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WEB本の雑誌今月の新刊採点【単行本班】2007年2月の課題図書ランキング

獣の奏者(1・2)
獣の奏者(1・2)
上橋 菜穂子(著)
【講談社】 
定価1575円(税込)/上
定価1680円(税込)/下
2006年11月
ISBN-9784062137003
ISBN-9784062137010

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  小松 むつみ
 
評価:★★★★★
 久しぶりに本物のファンタジーに出会った。古くはナルニア国物語、近年ではハリー・ポッターといつの世も人はファンタジーに夢ふくらませ、心揺さぶられる。
国や時代さえも現実によらない、まったくの架空世界の話ながら、その世界観は堅牢でゆるぎなく、かつ壮大である。われわれは瞬く間にその世界の人となり、主人公エリンの不遇ながら逞しく、心豊かに成長する姿に、大いなる共感を覚え、心からのエールを贈ることになる。児童文学という域を超えて、心疲れた大人たちにも、ぜひ手にとってほしい作品だ。

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  神田 宏
 
評価:★★★★★
  ワクワクします。「んで、どうなるの?」「次は?」「まじ?」と時を忘れてページをめくるうちに、広大な草原に「王獣」の翼の風を感じ、「闘蛇」に跨る戦士と共に国盗り物語の戦場に降り立つ。獣ノ医術師として「闘蛇」の世話をする「リエン」の母は「闘蛇」を死なせた罪を問われ、処刑されてしまう。孤児になった「リエン」は異国の地で蜂飼いのジョウンと共に暮らすうちに蜂や生き物の不思議な世界に魅せられて、やがてその才は「王獣」という王国を象徴するような巨大な翼を持つ獣の世話を任されるまでになる。しかし「王獣」を擁する王国と「闘蛇」を操るかつての故郷の国の間に軋轢が生じて、「リエン」もその波に飲み込まれてゆく。人と獣の間に立つ「リエン」、かつての故郷との戦闘に「王獣」使いとして立たされる「リエン」。過酷な運命を懸命に生きる「リエン」の耳に届いたのは獣ノ医術師としての母の言葉だった。
 人と獣の調和を描く壮大なファンタジー。傑作児童文学である。「王獣」と「闘蛇」を「宗教」や「文化」、「民族」と変奏させると、異民族間の融和を説く大人の読み物としても充分耐えうるぞ。

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  磯部 智子
 
評価:★★★★
  もし子供が読むなら★5個だとことわりを入れたい。闘蛇編、王獣編と分かれ、それぞれ架空の動物なのだがそれはリアルな存在感がありファンタジーに現実的な質感、説得力をもたらす。もちろん母を処刑され孤児となり生きていく主人公・エリンや彼女を取り巻く人々の生き様、それぞれ強い意志をもった人物造形も素晴らしい。またエリンと同じ孤独な境遇にある王獣の子リランとの触れ合いなども私のような動物好きの胸を熱くし、同時にこの孤高の獣が「人に馴れず、馴らしてもいけない」理由が、後々王国の成り立ちに深く関わる構成の力強さにはぐいぐい引っ張られていく。心踊る物語として気持ちをガッチリ掴まれたし、底に流れる作家の意志と言うものにも共感したのだが、ただこの物語は児童文学である為か、大人が読むには考える余地が残らないほど書き込まれ過ぎの感がある。

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  林 あゆ美
 
評価:★★★★★
  骨太のファンタジー。上下巻、一気読み。
 上橋作品の好きなところは、物語でうごく人、動物それぞれに等しく細やかにまなざした届いているところ。獣は獣らしく、人間には媚びず、怖い存在であり、人は獣を馴らしてはいけない。
 孤児となった少女、エリンの成長小説でもある。つらい事情で亡くした母と同じ仕事、獣の医術師をめざす。学んでいくうちに、教えられたものが本当に正しいことなのかと疑問をもつエリン。そして、いままで誰もがとろうとしなかった道を模索しはじめた。
 成長小説としては王道に話は進む。難題をもちかけられ、主人公は孤立する。しかし、孤立ゆえに、結びつくあらたな出会いもあり、それによってエリンは自分の考えた道を歩むのだ。簡単なことではない。エリンが悲痛な思いで「罪という言葉で人を縛るやり方が大嫌いです」と祖母に伝えた時、孫に対して放つ言葉のリアルなこと。この罪は情にも置き換えられる。獣も、また何かに置き換えられる。見えてくるのは、自分たちが住んでいる世界でもあるのだ。だがまずは物語を物語として楽しんでほしい、それからゆっくりと聞こえてくる声に耳を澄ませてほしい。オススメです。

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