日本でも5日に一人の割合で餓死者が発生~『マイクロファイナンス』

マイクロファイナンス―貧困と闘う「驚異の金融」 (中公新書)
『マイクロファイナンス―貧困と闘う「驚異の金融」 (中公新書)』
菅 正広
中央公論新社
777円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS

 2009年10月20日、低所得者の占める割合を示す貧困率について政府は、07年は15.7%であったと明らかにしました。公表されたのは国民生活基礎調査をもとに算出した「相対的貧困率」。所得を世帯人数に振り分けて高い順に並べたときに真ん中の所得(228万円)を基準に、その半分に満たない人が占める割合を示しています。その中でも母子家庭など一人親世帯の相対的貧困率は54.3%。この結果は、経済協力開発機構(OECD)が公表した加盟30カ国との比較で、なんと日本は最下位。統計によれば、日本でも5日に一人の割合で餓死者が発生しているというデータもあります。

 働きたいけど、働ける場所がない。働けても100年に1度の不況で生活がままならない。さらに子どもを養うだけの稼ぎにはならず、だからといって子どもが心配で思う存分働くわけにはいかない。多くの不安を抱きながら生活している家庭に、収入を得るきっかけを与えるために設立されたのが、マイクロファイナンス機関。06年バングラディッシュのグラミン銀行と、ムハマド・ユヌス同銀行総裁がノーベル平和賞を受賞して以来、世界的に有名になりました。
 
 マイクロファイナンスとは簡単に言うと、「貧困に苦しむ人々のための少額無担保融資」。融資先は通常の銀行が融資の対象としない人々を優先にしており、借り手の97%が女性です。しかも貸し倒れ率はわずか2.06%。ユヌス総裁によれば、男性は手元にお金が入るとまず自分のことを真っ先に考えて家庭をかえりみずに使ってしまうが、貧しい母親に渡すと彼女たちは例外なく子どもたちのことを真っ先に考え、次に家庭のことを優先して考えるのだとか。

 開発途上国のみならず、今ではアメリカ、イギリス、フランスなどの先進国でも貧困を救済する手段として普及し、現在130カ国以上の国々で貧困削減に効果を発揮しているマイクロファイナンス。日本でも貧困削減の大きな力になるかもしれません。ただ、貧困削減のためには福祉の充実が一番であるのは間違いないはず。マイクロファイナンスが日本で普及する時は、本当に政治家がたよれなくなった時かもしれません。

« 前のページ | 次のページ »

使えるビジネスつぶやき

「海軍が軍艦を造るには3年かかる。しかし、新しい伝統を築くには300年かかるだろう」アンドリュー・カニンガム