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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年8月の課題図書 文庫本班

暗号解読
暗号解読(上・下)
サイモン・シン (著)
【新潮文庫】
(上)税込620円
(下)税込660円
2007年7月
ISBN-9784102159729
ISBN-9784102159736

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  荒又 望
 
評価:★★★★☆
 古代のカエサル暗号から21世紀の量子暗号まで、作成者と解読者が抜きつ抜かれつの闘いを続けながら進化してきた暗号の歴史を描いたノンフィクション。
 暗号、その胸躍る響き。タイトルだけで、ぐぐっと引き込まれる作品だ。もちろん中身も大変にスリリングで、知的好奇心を存分に満たしてくれる。暗号というきわめて専門的で難解な内容が、適切な比喩を交えつつ、平易な文章で説明されている。数学どころか算数すら惨憺たる成績だった身にとっては、頭がねじれそうになる部分も少なからずあったが、最後まで興味を失わず一気に読んだ。ちょっとした暗号なら書けてしまうのでは、頑張ればエニグマ暗号機のひとつやふたつ作れてしまうのでは、と思うほどに詳細に明快に説明されていて、ばりばりの文系人間にも親しめる内容となっている。
 暗号にまつわる、歴史の表舞台には決して出てこない事実の数々は、もうどんな小説よりもどんな映画よりもドラマチック。まさに事実は小説より奇なり。暗号作成または解読にかける情熱、執念、そして並外れた頭脳に圧倒される。歴史(暗号史に限らず)に興味がある人も、言葉に興味がある人も、数字に興味がある人も、きっといろいろな方向から楽しめるはず。

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  松岡 恒太郎
 
評価:★★★☆☆
 歴史の影に暗号あり、暗号あるところドラマあり。
 本書は古代から現代、未来へと続く暗号の歴史を紐解き解明しながら、暗号が生み出した興味深いドラマや歴史事実を紹介した、まさに暗号の手引書と呼べる一冊。
 有史以来繰り返されてきた暗号製作者と解読者の気の遠くなるような知恵比べには、まったくもって頭が下がる。
スコットランドの女王は首を賭け、あるものは隠された財宝に人生を賭け、または一国の存亡を賭けて、なるほど暗号と言う名の頭脳戦は繰り広げられてきたのだ。
 しかし残念ながら後半の、しだいに難解となりさらにコンピュータの出現によって桁違いに難度を増してゆく暗号については、いくら丁寧にご説明いただいても私立文系の頭では理解するのに無理が生じてきた。
 結局この本を読了して解明されたこと、僕の頭の限界点はいいとこ多湖輝さんの『頭の体操』レベルだった。

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  三浦 英崇
 
評価:★★★★★
 情報処理系の資格試験の勉強をすれば、RSA暗号だの、公開鍵方式だのといった用語は、当然頭に入れておかなければいけない知識となります。きわめて無味乾燥な暗記事項として、ですが。
 しかし、この作品を通じて、これらの用語は、人類が言葉を使い始めてから脈々と続く、暗号作成者と暗号解読者の戦いの歴史の最先端にある、ホットな話題として認識されるようになります。
 ヴィジュネル暗号にせよ、エニグマにせよ、「絶対に解けない」はずの暗号が、数々の天才たちの驚異的なアプローチによって「解読可能」になっていく。その過程を読み進めていくうち、人類がいかに、「隠すこと」と「暴くこと」に興味を抱いてきたか、という点について、大いに考えさせられました。
 「歴史は繰り返す」という言葉が真理なら、今後、量子コンピュータによって、RSA暗号も瞬時に解かれたりすることがあるのでしょうか。困惑しつつもちょっと期待してしまいます。

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  横山 直子
 
評価:★★★★☆
さまざまな暗号を解読するのにかかった膨大な努力とかけて、夏休みの宿題を懸命に取り組む子供たちととく、そのこころは、ひたすら頭が下がります。

暗号作成者に暗号解読者。
この相対する暗号にまつわる人たちの古代から現代までも続くドラマの数々。
いや〜とてつもなく知的で、そして頭くらくら興奮の上下二巻でした。

私はなぜか作成者よりも解読者に強く強く尊敬の念を持ちました。
どうしてかな?
「ふと新しいアプローチが頭に浮かんだ」
「突然、頭の中の霧が晴れはじめ、稲妻のような閃きが走った」
そのような頭脳の働きにとんと覚えがないので、ただただ憧れるのみなのです。

それにしても暗号を解くってなんてわくわくするのでしょう。
何百年前の秘密が目の前に現れてくる。
暗号を解いたのが自分でなくてもわくわくするのに、これが暗号を解いた張本人の気持ちを想像してみるに、まさに天にも昇る気持ち!
暗号作成者、解読者たちの顔写真を見ながら、すごい人たちだなぁとひたすら尊敬のまなざし。

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