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高橋 美里の<<書評>>
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走るジイサン
走るジイサン
【集英社文庫】
池永陽
定価 420円(税込)
2003/1
ISBN-408747531X
評価:B
 いくつになっても人生の悩みというのは尽きないのでしょうか。
こんなことを若輩の私が書き出しに使うのはちょっと恥ずかしいのですが、この作品、主人公は仕事を引退したおじいさん。
妻には先立たれ、息子は嫁をもらった。その上息子夫婦と同居している、普通のおじいさん。
ある日突然、おじいさんは自分の頭上に「猿」がいることを知る。
例えば家庭に他人が入ってくる・自分が建てた家が古くなってくる。
年老いたことを実感してしまう自分以外のものの老化。そして、友人の死。
生きていく上で避けて通る事の出来ないこと。なんとも寂しくなる作品でした。

涙
(上・下)
【新潮文庫】
乃南アサ
定価 (上)620円(下)700円(税込)
2003/2
(上)ISBN-4101425256
(下)ISBN-4101425264
評価:B
 結婚式を間近に控えたある日、刑事である婚約者が失踪した。挙式を間近に控えて何事もなかった日常。時を同じくして彼の同僚の娘が何者かに殺される事件が起き、彼は容疑者として追われる身になった。一体彼の身に何があったのだろうか。彼の後を追うように萄子は探し始める。
舞台は昭和30年代から始まって萄子の姿を追うように時間が流れていきます。
読み終わると泣けてくるぐらいに切なくなってしまう一作。一人の男の影を追いつづけて思いつづけるというのは、やっぱり壮大なことなんだな、と実感。

『坊っちゃん』の時代
『坊っちゃん』の時代(1〜5)
【双葉文庫】
関川夏央・谷口ジロー
定価 600円〜650円(税込)
2002/11〜2003/2
(1)ISBN-4575712299
(2)ISBN-4575712302
(3)ISBN-4575712310
(4)ISBN-457571240X
(5)ISBN-4575712442
評価:AA
 まず、こんなに緻密な描写の漫画を久しく読んでいない気がします。
それだけでも読み応えがあるのですが、タイトル通り題材は「坊ちゃん」の時代。
ちょっとでもこのタイトルに惹かれた方は是非手にとっていただきたいです。
登場人物も豪華でこの時代を代表する文豪たちがあちらこちらに現れる。
激動の明治を駆けぬけた漱石とその時代をともに生きた文豪たちに感動。
是非オススメしたい作品。

鉤爪プレイバック
鉤爪プレイバック
【ヴィレッジブックス】
エリック・ガルシア
定価 924円(税込)
2003/1
ISBN-4789719804
評価:AA
 恐竜がもしもこの世に未だ生きていたら、もしも人の皮を被って生活をしていたら・・・。ありきたりだけれど、そんな想像をかきたてられる作品。探偵会社を営むルビオは相棒のアーニーと一緒に恐竜のカルト集団に勧誘され、帰ってこなくなったアーニーの元・妻の弟を救い出すという仕事を請け負った。ミステリテイストのあまり強くない今回の作品は一作目よりハードボイルドに。とにかくかっこいい男(恐竜)たちのお話です。
因みに、私、一作目「さらば愛しき鉤爪」を読んでいなかったのでいきなり「プレイバック」から読んだのですが、一作目を読んでいなくてもなんの不自由もなく世界に浸ることが出来ます。恐竜社会の入り口にもオススメです。

拳銃猿
拳銃猿
【ハヤカワ文庫HM】
ヴィクター・ギシュラー
定価 861円(税込)
2003/2
ISBN-4151739513
評価:AA
 この作品には「忠誠心」とか「仲間への心遣い」とか今の世の中では失われつつあるものばかり描かれていて、とにかく熱い気持ちになれました。登場人物は年老いたボス・優秀なガンマン・領地を拡大しようとする敵対する集団・そしてFBI。とにかく、グイグイ引きよせられてしまう。気がつくと一気読みしていました。この流れの早いストーリ展開にも関わらず人物もとにかく魅力的。カッコイイ男の小説なんて久しぶりで読みながらドキドキしてしまいました。この作品魅力的なのは内容だけではなく、帯のコピーも惹かれます。気になった方、ぜひ手にとられることをお勧めします。

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