。登場人物は主に3人。大学教授の下に翻訳のアルバイトとして雇われた布美子・雇い主の片瀬・その妻雛子。三者三様の思いを繰り広げていく様が痛々しくもあり、苦しくも有り切ない。ここまで怖いとも感じられるほど恋に落ちてみたい気もします。

シャドウランド
シャドウランド
【創元推理文庫】
ピーター・ストラウブ
定価 (各)882円(税込)
2002/12
ISBN-4488593038
ISBN-4488593046
評価:D
 少年たちは規律の厳しい私立学校へ入学する。この物語はそこから始まっています。一人はマジックの達人とも言えるほどマジックに長けていて、一人はマジックにとても興味を持っていた。少年たちは、まるで引き寄せられるように出会います。ある日学校で起こった盗難事件をきっかけに、学校では不思議なことが起こるように。少年たちの学校生活を描いたファンタジーなのですが、若干訳が読みにくい感じがしてなかなか世界に入りにくい感じがしました。設定も描写もすごいおもしろかったのに、世界に入り込めないファンタジーはちょっと苦しいです。

鉄の枷
鉄の枷
【創元推理文庫】
ミネット・ウォルターズ
定価 1,155円(税込)
2002/12
ISBN-448818703X
評価:A
 まず、この本を課題図書に選んでくれた本の雑誌のかたに感謝・・・と言いたくなるくらいに、十分に満足の出来る作品との出会いでした。主人公は田舎町に越してきたばかりの女医とうだつのあがらない画家の夫。彼らに花を添えるのは、お金持ちの老婦人と老婦人の娘と孫。メインディッシュともいえる謎は「老婦人は自殺か他殺か?」あまり多くを書くともったいないので、とにかく読んでください・・・・。

抱擁
抱擁
【新潮文庫】
A・S・バイアット
定価 (各)940円(税込)
2003/1
ISBN-4102241116
ISBN-4102241124
評価:B
 秘められたものほど、魅力的なものはない。この作品に描かれるのは100年前の詩人と作家の愛とそれを研究する2人の現代の学者。物語は2人が過去を辿ることで進んでいきます。とても素敵なロマンスという雰囲気かと思いきや、歴史ミステリとも読める作品。上下巻なのですが外文苦手の私が一気読みしてしまいました。

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