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藤川 佳子の<<書評>>


天空への回廊

天空への回廊
【光文社文庫】
笹本稜平
定価 980
円(税込)
2004/7
ISBN-4334737110

評価:A
 私だけでしょうか。スケールのでかい小説を読んでいると、つい「これを映画にしたら…」と、勝手に配役を考えて楽しんでしまうのは。けれども、この主人公・真木郷司を演じられる役者は思いつきません。だって、彼ってばカッコ良すぎる!
 エベレストに墜落した衛星の回収作業に、ひょんな事から巻き込まれてしまう主人公。その怪しげな衛星をめぐって様々な国の様々な思惑が交錯し、最後にはアメリカの大統領まで出てきて「がんばれ、サトシ! 世界の運命は今、君の手に掛かってるんだ!」ってなるんです。もう、話が二転三転して、途中で栞が挟めません。時間のあるときに、一気読みすることをオススメします。

とんまつりJAPAN

とんまつりJAPAN
【集英社文庫】
みうらじゅん
定価 580
円(税込)
2004/7
ISBN-408747724X

評価:A
 「とんまつり」とは「プリティでなんだかとんまな感じ」のする奇祭を表す、著者の創った言葉です。不思議の国、日本で日々行われる「とんまつり」を求めて、みうらじゅんが全国を駆け巡ります。数々の「とんまつり」体験を読んで頭をよぎるのは…、そう、初めて熱海の『秘宝館』を訪れたときのこと。あれは18の夏だったな。女陰や男根のキョーレツなオブジェたちに「キャー、ヤダー」とか言って圧倒されながらも、「あぁ、俺、爪の先まで日本人だね」って感じるものがあったよな。
 忘れかけていた日本人のソウルを思い出させてくれる、貴重な一冊です。

蛇の形

蛇の形
【創元推理文庫】
ミネット・ウォルターズ
定価 1,260
円(税込)
2004/7
ISBN-4488187064

評価:B
 主人公のミセス・ラニラはアニーという黒人女性の死が、20年経った今でも忘れられないでいます。アニーの死に際に偶然立ち会ってしまったラニラはこれが殺人だと直感し、警察の事故という判断に異を唱え、アニーを殺したのはこの近所の中にいると騒ぎ立てていまいます。この一件で夫婦間は危機となり、近所からは執拗な嫌がらせを受けてしまう主人公。彼女は心に深い傷を負ったまま、海外へと移住してしまいます。
 それから20年。ミセス・ラニラの反撃が始まります。アニーは殺されたという確信のもと、ジリジリと事件の核心に近づいていくさまは、ちょっと怖いです。

ジェ−ンに起きたこと

ジェ−ンに起きたこと
【創元推理文庫】
カトリ−ヌ・キュッセ
定価 1,029
円(税込)
2004/7
ISBN-4488173020

評価:B
 ある日、宛先人不明の小説が主人公・ジェーンの元に届きます。その小説のヒロインはまさにジェーンそのもの。誰も知らないはずのあの彼との一夜や、記憶の彼方に押しやっていた出来事までが詳細に書かれているのです。これを書いた犯人は誰? 昔の男か、別れたダンナか、はたまた同じマンションに住んでいたセラピストか…。
 レニー・セルヴィガー主演の映画にもなった、あの「ブリジット・ジョーンズの日記」ミステリー版といったところでしょうか。ジェーンの経験や感じたことは、女性なら誰しもが思い当たることばかり。でもね、イマイチ共感できないのは、彼女がスタイル抜群の才女っていう設定だからなのかな…。

アインシュタインをトランクに乗せて

アインシュタインをトランクに乗せて
【ヴィレッジブックス】
マイケル・パタニティ
定価 840
円(税込)
2004/7
ISBN-4789723178

評価:B
 主人公の“僕”は、20世紀最大の天才・アインシュタインの脳を勝手に持ち出しちゃったマッドプロフェッサーを助手席に、その脳みそのかけらをトランクに乗せ、自動車旅行に出かけます。
 この内容、そしてタイトルとオビの「感動のノンフィクション」という文句に、ちょっと期待し過ぎちゃったのかも知れません…。全編に漂う切ない空気感も、どうもスカしてるような印象しか与えてくれず…。私とはウマが合わなかったようです。